交通事故の全体像

 

~はじめに~

日頃、皆さんも車を運転する際、あるいは街中を歩いている際、何度か交通事故そのものや交通事故直後の状況を目撃したことはあるのではないでしょうか?また、ニュースなどではたびたび悲惨な交通事故が報道されていますから、交通事故は私のたちの日常生活に切っても切れない出来事の一つです。

誰しも交通事故を起こそうと思って起こしている人はいません。

しかし、交通事故はちょっとした不注意によって起きてしまい、ときには取り返しのつかない不幸な結果にまで発展してしまう危険も孕んでいます。

それゆえ、誰が、いつ、どこで交通事故の当事者、つまり交通事故の加害者、あるは被害者になるか分かりません

もっとも、交通事故の加害者、あるいは被害者になることは、多くの方にとって一生に一度経験するかしないかのことでしょう。

したがって、いざ交通事故の当事者となるとその取扱いに慣れていないがゆえに途方もない不安にかられます。

交通事故の規模、交通死亡事故、被害者の負った怪我の程度が大きくなればなるほど不安は増すばかりでしょう。

私は、交通事故という一生に一度あるかないかの出来事に不幸にも遭遇した方にとって、少しでも正確かつ有益な情報をご提供できればと思いこのブログを立ち上げました

さっそくですが、以下では交通事故全体の大まかな流れをご紹介します。

まずはざっくりと交通事故の流れをつかんでいただければ幸いです。

~交通事故から示談までの流れ~

交通事故から示談までの一般的な流れは以下のとおりです。

⑴交通事故発生

⑵病院を受診・治療を受ける

⑶症状固定

⑷後遺障害等級認定

⑸示談

⑴交通事故発生

①警察に110番通報する

道路の危険を除去(可能であれば、車を安全な位置に移動)した上で、警察に110番通報します。

加害者が連絡を渋った場合は被害者が通報しましょう(事故報告は義務です)。

事故報告しないと警察から「交通事故証明書」を発行してもらえず加害者の保険会社に賠償金を請求することができなくなります。

②加害者の個人情報を把握する

加害者(運転者)の「氏名」、「生年月日」、「住所」、「連絡先」、「会社名」などを把握しましょう。

「氏名」、「生年月日」、「住所」は免許証で確認すると確実です。

「連絡先」は無理に把握する必要はありません。

「会社名」は名刺などで確認するとよいでしょう。

加害車両が営業車の場合は加害者の使用車にも責任が発生する場合がありますから把握しておくと便利です。

③交通事故状況の把握

できれば交通事故直後(①で道路の危険を除去する前)の車の衝突状況をスマートフォンなどで撮影しておくと、あとで加害者の保険会社に賠償金を請求する際に必要となる「交通事故発生状況報告書」の作成の際に役に立ちます。

また、警察に公平な「実況見分調書」を作成してもらうためには警察の実況見分には必ず立ち会いましょう。

④加害者の保険会社の把握

強制保険である自賠責保険会社、任意保険である任意保険会社を把握しましょう。

自賠保険会社については車検証と一緒に保管されている自賠責保険証書によって確認することが可能です。

加害者が任意保険に加入していない場合などは自賠責保険会社に被害者請求する必要がある場合があります。

⑤自身の任意保険会社にも連絡

また、事故報告は警察のみならずご自身が加入されている任意保険会社に対しても行います。

保険に搭乗者傷害特約、人身傷害補償特約、無保険車傷害特約、弁護士費用特約を付けている場合はこれらの特約を使える可能性があります。

また、ご自身ではなくご家族が交通事故に遭った場合も連絡しましょう。

これらの特約が使える場合があります。

⑵病院を受診・治療を受ける、継続する

交通事故に遭ったら速やかに病院を受診し治療を受けましょう。

・たいしたことはないと思って病院を受診しない

・自己判断で病院を受診しない

などという行為はNG行為です。

また、

・今は痛みがないから大丈夫

などと思って病院を受診しない方がおられます。

しかし、交通事故の怪我で多いむち打ちの場合、交通事故時には痛みが発生せず、交通事故から数日経って痛みが発生するということがよくあります。

その場合、交通事故から病院受診までの期間が空けば空くほど「他の原因で痛みが出たのではないか?」「痛みの主原因は交通事故ではなく、他の原因にあるのではないか?」などと交通事故と怪我の因果関係を疑われ、受け取れるはずの賠償金も受け取れない、という結果にもつながりかねません。

交通事故時に痛みが出ていなくても、その後に痛みが発症することはよくあることです。

したがって、面倒とは感じても必ず病院を受診するようにしましょう。

また、一度病院を受診した以上、医師の指示に従い、医師が治療の継続は必要でないと判断するまでは通院するようにしましょう。

なお、のちほどご説明する後遺障害等級の認定を受けるためには、症状固定までにどんな治療を受けたのか(治療内容)ということなども非常に大切になってきます。

どんな点に気を付けるべきか不安な方ははやめに専門家に相談しておきましょう。

⑶症状固定

症状固定とは、交通事故時の怪我からある程度症状は改善したものの、いまだ痛み(後遺症)が残存しており、かつその症状が将来完全に改善する見込みがない状態、のことをいいます。

医学用語ではありませんが、治療を継続していると医師から「これ以上の(リハビリも含めた)治療は止めましょう。」と言われることがあります。

症状固定かどうかは医師が判断することですから、受診時に日頃の症状や怪我による悩みを医師に伝え、医師の指示に従って治療を継続しておくことが必要です。

なお、治療継続中に保険会社から「そろそろ症状固定としませんか?」などと言われることがあります。

これは治療費支払いの打ち切り、のことを意味していますが、その圧力に押されて症状固定とする必要はありませんし、治療を諦める必要もありません。

治療継続が必要な場合は、健康保険を使う、自賠責保険に被害者請求するなどの方法を検討しましょう。

⑷後遺障害等級認定

後遺症が残った場合は後遺障害等級の認定を受ける必要があります(後遺症の中でも認定を受けた後遺症を後遺障害といいます)。

後遺障害等級の認定を受けることができれば、等級に応じた「後遺障害による逸失利益」、「後遺障害慰謝料」の賠償員を獲得することができます。

認定を受けるには必要書類をそろえて加害者の自賠責保険会社に提出する必要があります。

そして自賠責保険会社から書類の送付を受けた自動車損害調査事務所が、原則として書類を基に調査を行います。

その後、調査結果を自賠責保険会社に通知し、通知結果に基づき自賠責保険会社が等級を認定するか、認定するとしていかなる等級とするかを決めます。

結果に不服がある場合は

異議申し立て(後遺障害等級認定の再申請)をすることができます。

異議申し立ての回数に制限はありません(何度でも申し立て可能です)。

⑸示談

後遺障害等級の認定が必要ない場合は症状固定後、後遺障害等級の認定を申請した場合はその結果が確定した後、示談成立に向けた詰めの話し合いが進められます。

示談交渉で条件がまとまらず示談が成立しなかった場合は、紛争案件を示談(和解)のあっ旋(実際に示談を締結してくれるわけではありません)などを行う交通事故紛争処理センター、裁判所の場に移して最終解決を目指すことになります。

 

以上

交通事故における3つの責任

本日は、交通事故における3つの責任、すなわち刑事責任、行政責任、行政責任について解説します。

~刑事責任~

刑事責任とは、刑罰(懲役、罰金など)を科される責任のことです。

その刑罰は特定の「法律」で規定された「罪」ごとに規定されています。

交通事故で適用されることが多い「法律」は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」です。そして、交通事故ではこの法律の中に規定されている「過失運転致傷罪(人を負傷させた場合)」あるいは「過失運転致死罪(人を死亡させた場合)」が適用されることが多いです(二つを併せて「過失運転致死傷罪」といいます)。過失運転致死傷罪は法律5条に規定されており、罰則は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金とされています。

法律5条

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。(以下、略)。

※自動車の運転上必要な注意を怠り=過失

すなわち、刑事責任では、刑事裁判で有罪とされるとこの罰則の範囲内で刑罰を科されることになるのです。

もっとも、これはあくまで刑事処分が「起訴」となった場合の話です。交通事故といってもすべての事故について起訴されているわけではなく、多くの交通事故の刑事処分は「不起訴」となることが多いです。不起訴となれば刑事裁判を受ける必要はなく、また上記の刑罰を受けることもありません。

「起訴」、「不起訴」の基準はあきらかではありませんが、通常、

①交通事故態様

②被害結果(被害者が死亡したか否か、負傷の場合、治療期間はどの程度かなど)

③被害者との示談の有無

④被害者、遺族の処罰感情

などを総合的に考慮して判断されているものと思われます。

たとえば、単なる前方不注視よりも赤色信号看過、横断歩道上での交通事故の方が悪質と判断され起訴される可能性は高くなります(①)。また、負傷よりも死亡の方が、負傷の場合でも被害者の怪我の程度が大きく、治療期間が長くなればなるほど起訴される可能性が高くなります(②)。また、示談不成立、被害者・遺族感情が強い場合は起訴される可能性が高くなります。これらの事情を単発的に考慮するのではなく、あくまで総合的に考慮して判断されます。もっとも、②について、治療期間が1週間を超えない場合は、他の考慮事情にかかわらず不起訴となる可能性は高くなります。

~民事責任~

民事責任とは損賠賠償責任のことです(民法709条)。損害賠償責任は、当事者に別段の意思表示がない場合は金銭賠償が原則です(民法417条、722条1項)。したがって、損害賠償責任とは、具体的には、相手方に生じた損害について金銭で賠償することをいいます。

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法417条

損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

「損害」には財産的損害と精神的損害(慰謝料)があります。財産的損害には、治療費、入通院交通費などの積極損害と休業損害、後遺障害逸失利益、死亡による逸失利益の消極損害に分けられます。精神的損害には、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。これらの損害費目に生じた損害につきお金で賠償するのが民事責任というわけです。

もっとも、被害者に発生した損害すべてについて加害者に負担させることは公平ではない場合もあります。そこで、その場合は過失相殺によって損害賠償額が減額されることがあります(民法722条2項)。過失相殺による減額の程度は「過失割合」という交通事故に対する責任の割合によって異なります。

なお、刑事責任のところでも「過失」という言葉が出てきました。しかし、刑事責任においては過失があったかなかったか、つまり「過失の有無」が問題となります。他方で、上記のとおり民事責任では「過失有無」ではなく「過失割合」が問題となります。刑事責任を追及する警察、検察は民事不介入ですから、この過失割合については判断しません。通常は、加害者の保険会社の担当者と被害者(あるいはその代理人(弁護士))との交渉、あるいは交渉でまとまらなかった場合は裁判で(裁判官の裁量により)決めます。

~行政責任(処分)~

行政責任は免許取消し、免許停止などのことです。

皆さんもご存じのとおり、交通違反、交通事故の態様によって違反点数(基礎点数・付加点数)が付けられ、過去の違反歴などが考慮され最終的な違反点数が決まります。

なお、交通事故の違反点数は以下の表のとおりです。

事故結果

 

事故態様

死亡 重傷事故 軽傷事故
3か月以上又は後遺障害 30日以上3か月未満 15日以上 15日未満
専ら違反者の不注意による交通事故 20点 13点 9点 6点 3点
その他 13点 9点 6点 4点 2点

違反歴がない(あるいはないとみなされる)場合、6点以上で免許停止(30日)処分を受けます。

なお、刑事責任と行政責任は全く別物であり、刑事責任で不起訴、無罪となったからといって違反点数、行政処分が科されないというわけではありません。

 

以上

交通事故で示談不成立となった場合の紛争解決機関

 

今回は交通事故で示談不成立となった場合の紛争解決機関をご紹介します。

~そもそも示談とは~

示談とは交通事故の加害者側と被害者側が、被害者にどんな損害が生じたのか、その損害についてどれだけの賠償金が発生するのか、発生した賠償金をどのような方法で支払うのかなどの示談の条件について、話し合いによって決めて終局的に解決することをいいます。示談が成立すると、被害者側は加害者側に示談交渉で決めた方法に従って賠償金の支払い求めることができますし、反対に加害者側には賠償金を支払う義務が生じます。また、その他示談交渉で決めた事項(約束事)についてはお互い遵守しなければなりません。また、示談交渉は基本的にはやり直すことができません。

交通事故発生から示談までの大まかな流れは以下のとおりです(怪我の場合)。

1、交通事故発生

2、治療(入院・通院)

3、症状固定

↓※後遺症がない方は5へ

4、後遺障害等級認定

5、示談交渉

6、示談成立OR示談不成立

示談不成立でもっとも多いのが

被害者が加害者側から提示された示談金額に納得がいかない

というケースです。なお、交通事故の示談金は自賠責基準、任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の支払い基準があり、自賠責基準よりも任意保険基準、任意保険基準よりも裁判所(弁護士)基準の方が示談金は高くなります。示談交渉で弁護士が間に入らなければ、任意保険基準により示談金額が決まりますから、被害者が示談金額に不満を持つことが多いのです。

また、示談金額を決める際のベースとなる

過失割合に加害者側、被害者側とも納得がいかない

というケースもよくあります。過失割合の過失とは「不注意=落ち度」のことをいいます。この不注意の程度を最大10の割合を、加害者と被害者に割り振ったものが過失割合です(例えば、加害者6対被害者4、などという風に表現されます)。加害者側からすると過失割合が大きければ大きいほど(被害者の過失割合が小さければ小さいほど)示談金は大きくなり、被害者側からすると過失割合が小さければ小さいほど(加害者の過失割合が大きければ大きいほど)示談金は大きくなります。交通事故では、被害者者が停止中に後方から追突されたなどいうように、明らかに被害者に過失が認められない場合を除き、被害者にも何らかの過失が認められることが通常です。しかし、上記のとおり、過失割合は示談金額に大きな影響を与えますから、過失割合(事故態様、事故状況など)について当事者間で折り合いがつかず示談不成立の原因となるのです。

その他、被害者が保険会社の対応に納得がいかない、ということでも示談不成立となることがあります。

以下では、示談不成立となった場合の解決方法についてご紹介します。

~示談不成立の場合の紛争解決機関~

示談不成立となった場合は、当事者以外の第三者(紛争解決機関)の力を頼る必要があります。交通事故の紛争解決機関には①交通事故紛争処理センター、②日弁連交通事故相談センター、③裁判所の3つがあります。

=①交通事故紛争処理センター=

交通事故紛争処理センターは、交通事故の加害者と被害者が示談をめぐる紛争を解決するため、センターから委託を受けた弁護士が当事者の間に立って法律相談、和解のあっ旋を行ったり、あっ旋が不調に終わった場合は3人の専門家からなる審査員による審査手続を開き示談を促すという機関です。

弁護士をご自身で選任する必要はありませんし、センターに出向くまでの交通費などは別として、弁護士、センターを利用するにあたっての費用は一切かかりません。また、交通事故に慣れた弁護士、専門家に判断を委ねることができ、手続きは迅速に進み、公平・中立な妥当な結論(示談内容)を得ることができる点が最大のメリットです。なお、加害者の保険会社は審査手続で出された結論を尊重しなければなりませんが、被害者はこれに従う必要はなく、従わなかった場合は③裁判所へ舞台を移すことになります。

=②日弁連交通事故相談センター=

日弁連交通事故センターも、交通事故に関する電話相談、面談相談(30分×原則5回まで)、示談あっ旋・審査を業務とする機関です。しかも、センターに出向く際の交通費を除き費用はかかりません。しかも、交通事故処理センターは損害額がある程度確定した段階でしか相談できないのに対して、日弁連交通事故相談センターでは損害額が確定する前の交通事故発生直後から相談することができるのが特徴です。

もっとも、示談あっ旋が不調に終わった場合に審査手続を行ってくれるのは、相手方が日弁連交通事故相談センターと提携している共済保険会社の場合のみに限られます。つまり、共済でない保険会社が示談に応じない場合は手続き終了となり、舞台は③裁判所へと移行することになります。

=③裁判所=

裁判所は①、②でも解決が図られなかった場合の最終解決の場です。ただ、すべての交通事故紛争について判決が言い渡されるわけではなく、裁判の過程で裁判所あら和解案が示され、それに当事者が合意すれば判決を待つまでもなく終了ということになります。

以上

交通事故証明書とは?

今回は交通事故証明書についてご紹介します。

~交通事故証明書について~

交通事故証明書とは

・いつ

・どこで

・誰が

・どんな事故

を起こしたのか、あるいは起こされたのかという「交通事故の発生事実」を証明するための文書で、各都道府県の自動車安全運転センターが発行しています。

交通事故証明書のサンプルはこちら

出典:自動車安全運転センターウェブサイト

自動車安全運転センターの所在地、電話番号はこちら

→★自動車安全運転センターの所在地、電話番号

なお、交通事故証明書に似ている文書として「交通事故発生状況報告書」があります。

しかし、交通事故証明書と決定的に異なるのは「事故発生略図」や「その図(事故状況)について説明する欄」が設けられていることです。

つまり、交通事故発生状況報告書は、交通事故が発生したことにとどまらず交通事故の内容(状況など)について説明する文書で、文書を必要とする人自身(加害者、被害者)で作成する必要があります。

交通事故発生状況報告書は保険会社のホームページなどからダウンロードすることができます。

繰り返しになりますが、交通事故証明書はあくまで交通事故が起きたということ自体を証明するに過ぎず、交通事故の内容、加害者・被害者の過失割合を証明する文書ではありませんので注意が必要です。

~交通事故証明書はどんなときに必要?~

交通事故が起きた場合、加害者の方であれば「まずは保険会社に連絡して被害者の対応をしてもらい賠償金(保険金)を支払ってもらおう」、被害者の方であれば「加害者の保険から賠償金(保険金)を支払ってもらいたい」などと思われることでしょう。

しかし、保険会社に「交通事故を起こしました。」「交通事故の被害に遭いました。」と口頭でいっても、それが本当かどうか確認できない以上、保険会社は交通事故として受け付けてはくれないでしょう。

そこで、「交通事故を起こしました。」「交通事故の被害に遭いました。」

という事実を誰かに証明してもらわなければなりませんが、そのための文書が交通事故証明書というわけです。

交通事故証明書は自動車安全運転センターという法律に基づいて設置された施設の事務所長名義で発行されるため、保険会社としても安心して交通事故を受け付けることができます。

 ~交通事故証明書の発行条件~

交通事故証明書の発行のためには、申請前に必ず警察に交通事故の報告(届け出)をしておかなければなりません。

この事故報告は道路交通法72条にも規定されている法律上の義務であり、この義務を怠ると交通事故証明書の発行を受けることができないばかりか、刑事罰(罰則:3月以下の懲役又は5万円以下の罰金)を科せられる可能性もあります

加害者、被害者にかかわらず、人身・物損事故にかかわらず警察への交通事故の報告は義務であるということを肝に銘じておきましょう。

道路交通法72条

交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(略)は、直ちに車両等を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。

この場合において、当該車両等の運転者(略)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(略)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

~交通事故証明書の取得手順・方法~

交通事故証明書の取得のためには自動車安全運転センターに対する申請が必要です。

加害者の場合、任意保険に加入されている場合は保険会社が代わりに申請してくれます。

被害者の場合、被害者請求といって加害者の保険会社の対応(一括対応といいます)に頼らず、ご自身で加害者の自賠責保険会社に保険金の支払いを請求した方がいい場合もあります。

その場合はご自身で申請する必要がありますが、代理人(弁護士など)に委任することもできます。

【申請人】は

・交通事故の加害者

・交通事故の被害者

・交通事故証明書の交付を受けることについて、正当な利益のある方(交通事故被害者のご遺族など)

ですから、これらの方以外の方が申請する場合は委任状が必要です。

ご自身で申請方法としては①ゆうちょ銀行・郵便局での払込、②自動車安全運転センター窓口での申込み、③インターネットでの申込みの3通りがあります。

①についてはゆうちょ銀行、郵便局備え付けの申請書用紙に必要事項を記入し、交通証明書1通につき手数料600円を添えて提出します。

提出から配達まで10日前後かかるそうです。

②についても、窓口備え付けの申請書用紙に必要事項を記入し、手数料を添えて提出します。

即日、交付を受けられることがメリットです(お急ぎの方は②をお勧めします)。

③についてはhttps://www.jsdc.or.jp/accident/tabid/119/Default.aspxを参照ください。

加害者・被害者以外の方は利用できないなど条件がありますので注意が必要です。

以上

 

交通事故における行政書士のサポート

 

今回は交通事故において行政書士がサポートできる業務内容を段階別にわけてご紹介します。

~交通事故直後~

交通事故直後は速やかに病院を受診しましょう。

病院での受診が遅れれば遅れるほど、あとで症状が発生したとしても交通事故と症状との因果関係を疑われ、人身事故ではなく物損事故扱いともされかねません。

症状があるにもかかわらず物損事故扱いとなれば、加害者側に治療費などに関する損害についての賠償義務は発生しません。

ただ、病院を受診したとしても以下のケース別で取るべき対応は異なります。

=加害者の任意保険会社が一括対応する場合=

一括対応とは、要は、加害者の任意保険会社が病院の治療でかかった費用について直接病院に支払ってくれる、というものです。

一見すると大変便利なもののようにもみえますが、気を付けなればならないことは一括対応の際に同意書にサインを求められることです。

同意書で、保険会社が被害者の病院へ医療照会することなどに対する承諾を求められるのです。

ですから、同意書にサインするとあとで保険会社に治療状況、怪我の回復具合などを調査され、その調査結果をもとに治療費打ち切りを迫られる可能性があります。

保険会社の一括対応はあくまでサービスの一環です(一括対応の段階では加害者側に賠償義務は確定しておらず、保険会社が任意で支払っています)から、保険会社が治療費支払いを打ち切るといえばそれに従うしかありません。

そこで、当方としては以下の対応をお勧めしております。

★ご自身の健康保険を使う★

交通事故で健康保険を使うことはできるの?と勘違いされている方がたまにおられますが、結論から申し上げると使えます。

・加害者の保険会社が一括対応してくれない(・・・過失割合、交通事故でもめているケース)

・そもそも加害者が任意保険に加入していない

・同意書にサインしたくない、ためらっている

という方、また、

・加害者のみならず被害者にも一定の過失がある

という場合は健康保険を使った場合の方がのちのち有利になることがあります。

もっとも、健康保険を使うには必要書類を入手、作成し、ご自身がご加入されている健康保険組合などに提出する必要があります。

これを「第三者行為災害による健康保険給付申請」といいますが、行政書士はこの申請のための書類作成などのお手伝いをさせていただくことが可能です。

★加害者の自賠責保険へ被害者請求する★

健康保険を使ったものの、できる限り治療費の負担は抑えたいものです。

そんなときは、被害者請求という手段をとります。

被害者請求とは加害者の自賠責保険会社に被害者自らが直接賠償金の支払いを請求するものです。

被害者請求には「仮渡金請求」と「本請求」があります。

仮渡金は賠償金を前払いしてくれる制度です(ただし、支払われる額が決まっており、死亡の場合290万円、傷害の場合、そのていどに応じて40万円、20万円、5万円です)。

示談前に受け取ることが可能ですので、治療の負担を心配せず治療に専念できるというメリットがあります。

また、本請求はすべての損害費目の損害額が確定させ、トータルの賠償額が判明した段階で請求するものです。

もっとも、被害者請求するには様々な書類を入手、作成し、それを加害者の自賠責保険会社に提出する必要があります。

行政書士はこの被害者請求のための書類作成などのお手伝いをさせていただくことが可能です。

~治療継続中~

加害者の保険会社から治療費の支払いを受けている場合、保険会社から症状固定(治療を継続しても将来、症状の改善が見込めなくなった状態)の打診が入ります。

怪我の症状にもよりますが、はやい人で交通事故から約1か月で症状固定の打診が入ります。

症状固定の打診=保険会社の治療費支払いの打ち切り、ですから、症状固定とすると基本的にはそれ以降の治療費は支払ってくれません。

もっとも、症状固定の判断は保険会社ではなく医師がすべきものです。

日頃の受診時から医師にご自身の症状を正確に伝えておくことが大切です。

医師が症状固定と判断した場合(もっとも、症状固定は医学用語ではありませんから医師が症状固定という言葉を使うかどうかはわかりません)、基本的にはそれに従う必要があります。

しかし、医師は症状固定後の後遺障害等級認定(※)のため治療を行っているわけではありません。

したがって、医師の症状固定の判断が必ずしも適切な後遺障害等級の獲得につながるわけではありません。

そこで、行政書士はどうすれば適切な後遺障害等級認定を受けることができるかという視点から、ご相談を受けた時点で、予めどの後遺障害等級を受ける可能性があるのか予測し、受けておくべき治療・期間、等級認定のために証拠化しておくべきもの(MRI・レントゲン画像など)、日常生活で気を付けるべき点などをアドバイスします

必要によっては病院へ同行したり、医師に治療状況などを聴取して報告書にまとめたり、医師へ医療照会を行うなどします。

また、等級認定のためには必要書類を収集・作成し、それを自賠責保険へ提出する必要がありますから、そのためのサポートもさせていただきます

※後遺障害等級認定

後遺障害等級は自賠責保険会社によって認定された後遺障害のレベルのことで、申請によって認定されるとレベルに応じた後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料を獲得することができます。

 

以上