交通事故における自賠責保険、任意保険と両者の関係

車は危険な乗物ですから、ひとたび交通事故を起こせば多大な損害を発生させてしまうおそれがあります。そうした場合に備えて保険に加入しておくことはとても大切です。本日は、交通事故における自賠責保険、任意保険と両者の関係について解説します。

1.交通事故における保険の種類

交通事故における保険という場合、通常、自賠責保険(強制保険)と任意保険のことを指します。自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法という法律に基づいて保険契約の締結が強制されている自動車損害賠償責任保険のことで、多くの方が車の購入時、車検時に契約しているものと思います。他方で、任意保険とは、保険契約の締結が本人の自由意思に任されている保険です。損害保険料率算出機構が2020年5月に公表した「自動車保険の概況」によると、2018年度の任意保険加入率は74.9%とのことで、多くの方が任意保険に加入していることが分かります。

2.自賠責保険(強制保険)と任意保険との違い

自賠責保険と任意保険の違いは以下のとおりです。

⑴ 契約が義務か義務でないか

当たり前ですが、契約が義務なのが自賠責保険で義務でない、つまり任意なのが任意保険です。なお、自賠責保険契約を締結していない車を運転した場合は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に、締結している場合でも自賠責保険証明書を車に載せないで車を運転した場合は「50万円以下の罰金」を科されるおそれがありますので注意が必要です。

⑵ 補償範囲が狭いか広いか

次に、補償範囲に違いがあります。すなわち、補償範囲が狭いのが自賠責保険、広いのが任意保険です。具体的には以下のとおりです。

① 物損事故での補償の有無

自賠責保険は物損事故では使えないのに対して、任意保険は物損事故でも使えます

② 傷害に関する補償の限度額

自賠責保険の場合120万円です。なお、120万円でカバーできる損害費目は、治療費のみならず休業損害、傷害(入通院)慰謝料も含まれます。そして、これらの損害費目の合計額が120万円を超え、任意保険に加入していない場合は全て自己負担です。これに対して任意保険では、対人賠償額は無制限の場合が多く、仮に120万円を超えた場合は任意保険でカバーされます。

③ 後遺障害、死亡による補償の限度額

自賠責保険では後遺障害の場合「4000万円」、(被害者)死亡の場合「3000万円」が限度額です。傷害の場合と同様、限度額を超えた損害額が発生し、任意保険に加入していない場合はすべて自己負担です。これに対して任意保険は無制限の場合が多いでしょう。

④ ご自身への補償の有無

①から③は相手方への賠償金をカバーしてくれるものですが、ご自身の車が破損した場合やご自身が怪我をした場合にもカバーしてくれるのが任意保険(前者は車両保険、後者は人身傷害保険(特約))で、自賠責保険にはこうした保険はありません

⑤ 示談交渉サービス、オプションの有無

任意保険では、ご自身にいくらかでも過失がある場合は保険会社があなたに代わって相手方と示談交渉してくれます(過失がない場合、保険会社は示談交渉できません)。また、ロードサービスなどのオプションも充実しています。これに対して、自賠責保険には示談交渉サービスやオプションはありません

3.自賠責保険(強制保険)と任意保険との関係

前記2⑵②・③に関しては自賠責保険と任意保険で重なる部分があります。そこで、まず、相手方に発生した損害については自賠責保険でカバーし、自賠責保険でカバーしきれない損害が発生した場合のみ任意保険でカバーするという流れとなります。

加害者が任意保険に加入している場合は、通常、保険会社が自賠責保険の部分と任意保険の部分の双方を被害者に一括して支払う一括対応が行われています。保険会社は自賠責保険の限度額内で、被害者に対し、治療費、休業損害、傷害(入通院)慰謝料を支払い、それでも足りない場合は任意保険から支払います。自らの負担で支払った分については、後で自賠責保険会社へ求償して回収します。

 

以上

交通事故における過失割合が決まるまでの流れ|具体例で解説

最終的に受け取る賠償金を大きく左右するのが過失相殺、過失割合です。したがって、過失割合がいかなる流れで決まるのか知っていただきたいと思い、記事にしました。ぜひ最後までお読みいただければと思います。

1.過失割合が決まるまでの流れ

前回の「交通事故における過失相殺、過失割合や留意点を解説」の「3.過失割合は誰が決める?注意点は?」では、過失割合は加害者・被害者が話し合って決める、といいました。そして、具体的には、加害者が任意保険に加入している場合は任意保険会社、被害者が弁護士に弁護活動を依頼している場合は弁護士が話し合いによって決めるということになるでしょう。

そして、交通事故の過失割合はこれまでの裁判例の蓄積などから一定程度類型化することができ、その過失割合を類型化したものをまとめた本が東京地方裁判所民事交通訴訟研究会から出されている「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本です。

任意保険会社や弁護士は、①当該交通事故が、この本に掲載されているどの交通事故に一致するのかあるいは類似するのかを探し、本に掲載されている交通事故に該当する過失割合を基本の過失割合とします。そして、次に、②当該交通事故に固有の修正要素があるかどうか判断します。そして、最後に、③修正要素があると判断した場合は、①で確認した基本の過失割合に修正要素ごとの加減割合を加味して最終的な過失割合を割り出すのです。

2.過失割合算出までの具体例

それでは、「車(バイク)VS歩行者」による交通事故の中でもわかりやすく典型的な交通事故の①基本の過失割合、②過失割合ごとの修正要素、③修正要素ごと加減割合と最終的に割り出される過失割合についてみていきましょう。

「車(バイク)VS歩行者」でわかりやすく典型的な交通事故といえば

 

信号機のある交差点で、歩行者が横断歩道上を歩行していたところ、直進してきた車と衝突した

 

というケースです(太文字とした部分が変われば下の基本の過失割合も変わっています。たとえば、「信号機のある交差点」が「信号機のない交差点」、横断歩道上が「横断歩道付近」、「横断歩道直近」、直進してきたが「右左折してきた」に変わる場合もあり、それぞれの組み合わせで基本の過失割合も異なってきます)。

① 基本の過失割合について

上記のケースでの①基本の過失割合は

 

歩行者側の信号が「青」で車(バイク)側の信号が「赤」の場合は0:100

歩行者が「赤」で横断を開始、車(バイク)が「青」で進入した場合は70:30

 

などがあります。もちろん、上記以外にも信号機の色によって組み合わせは多数あり、過失割合もそれぞれ組み合わせごとに異なります。

② 修正要素について

では、次に②修正要素についてみていきましょう。修正要素については

 

ⓐ時、時間に関する修正要素:夜間(日没から日の出まで)

ⓑ場所に関する修正要素:住宅街、商店街、通学路など

©人に関する修正要素:児童、高齢者/幼児、身体障害者

ⓓ運転者の運転態様に関する修正要素:車の著しい過失、車の重過失

 

※車の著しい過失とは脇見、スマートフォン等を操作しながらの運転など、車の重過失とは酒酔い運転、居眠り運転など故意に比肩するような過失をいいます。

 

などがあります。そして、たとえば、

 

交通事故が夜間であれば修正要素のⓐ

交通事故の被害者が高齢者であれば修正要素の©

 

が適用されることとなるでしょう。

③ 加減割合と最終的に割り出される過失割合

そして、上記ウ(修正要素ⓐ)の加減割合は「歩行者に0~+5」、上記エ(修正要素©(児童・高齢者))の加減割合は「歩行者に-5~-10」とされています。ウのように歩行者側に過失割合がプラスされるということはその分、車(バイク)側の過失割合はマイナスにされるということです。これは夜間は日中に比べて視認状況が悪くなるため、その分運転者の責任が軽減されると考えられるからです。この理屈からいえば、エの場合は、運転者はもっと注意して運転すべきでその分責任が加算されることになります。

では最後に、ア+ウ、イ+エの過失割合を計算してみましょう。

まず、ア+ウの場合は

 

歩行者0~5:車(バイク)95~100

 

となりますし、イ+エの場合は

 

歩行者60~65:車35~40

 

ということになります。

 

以上のようにして過失割合が割り出されていきます。

 

以上

交通事故における過失相殺、過失割合や留意点を解説

交通事故において被害者が適切な損害賠償額を受け取るためには、過失相殺、過失割合については、必ず知っておかなければならない知識といえます。そこで、今回は、過失相殺、過失割合やその留意点について解説します。

1.過失相殺とは

過失相殺とは損害賠償額(治療費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料など)を算定するにあたって、被害者側にも何らかの責任、落ち度、つまり過失がある場合には、その賠償額を減少させることをいいます。

被害者側にとっては受け入れがたいことかもしれませんが、通常、交通事故では被害者にも何らかの過失が認められることがほとんどです。その場合に、被害者に発生した全損害賠償額について加害者に賠償責任を負わせてしまうのは不公平といえます。そこで、被害者の過失分の損害額については被害者の負担とすることで、被害者、加害者の公平を図るのが過失相殺制度なのです。

2.過失相殺と過失割合

過失割合とは、加害者・被害者の過失(責任)の重さを数値化したものをいいます。最大を10とし、それを加害者・被害者に振り分けるのです。たとえば、加害者10、被害者0とされた場合は、交通事故に対する過失のすべては加害者にあり、被害者にはないことを意味しています。そして、この場合、被害者に生じた損害賠償額が100万円だったとすると、被害者は加害者に対してまるまる100万円を請求できることになります。しかし、前述のように、通常、交通事故では被害者にも何らかの過失(過失割合)が認められることの方が多いです。そして、たとえば過失割合を加害者8、被害者2とされた場合は、被害者にも2割の過失が認められたことを意味しており、被害者に生じた損害賠償額が100万円だったとしても被害者はまるまる100万円を受け取れるわけではありません。つまり、被害者の過失分である2割の額(20万円=100万円×0.2)が100万円から相殺され、受け取ることができる金額は80万円ということになります。

以上より、被害者の過失割合が大きくなれば大きくなるほど最終的に受け取ることができる損害賠償額は少なくなる、ということがお分かりいただけると思います。

3.過失割合は誰が決める?注意点は?

前記「2」からお分かりいただけるように、過失相殺、過失割合は被害者が最終的に受け取ることができる損害賠償額を決める上で非常に重要な要素であることはお分かりいただけたかと思います。では、この過失割合はいったい誰が決めるのでしょうか?

この点、過失相殺について規定した民法722条2項によると裁判官が決めるとされています。もっとも、これはあくまで裁判手続を利用すれば、の話です。通常、交通事故では「交渉→調停→裁判」という流れとなりますから、まずは交渉、調停、つまり加害者・被害者の話し合い、合意によって決めていくことになります。

当初は、加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険会社の担当者から過失割合の案を提示されるでしょう。そして、確かに、任意保険会社の担当者は交通事故、交渉のプロですから、提示された過失割合の案もそれなりの根拠、妥当性を有しているといえます。しかし、担当者から提示された過失割合の案をそのまま鵜呑みにするのは危険です。担当者はあくまで加害者側の立場にあること、任意保険会社はあくまで営利企業ですから、少しでも被害者に支払う損害賠償額を抑えようと被害者の過失割合を大きくしているのではないか、ということを常に疑いながら話を聞くべきです。そして、少しでも疑問に思ったら弁護士等の専門家に担当者から提示された過失割合が妥当なのかどうか相談してみるとよいでしょう。

 

                                                                                   以上

交通事故の慰謝料を3つの基準で計算してみよう

交通事故の被害に遭った場合に気になることのひとつとして

 

慰謝料はいくらになるのか?

 

ということではないでしょか?

今回は交通事故の慰謝料を3つの基準を使った計算してみました。

1.交通事故における慰謝料

慰謝料とは交通事故によって人が受けた精神的苦痛の程度を金銭で評価したものをいいます。

交通事故における慰謝料には

・傷害(入通院)慰謝料

・後遺障害慰謝料

・死亡慰謝料

があります。

そして、傷害の(怪我した)場合の慰謝料が傷害(入通院)慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡の場合の慰謝料が死亡慰謝料です。

なお、死亡の場合は死亡した被害者の父・母、配偶者及び子、または被害者との間にこれらの者と実質的に身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けると認められる者(被害者と内縁関係にあると認められる者など)は、被害者とは別の(固有の)慰謝料を加害者に請求できます。また、死亡した被害者の相続人(遺族)は被害者が本来加害者に請求できる死亡慰謝料(慰謝料請求権)を相続します。

以下では傷害(入通院)慰謝料、後遺障害慰謝料について具体的に計算していきたいと思います。

2.傷害(入通院)慰謝料の計算

傷害(入通院)慰謝料とは、交通事故による怪我によって負った精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。ただ、精神的苦痛といっても人の内面にかかわることですから客観的に評価することは難しいです。そこで、傷害(入通院)慰謝料を算定するための基準が設けられています。それが自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判所)基準の3つです。以下では、次のケースでそれぞれの基準によると慰謝料がいくらの計算となるのかみていきましょう。別のケースの金額をお知りになりたい方はこちら【https://vs-group.jp/lawyer/ko-tu-jiko/simulation】の計算機もお使いください。

【ケース】

脚の骨を骨折 交通事故直後から20日の入院 退院後3か月間通院(実通院日数は12日)

① 自賠責基準での慰謝料計算

自賠責基準では

傷害(入通院慰謝料)=4,200円(1日)×「対象日数」

で計算されます。

なお、「対象日数」は、

ア 治療期間(=入院期間+通院期間)

イ (入院期間+実通院期間)×2

のいずれか少ない日数の方を採用します。

以上を上記のケースにあてはめると、

ア 110日(=20日+30日×3)

イ  64日(=(20日+12日)×2)

となり「対象日数」は64日となります。したがって、

傷害(入通院)慰謝料=4,200円×64日=26万8,800円

となります。

② 任意保険基準での慰謝料計算

任意保険基準は各任意保険会社が独自に基準を定めており一般に公開されていません。しかし、かつては任意保険会社共通の基準があり、現在も多くの任意保険会社がその基準を踏襲しています。そこで、かつての基準をベースに今回の傷害(入通院)慰謝料を計算すると、

傷害(入通院)慰謝料≒53万円~71万円(目安)

となります。

③ 弁護士(裁判所)基準での慰謝料計算

弁護士(裁判所)基準は、日弁連交通事故センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準(通称、赤本)」に掲載され、ネットなどでも公開されています。弁護士が加害者の任意保険会社と交渉する際や訴訟の際にこの基準を用いることから弁護士(裁判所)基準と呼ばれています。弁護士(裁判所)基準で今回の傷害(入通院)慰謝料を計算すると

傷害(入通院)慰謝料≒73万円~105万円(目安)

となります。

3.後遺障害慰謝料の計算

後遺障害慰謝料とは、症状固定後(治療費の支払いが打ち切られた後)になお残存した後遺症により被る精神的苦痛に対する賠償です。後遺障害慰謝料にも上記の3つの基準があり、後遺障害等級によって慰謝料が異なります。以下では、後遺障害等級のうち最も症状の程度が軽い14等級の慰謝料を基準ごとにみていきましょう。

① 自賠責基準での慰謝料計算

自賠責基準での後遺障害等級14級の慰謝料は

32万円

です。

② 任意保険基準での慰謝料計算

任意保険基準での後遺障害等級14級の慰謝料は

40万円(目安)

です。

③ 弁護士(裁判所)基準での慰謝料計算

弁護士(裁判所)基準での後遺障害等級14級の慰謝料は

110万円(目安)

です。

4.まとめ

傷害(入通院)慰謝料も後遺障害慰謝料も弁護士(裁判所)基準を用いた方が慰謝料は高くなる可能性があります。少しでも多く慰謝料を獲得したいと考えている方は、弁護士に交渉等を依頼するかADRという機関を活用するとよいでしょう。

 

                                                                                        以上

交通事故の初期対応~被害者、同乗者がやるべき4つのこと

交通事故に遭うことは人の人生にとって一度あるかないかの出来事でしょう。したがって、交通事故が発生すると加害者もちろん被害者も「どうしていいのか分からない」という方が大半だと思われます。そこで、この記事では、交通事故に遭った場合に被害者として何をすべきなのか、という点について詳しく解説していきたいと思います。

1.交通事故の初期対応の流れ

交通事故の初期対応の流れは以下のとおりです。

なお、交通事故状況、怪我の状況によっては怪我の治療を最優先とすべき場合もあります。以下はあくまで対応可能な被害者あるいはその同乗者が取るべき対応とお考えください。

①運転の停止・負傷者の救護措置、警察への事故報告・届出

②加害者、加害車両等の確認

③事故状況の調査・証拠保全

④保険会社への事故報告

2.運転の停止・負傷者の救護措置、警察への事故報告・届出(①)

⑴ 運転の停止、負傷者の救護措置

交通事故に遭ったかなと思ったら車の運転者は直ちに車の運転を停止しなければなりません。そもそも交通事故直後はどちらが加害者なのか被害者なのか判然としない場合もあります。また、被害者であることが明らかな場合でも、事故状況によっては加害者の方が怪我の程度が大きく救護が必要という場合も稀にあります。道路交通法ではこうした場合も想定して、車の運転者(加害者、被害者問わず)に停止義務を課しているのです。

さらに、停止義務はその後の救護を可能とするためのものです。道路交通法は加害者、被害者及びそれぞれの同乗者に負傷者を救護する義務を課しています。この義務を怠ると罰則(最大10年以下の懲役または100万円以下の罰金(運転者の場合))や免許取消しの行政処分を科される場合があります。なお、具体的な救護措置としては

・救急車の要請(119番通報)

・病院への搬送

などが考えられます。要はそのときの交通事故状況に応じた最善の方法を尽くすことが大切です。

⑵ 警察への事故報告・届出

また、警察への事故報告も加害者、被害者の義務です。通常、加害者がすべきものと思われがちですが、責任逃れから警察への報告を渋る加害者もいます。その場合は被害者が警察へ報告すべき義務があります。この義務を怠ると罰則(3月以下の懲役または5万円以下の罰金)を科される場合もあります。また、警察へ届出しないと「交通事故証明書」の発行を請求することができません。交通事故証明書は

・加害者の保険会社に賠償金を請求する場合

・ご自身の保険会社に保険金を請求する場合

・加害者の自賠責保険会社に被害者請求(※)する場合

・労災保険金の支払いを請求する場合

などに必要とされます。

警察に届出をしないとこうした請求をすることができません。

※被害者請求※

被害者請求とは、被害者が、加害者が加入している自賠責保険会社に対して保険金の支払いを求める請求です。なお、次の場合では被害者請求する必要性が高いといえます。

・仮渡金請求したい場合

→被害者請求には仮渡金請求と本請求の2つがあります。仮渡金は被害者の当面の治療費、生活費を工面する一時金です。交通事故の状況等をめぐって加害者側と争っており、治療費を支払ってくれない、交渉が長期化しそうなどという場合は仮渡金請求する必要性が高いでしょう。

・加害者が任意保険に加入していない場合

→加害者が無資力(だからこそ任意保険に加入していない)で被害者に賠償できない可能性があるためです。

3.加害者、加害車両等の確認(②)

交通事故によって負傷したり、物を壊された場合は、被害者は加害者に対して損害賠償することになります。そのためには、加害者が誰なのかわからなければなりません。そのため加害者(運転者)の「氏名」、「住所」、「会社名」などを運転免許証等で確認しておきましょう。また、前記の被害者請求などのため、加害者の自賠責保険会社、任意保険会社も把握しましょう。自賠責保険会社は車の運転時に備え付けておかなければならない自動車検査証、自動車損害賠償責任保険証明書で確認することができます。

4.事故状況の調査・証拠保全(③)

可能であればスマートフォン等で車の損壊状況、衝突位置等を撮影しておきます。また、必要があって車を移動させなければならないとき以外は、警察官の実況見分が終わるまで車は移動させないほうがよいです。交通事故現場の状況は交通事故直後の状況を残しておくのがベターです。

5.保険会社への事故報告(④)

交通事故の報告は警察のみならずご自身が加入されている任意保険会社に対しても行います。保険に搭乗者傷害特約、人身傷害補償特約、無保険車傷害特約、弁護士費用特約を付けている場合はこれらの特約を使える可能性があるからです。ご自身ではなくご家族が交通事故に遭った場合にも連絡する必要があります。同様に上記の特約を使える場合があります。

                                                                                          以上

交通事故から示談までの流れ~行政書士が解説

交通事故で被害に遭った場合、加害者側と示談交渉し、示談を成立させることで賠償金を獲得する、という流れが大半を占めます。しかし、交通事故被害に遭うことは人の人生にとって一回あるかないかの出来事です。そのため、交通事故被害に遭ったものの今後どのような流れで進んでいくのか、何をすべきなのかなどという不安に陥る方も少なくありません。そこで、この記事では交通事故被害から示談成立までの流れをご紹介いたします。この記事で大まかな流れややるべきことを把握していただければと思います。

1.交通事故から示談までの流れ

交通事故から示談までの一般的な流れは以下のとおりです。

交通事故発生

怪我の治療

症状固定

後遺症→あり→後遺障害等級認定→非該当→異議申立て

↓      ↓            ↓

なし     該当           認容・却下

↓      ↓            ↓

示談交渉

示談

成立→不成立→ADR申立てor訴訟

賠償金獲得

2.交通事故発生

① 自動車運転者の法律上の義務

直ちに運転を停止させること(可能であれば車を安全な場所へと移動させること)、怪我人を救護すること、警察官に事故内容を報告することです。こうした義務を負うのは基本的に加害者、被害者を問いません。また、人身事故か物損事故かを問いません。

② 必ずしたいこと

交通事故後、早い段階で、ご自身が加入している保険会社に交通事故に遭った旨を報告しましょう。保険に搭乗者傷害特約、人身傷害補償特約、無保険車傷害特約、弁護士費用特約を付けている場合はこれらの特約を使える可能性があります。

③ 可能な限りしたいこと

一つ目に加害者の個人情報(氏名、住所、電話番号など)を把握することです。

交通事故の最終目的は加害者から賠償金を支払ってもらうことですから、まずは加害者が誰なのか把握することからはじめなければなりません。加害者の状況、態度をみて免許証、会社の名刺などを差し出してもらい確認するとよいでしょう。加えて車のナンバーを控えておくとよいです。

二つ目に加害者の保険会社を把握することです。

交通事故後、加害者側の対応などによっては加害者の自賠責保険会社に対する被害者請求が必要となる場合もあります。そのため加害者の自賠責保険会社を把握しておく必要があるのです。自賠責保険証は車に備え付けておかなければなりませんから、交通事故現場で加害者に提示を求めることが可能です。

三つ目に証拠の保全です。

過失割合の認定や加害者の刑事処罰を求める場合など役立ちます。

事前にできることとしては、ドライブレコーダーを設置することです。事後にできることとしては、スマートフォンなどで車の損壊状況、位置状況などを撮影しておくことです。交通事故の詳細な状況は警察が捜査します。もっとも、警察にも実況見分への立ち会いを求められます。可能な限り立ち会いましょう。

3.怪我の治療

交通事故に遭ったら速やかに病院を受診し治療を受けましょう

交通事故から病院受診・治療までの期間が空けば空くほど交通事故と怪我の因果関係を疑われます。その結果、受け取れたはずの賠償金も受け取れない、という事態にもつながりかねません。むち打ち症のように交通事故時に痛みが出ていなくても、その後に痛みが発症することはよくあることです。しかし、痛みが出た時点で受診・治療を受けたとしても、適切な賠償金を受け取るという意味では手遅れとなる可能性もあります。また、受診後は医師の指示にしたがいましょう。後遺症が出た場合は治療状況等が適切な後遺障害等級認定を受ける上でもとても重要です。

4.症状固定

症状固定とは、交通事故時の怪我からある程度症状は改善したものの、いまだ痛み(後遺症)が残存しており、かつその症状が将来完全に改善する見込みがない状態、のことをいいます。なお、治療費支払いの打ち切りのために、加害者の保険会社の担当者から症状固定を打診されることがあります(保険会社が治療費を支払っている場合)。しかし、症状固定かどうかを判断するのは医師であって保険会社ではありません。打診されたとしても治療が必要な場合は治療を継続しましょう。ご自身の健康保険を使って受診できますし、後日、加害者から打ち切り後の治療費分を支払ってもらうことも可能です。

 5.後遺症、後遺障害等級認定、異議申し立て

症状固定後、後遺症が残った場合は後遺障害等級の認定を受ける必要があります(後遺症の中でも認定を受けた後遺症を後遺障害といいます)。後遺障害等級の認定を受けることができれば、等級に応じた「後遺障害による逸失利益」、「後遺障害慰謝料」を獲得することができます。

認定方法は①被害者自身が行う被害者請求と②加害者の保険会社が行う事前認定があります。適切な等級認定を受けるためには①の方法をお勧めします。いずれの場合も必要書類をそろえて加害者の自賠責保険会社に提出する必要があります(②の場合、被害者は医師に「後遺障害診断書」を作成してもらい保険会社に提出すればOK)。そして自賠責保険会社から書類の送付を受けた自動車損害調査事務所が調査を行います。調査後、調査事務所は調査結果を自賠責保険会社に通知します。そして、自賠責保険会社は通知結果に基づき自賠責保険会社が等級を認定するか、認定するとしていかなる等級とするかを決め、被害者に通知します。結果に不服がある場合は異議申し立て(後遺障害等級認定の再申請)をすることができます。異議申し立ての回数に制限はありません(何度でも申し立て可能です)。

 6.示談

後遺障害等級の認定が必要ない場合は症状固定後、後遺障害等級の認定を申請した場合はその結果が確定した後、加害者側と示談交渉を始めます。示談交渉で条件について折り合いがつけば示談書(あるいは合意書)を取り交わして示談を成立させます。折り合いがつかなければ、第三者の力を借りて解決しなければなりません。第三者の力とは、すなわち、交通事故紛争処理センター(ADR)や裁判所のことです。ADRでは公平、中立的立場である第三者が和解案を提示し、当事者が合意すれば和解を成立させることができます。

 

以上

交通事故における後遺障害等級認定とは?

交通事故で後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けると慰謝料が増額する可能性があります。今回はその後遺障害等級や後遺障害等級の認定の受け方などについて解説します。

1.後遺障害等級とは

後遺障害等級の「後遺障害」とは、医師により交通事故に起因する後遺障の症状が将来的に改善する見込みがなくなった状態(症状固定)と判断された際に残った障害のことをいいます。この後遺障害の重さを等級で表したものが後遺障害等級です。

後遺障害等級は介護を要する後遺障害の場合とそれ以外の後遺障害の場合に分けられます。後者の等級は1級から14級まであり、1級が一番重たい後遺障害とされています。また、等級ごとに1号から最大14号まで区分され、その号ごとに細かい後遺障害の症状が規定されています。そして、後遺障害等級認定によって後遺障害があったと認定されると「●級●号」という等級認定がなされるのです。

2.何のための後遺障害等級?

後遺障害等級は「後遺障害逸失利益」と「後遺障害慰謝料」の算定の基準となります。後遺障害等級ごとに受け取れる慰謝料の基準額が規定されています。当然、1級の慰謝料が一番高くなっています。そもそも後遺障害等級の認定を受けることができるのか、受けることができるとしてどの級、どの号の等級の認定を受けることができるのかは、最終的に受け取る損害賠償金(あるいは示談金)の額に大きく影響してきます。

なお、後遺障害等級には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類があることを知っておきましょう。自賠責基準は賠償金の最低の基準額を定めたものです。慰謝料については自動車損害賠償保障法施行令2条の別表第1(介護を要する場合)及び第2(第1以外の場合)に規定されています。任意保険基準は各保険会社が定めた基準で公表されていません。弁護士基準は、日弁連交通事故センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称、赤本)に掲載されています。過去の裁判例などを基に作成されています。自賠責基準よりも任意保険基準、任意保険基準よりも弁護士基準の方が慰謝料の基準は高くなります。

  • 自賠責基準
第1級 1100万円 第8級  324万円
第2級  958万円 第9級  245万円
第3級  829万円 第10級 187万円
第4級  712万円 第11級  135万円
第5級  599万円 第12級   93万円
第6級  498万円 第13級   57万円
第7級  409万円 第14級   32万円
  • 弁護士基準
第1級 2800万円 第8級  830万円
第2級 2370万円 第9級  690万円
第3級 1990万円 第10級 550万円
第4級 1670万円 第11級 420万円
第5級 1440万円 第12級 290万円
第6級 1180万円 第13級 180万円
第7級 1000万円 第14級 110万円

以上、14等級とってみても、自賠責基準よりも弁護士基準の方がはるかに慰謝料が高いことがお分かりいただけると思います

3.交通事故から後遺障害等級認定を受けるまでの流れ

① 医師の治療を受ける

医師の指示に従って治療を受けます。途中で治療、通院を止めてしまうと、後で後遺症が発症したとしても認定を受けることができない可能性があります。

② 医師から症状固定の診断を受ける

医師から症状固定との診断を受けたら、医師に「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(後遺障害診断書)」を作成してもらいます。等級認定の申請の際に必ず必要とされる書類です。

③ 等級認定の申請をする

申請先は加害者の自賠責保険会社です。申請の方法は「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。

事前認定とは、加害者の任意保険会社に申請を任せる方法です。被害者は任意保険会社に対して後遺障害診断書を郵送しさえすれば、後は任意保険会社が必要書類を取り寄せた上で申請を行ってくれます。楽な手続ではありますが、手続が不透明な分、本当に希望した等級を取得できるよう努めてくれるのか常に不安は残ります。

他方、被害者請求とは、加害者の任意保険会社を通さず、被害者自身で申請を行う方法です。被害者請求では、被害者自ら必要書類を集めるなどして申請する必要がありますから、その分手間や労力を要します。多くの方にとってははじめてのことで、どんな書類を集め、何を、どう書けばよいのか不安となることでしょう。しかし、そんな手間や労力、不安も専門家に任せてしまえば解消できます。また、手続の進捗などを被害者自ら把握することができますから安心です。

④ 等級認定のための調査

任意保険会社、被害者が提出した書類は自賠責保険会社を経て損害保険料算出機構へ送られ、自賠責損害調査事務所が書類などに基づいて調査します。

⑤ 等級認定

調査事務所による調査結果は自賠責保険会社へ通知されます。自賠責保険会社はその結果を受けて後遺障害等級に該当か非該当か、該当するとして何級の何号に当たるのか判断し、その結果を被害者に通知します。

4.まとめ

後遺障害等級の認定申請は多くの方にとってはじめてのことだと思います。不安な方は専門家へ依頼することをお勧めいたします。

以上

交通事故での示談金の内容、示談金を受け取るまでの流れ

交通事故の被害に遭った場合、加害者が加入している保険会社との示談によって解決することが多いと思われます。そこで、今回は、示談金の内容、示談金受け取りまでの流れについて解説します。

1.示談金とは

⑴ 示談金とは

示談金とは、多くは交通事故加害者の保険会社との示談交渉の末獲得した損害賠償金のことをいいます。損害賠償金、つまり示談金には下記⑵のとおり様々な費目で構成されています。したがって、示談を締結する(示談書にサインする)際は、各費目の計算方法、額に納得がいくか、誤りがないかきちんと確認する必要があります

⑵ 示談金の費目

① 大分類

示談金の費目は怪我が死亡による「人的損害」と、交通事故によって損傷させた物に関する損害である「物的損害」の2種類に分けられます。

人的損害は、さらに、「財産的損害」と「精神的損害」に分けられます。財産的損害には交通事故によって出費を余儀なくされた「積極損害」と、被害者が交通事故に遭わなければ得ることができたであろう「消極損害」に分けられます。積極損害には、治療費、入院雑費、交通費などがあります。消極損害には、休業損害、後遺症逸失利益、死亡逸失利益があります。精神的損害には、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。

物的損害にも財産的損害と精神的損害があります。

② 各損害費目と計算方法

以下では各損害費目の計算方法などをご紹介します。

ァ 治療

治療費は治療に要した費用だけ、つまり、治療のために必要かつ相当な範囲内での実費を示談金に含めることができます。もっとも、加害者が任意保険に加入しており、被害者が保険会社の一括対応に同意した場合は、保険会社から病院へ治療費が支払われます。この場合、被害者が治療費を負担することはありませんから示談金に含めることはできません。

イ 入院雑費

入院した場合は日用品雑貨費、通信費、文化費などの入院雑費がかかります。これらにかかった費用については、購入の都度領収書を取り計算するというのは煩雑です。したがって、1日いくらと定額化されています。自賠責基準(*)では、入院1日につき1100円、弁護士基準(*)で1500円です。あくまでも基準ですからこれ以下にもこれ以上にもなることがあります。保険会社からは自賠責基準程度の金額を提示されます。

ウ 交通費

交通費も入通院に要した費用、つまり治療費と同様実費を示談金に含めることができます。しかし、あらゆる交通手段にかかった費用を含めることができるというわけではありません。あくまでも病院までの合理的なルート、あるいはやむを得ないと認められる交通手段に要した費用のみ含めることができます。

エ 休業損害

休業損害は、交通事故の怪我の治療によって休みを余儀なくされ、その間、収入を得ることができなかったことによる損害のことをいいます。休業損害にも自賠責基準と弁護士基準があります。自賠責基準は基本的に「1日5700円×認定休業日数」という計算式で計算します。弁護士基準では自賠責基準よりも高い休業損害を算定します。

オ 傷害慰謝料

慰謝料は、交通事故による精神的苦痛を金銭で評価しなおしたものをいいます。そして怪我による慰謝料を傷害慰謝料といいます。傷害慰謝料にも自賠責基準、弁護士基準があり、自賠責基準よりも弁護士基準の方が傷害慰謝料は高くなります。

カ 後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料

後遺障害逸失利益は、交通事故による後遺障害がなかったならば得られたはずの利益(得べかりし利益)のことをいいます。後遺障害慰謝料は慰謝料のうち、後遺障害が残ってしまったことによる慰謝料です。ともに後遺障害等級認定の申請を行って、等級認定を受けることができれば示談金は高くなる可能性があります。

*自賠責基準

賠償金の最低基準。

*弁護士基準

日弁連交通事故センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称、赤本)に掲載されている基準。自賠責基準よりも基準額は高くなっています。

2.交通事故から示談金を受け取るまでの流れ

交通事故から示談金を受け取るまでは以下の流れで進んでいきます。

①交通事故発生

②怪我の治療

③症状固定

④後遺障害等級の認定申請(後遺症がある場合)

⑤示談交渉

⑥示談金を受け取る

⑤示談交渉に入り⑥示談金を受け取るのは③症状固定してからです。

③の症状固定とは、治療を継続してもそれ以上症状の改善が見込めなくなった状態のことをいい、治療を担当している医師が判断します。この時点で後遺症が残らない場合は前述の治療費、入院雑費、交通費、休業損害、傷害慰謝料などの費目につき⑤示談交渉して⑥示談金を受け取ることもできます。後遺症が残る場合は④後遺障害等級の認定を申請し、等級の認定を受けた後、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料の計算をしてから⑤示談交渉に入り⑥示談金を受け取ります。

3.まとめ

示談金と一言でいってもその中身は様々な費目で構成されています。示談金で損をしないためにも、一つ一つの項目をしっかり確認するようにしましょう。

以上

交通事故にかかる行政書士費用

 

今回は交通事故で行政書士に相談、依頼した場合の行政書士費用についてご説明します。

~交通事故において行政書士が行う業務~

交通事故において、行政書士が業務として行うのは、加害者の自賠責保険会社に対する被害者請求と後遺障害等級認定申請及び異議申し立てです。

=①自賠責保険会社に対する被害者請求=

被害者請求とは、加害者の自賠責保険会社に対して被害者自らが保険金(賠償金)の支払いを求めることができる「自動車損害賠償保障法16条」に基づく手続きです。本来であれば賠償義務を負う加害者が被害者に賠償金を支払い、その支払った分について後日、加害者が自賠責保険会社に請求するというのが筋です。しかし、これではたとえば

・加害者と過失割合などをめぐってもめていて加害者が賠償金を支払わない

・加害者に資力(財産)がなくて加害者が賠償金を支払えない

・とりあえず前払い金が欲しい

などという場合、手続き的に迂遠であり被害者救済に欠けます。そこで、こうした場合に直接加害者の自賠責保険会社に賠償金の支払いを可能にしたのが被害者請求というわけです。

被害者請求には、前払い金的な性質の「仮渡金請求」(自動車損害賠償保障法17条)と「本請求」の2種類があります。いずれにして被害者請求のためには

・自動車損害賠償責任保険支払請求書兼支払指図書

・交通事故証明書

・医師の診断書

・交通事故発生状況報告書

・印鑑証明書

など様々な書類が必要となります。そして、特に交通事故発生状況報告書記載は賠償金請求の前提となる過失の有無を判断するための重要な書類であるにもかかわらず、ご自身で作成しなければならず記載方法に悩む方も多くおられます。そんなときこそ行政書士に頼るべきです。行政書士であれば、どのように記載すればより有利な賠償金を獲得できるかのノウハウを取得しています

=②後遺障害等級認定申請及び異議申し立て=

後遺症による賠償金(後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料)を獲得するためには、後遺障害等級の認定を受けなければなりません。認定を受けてはじめて賠償金を受け取るだけの後遺障害だと認定され、さらにその等級に応じた賠償金を獲得することができます。認定を受けるためには、加害者の自賠責保険会社に後遺障害等級認定の申請をする必要があります。申請のやり方としては加害者の任意保険会社が対応してくれる「事前申請」と、被害者ご自身が行う「被害者請求」があります。より適切な等級、賠償金を獲得するには被害者請求の方をお勧めします。

もっとも、被害者請求の場合はご自身で必要書類を取得する必要があります。また、より適切な等級を獲得するためには申請前から医師への働きかけ、治療状況などの聴取、ご依頼者様への日生活に関する聴き取りなどを行い、それらの結果を書類にまとめ、自賠責保険会社に提出する必要があります。こうした作業は、交通事故の取り扱いに慣れていない一般の方々では難しく、行政書士だからこそできる業務といっても過言ではありません。

~行政書士費用~

行政書士へ支払う費用(報酬)の相場(全て税抜き)は以下のとおりです。

=相談料=

初回:無料~1万円(60分)

2回目以降:5000円~(1回、60分につき)

=被害者請求(書類作成、手続き代行)=

5万円~

=後遺障害等級認定申請=

被害者請求にかかる書類収集・作成:5万円~

被害者請求手続き代行:5万円~

医療情報収集(病院への同行、医師への聴き取り、医療照会など):5万円~

異議申立書作成:5万円~

このほか着手金(契約と同時に支払い、成果にかかわらず返還請求できないお金)、日当費、実費(交通費、文書費)などが必要とされる場合もあります。

料金体系は行政書士、行政書士事務所により異なりますから、詳細をお知りになりたい方は各行政書士あるいは行政書士事務所に直接問い合わせましょう

~行政書士費用が無料に!?~

行政書士に書類の作成などを依頼するとしても費用が気になって依頼したくてもなかなか依頼できない、という方もおられるでしょう。そんなときはご自身がご加入されている自動車、あるいはご家族の自動車保険に「弁護士等費用特約」という特約が付いていないかどうか確認されてみてください。

弁護士等費用特約とは、先ほどご紹介した行政書士にかかる費用をご加入されている保険会社が一定の限度額内で肩代わりしてくれるというものです。「弁護士等」となっているように、弁護士費用のみならず司法書士費用、行政書士費用も対象となっている場合があります。仮に、ご自身が弁護士等費用特約を付けていなくても、ご家族が付けている場合は使うことができる可能性があります。限度額は通常300万円とされていることが多く、多くの場合、行政書士費用でそこまでかかることはありませんから、実質費用負担なく依頼することが可能です。

もっとも、弁護士等費用特約を使えるかどうかなど詳細については約款ごとに異なりますから、まずは約款で確認するか直接保険会社に問い合わせてみることをお勧めいたします。

 

行政書士へ相談・依頼する4つのメリット

交通事故の被害に遭うと治療に専念したい、しなければならないはずなのに、
・賠償金請求のための書類収集、作成、提出
・加害者の保険会社への対応
など被害者としてやることはたくさんあり、誰かに代わってやってもらいたいと思われることでしょう。

そんなとき、皆さんの頭に思い浮かべる人といえば「弁護士」ではないでしょうか?
しかし、意外にも知られていませんが、行政書士も被害者の味方になって様々な手続きを代行することが可能です。

そこで今回は行政書士に相談・依頼するメリットをご紹介するとともに、こんなときは相談すべきでない、という場合もきちんとご紹介します。

行政書士に相談・依頼するメリットは以下の4点を挙げることができます。

人の依頼を受けて報酬を得て、官公署に提出す~気軽に相談できる~

行政書士は身近な街の法律家、と言われているように皆さんにとって、困ったときはいつでも相談に乗ってくれる親しみやすい存在といえるかもしれません。

街中で見かける行政書士事務所は、他の士業(弁護士、司法書士など)の事務所と比べると割と個人まりとしており、お茶のみ感覚で相談に行ける、頼りにしているという方もおられると思います。

他方で、弁護士は司法試験という難しいし試験を突破した方であるためか、なんとなく「相談するには敷居が高い。」「こんなことで相談したら変な目で見られる」と考える方も中にはおられるのではないでしょうか?

~面倒な書類作成を代行してもらえる~

行政書士の業務は書類を作成することです。

行政書士の業務について規定した行政書士法1条の2では次のように規定されています。

【行政書士法1条の2】
行政書士は、他人の依頼を受けて報酬を得て、官公署に提出する書類(略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(略)を作成することができる。

交通事故では被害者請求、後遺障害等級認定申請、後遺障害等級認定に対する異議申し立てのために様々な書類を準備する必要があります(※)。

しかし、書類の中には専門性が高く、交通事故に慣れていない方にとっては作成が難しいものがあります。

また、適切な後遺障害等級の認定を受けるためには治療中からどんな治療を受け、どんな書類(認定のための証拠資料)を収集し作成するのかという点が非常に大切です。

こうした書類を被害者お一人の力で作成することは大変な労力と時間を要します。

そこで、行政書士が専門的で後遺障害等級認定のために必要な書類を被害者に代わって収集・作成するというわけです。

※被害者請求と必要書類
被害者請求は加害者の自賠責保険会社へ被害者自ら賠償金の支払いを請求する手続きです。

賠償金を支払ってもらうには自信が被害者であること(相手方に過失があること)を明らかにしなければなりません。

そのための書類が「交通事故発生状況報告書」です。

これは被害者ご自身で作成する必要がある書類ですが、事故状況などによっては作成が難しい場合もあります。

※後遺障害等級認定申請と必要書類
後遺障害等級認定申請で最も大切な書類は、医師が作成する「後遺障害診断書」です。

もっとも、医師に等級認定を受けるための診断書を作成してもらうには、それまで(症状固定まで)の通院状況、治療状況・内容などが非常に大切となります。

したがって、必要によっては入通院時から医師と面談したり、医師へ治療状況などの医療照会を行うなどしてその結果を書類にまとめ、申請時に診断書とともに提出する必要があります。

 ~費用が安い!?~

一般的には同じ交通事故を取り扱う士業でも弁護士より行政書士の方が費用(報酬)が安いというイメージかと思いますし、現実的にもそうだと思います。

上述のように行政書士は書類作成がメイン業務であり、弁護士と業務範囲、難易度が異なります(※行政書士は保険会社との示談交渉は行うことができません)から当然といえば当然のことです。

もっとも、行政書士も弁護士も「増額した(あるいは獲得した)賠償金の●%」を成功報酬とする方が多く、その場合両者の違いはあまりない、ということになります。

また、最近では、弁護士費用等特約といってご自身が加入している保険会社が限度額(多くは300万円)の範囲内で弁護士費用を負担してくれるという特約があり、その特約を使えば被害者が費用を負担する必要がありません。

 ~交通事故を専門とした行政書士もいる~

交通事故を専門とした行政書士に相談・依頼すれば賠償金増額を期待できるかもしれません。

特に適切な「後遺障害逸失利益」、「後遺障害慰謝料」を獲得し賠償金を増額させるためには、症状固定前から
どんな検査・治療項目を受けたのか(検査、治療範囲)
検査、治療内容は適切か(検査、治療の質)
を事細かにチェックしていく必要がありますし、必要であれば医師と面談して必要事情を聴取したり、医師に対して医療照会を行って、その結果を書類にまとめる必要があります。

実はこのいわゆる医療調査という部分は弁護士よりか行政書士の方が詳しい、という場合もあります。

つまり、通院、治療中のアドバイスに関しては弁護士より行政書士に相談した方がよい、という場合もあるのです。

弁護士は費用対効果(報酬)からしてこの点に関して手を付けたがらないという実情があるようです。