示談書作成のポイント

今回は、示談書作成のポイントについてご説明致します。

示談書作成は、加害者側であるか、被害者側であるかで変わってきますので、分けてご説明したいと思います。

加害者側で示談書を作成する場合

損害賠償の請求権者と示談しているかどうか

たとえば、物損事故の場合、損害賠償の請求権者(損害賠償を法的に請求できる人)は、車両の所有者です。

実際に車を運転している人が当事者だと認識しがちですが、たとえば、旦那さんの車を奥さんが運転していて、奥さんが事故をした場合、車の損害賠償を請求できるのは旦那さんです。

この場合に、車両の修理費等について奥さんと話をして示談をしても、旦那さんと示談していなければ、意味がありません。

交渉の窓口になるのは、大体「声の大きい人」なので、その人と示談しておけば、あまり問題になる場合は少ないですが、たまに「聞いてなかった」という場合もありますし、そうなった場合には取り返しがつかないので、示談する際には注意が必要です。

免責条項を入れているかどうか

免責条項とは、「この示談により、一切が解決したものとし、今後、互いに一切の金銭請求をしないものとする」といった条項のことをいいます。

この免責条項あれば、後で相手方が「そういえば、こういった損害もあった」と言ってきても、免責条項を理由に断ることができますし、逆に、なければ、そういった「後出し」を許すリスクが残ります。

加害者側で示談書を作成する場合には、この免責条項がなければ書類にする意味がないと言っても過言ではありません。

被害者側で示談書を作成する場合

請求漏れがないかどうか

交通事故の損害賠償では、治療費、休業損害、通院慰謝料といった損害項目を積み上げて、トータルの損害額を算出するという方法が採用されています。

そして、損害項目として何があるのか、各損害項目としてどういったものが・どの範囲で請求できるのか、といったことも、大体「相場」が決まっています。

ただ、こういった「相場」を念頭に置きつつ、「漏れなく」損害を請求することは、専門的な知識が必要です。

一旦示談してしまうと、後で「こういう損害も請求できたのに」と気が付いても遅いですから、示談する前には、一度、法律の専門家に相談することが勧められます。

過剰な免責条項が入っていないか

加害者側では、被害者側から示談後に追加で請求されることを避けるために、免責条項が重要であることをご説明しました。

そうすると、被害者側で示談する際には、免責条項を除きたいところですが、それでは示談にならないので、免責条項を設けること自体は仕方がありません。

他方、免責条項を設けた場合であっても、示談当時には予見できなかったような後遺障害が後で発生した場合には、免責条項の対象とならないと考えられています。

しかしここで、「今後、どのような後遺障害が将来的に発生しようとも、その内容を問わず、一切請求できないものとする」といった過剰な免責条項が挿入されていた場合には、問題です。

もちろん、こういった過剰な免責条項は無効(意味がない)と判断される可能性もありますが、できる限りリスクは避けたいですから、被害者側として示談する際には、免責条項については注意して確認することが勧められます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

示談書のテンプレートは、ネットでも探せば沢山出てくるので、それらしいものは誰でも作成できます。

しかし、一旦作ってしまうと、きちんと法的な拘束力を持つものですから、作成する際には、一度、法律の専門家にご相談させることをオススメ致します。

以上

むち打ちで後遺障害を獲得するためのポイント

今回は、特によく見かける、むち打ちで、後遺障害を獲得するためのポイントについてご紹介いたします。

後遺障害等級を獲得するメリット

後遺障害等級を獲得するメリットは、何より慰謝料が増額するという点にあります。

たとえば、同じむち打ちのケースでも、後遺障害の14級が付けば、それだけで自賠責から75万円という金額が上乗せされます。

後遺障害等級が認定されない、いわゆる非該当のケースと比較すると、後遺障害14級が認定されるかされないかだけで、最終的な受取金額に100万円近くの差が出る場合もあります。

そういう意味で、後遺障害等級は、獲得できる見込みがあるのであれば、是非とも、獲得を目指すべきといえます。

後遺障害を獲得するためのポイント

事故後、早い段階でレントゲン、MRIを撮影してもらう

後遺障害の認定にあたっては、画像所見が一番重視されます。

簡単にいうと、レントゲンやMRIで神経症状の根拠となるような画像が認められれば、後遺障害が認定されやすいですし、認められなければ認定されにくい、というのが一般論です。

そして、レントゲンやMRIを撮影する時期は事故直後が望ましいです。

なぜなら、事故から時間が経過してしまうと、仮にレントゲンやMRIで神経症状の根拠となるような画像が認められたとしても、それが事故によってそうなったのか、自然経過としてそうなったのかが分かりにくくなってしまうからです。

また、レントゲンは骨しか映らないので、特にむち打ちなどの神経症状の場合には、MRIも撮影してもらっておいた方が良いです。

MRIの費用は1万円など高額ですから、相手方の保険会社が治療費等の負担をしている間に撮影しておくことが勧められます。

頑張って定期的に通院する

また、定期的な通院も大事です。

たとえば、通院に1か月くらいの期間が空いてしまうと、「本当に後遺障害が残るような怪我なのか」という疑いが出るからか、後遺障害が認定されにくいです。

逆に、定期的に通院を継続しているケースでは、画像所見がなかったとしても、「通院経過に照らせば」というような形で、後遺障害14級が認定されるケースが散見されます。

そういった意味で、頑張って定期的に通院することが大事です。

なるべく詳しく後遺障害診断書を書いてもらう

自賠責保険では、後遺障害申請をする際、定型の後遺障害診断書をお医者さんに書いてもらい、提出することが必要です。

後遺障害の認定にあたっては、この後遺障害診断書が極めて重要ですから、お医者様には、なるべく詳しく後遺障害診断書を書いてもらうことがオススメです。

後遺障害診断書には、他覚所見(画像や検査の結果から分かる見解)と、自覚症状(患者様の主観的な訴え)を記載する欄がありますが、特に他覚所見が重要です。

お医者様には頼みにくいかもしれませんが、「できる限り詳しくお願いします!」と頼んでみましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

冒頭でご説明しましたとおり、後遺障害が認定されるかどうかは最終的な賠償額に大きく影響します。

皆様の助けになれば幸いです。

以上

【交通事故と慰謝料(4)】交通事故の慰謝料を増額させる方法

ここまで慰謝料の計算方法や相場について解説しきました。
今回は交通事故の慰謝料を増額させる方法をご紹介します。

交通事故の慰謝料を増額させる方法

被害者の損害が補填されるか否かは、損害賠償がどれだけ認められるかにかかっています。
したがって、被害者の方はどうすれば慰謝料額がより多く認められるかということを考えなければなりません。

それでは、ここからはできるだけ慰謝料を増額させる方法について説明していきます。

症状固定後は後遺障害慰謝料も請求する

担当の医師によって症状が固定されたと判断された際、後遺障害が残ってしまった場合には後遺障害等級認定を受けることによって、さらに慰謝料を請求することができます。

後遺障害等級の認定は、医師が行うのではありません。
認定は「損害保険料率算出機構」という組織が専門的に実施しています。

等級認定については加害者の加入する自賠責保険会社が窓口となっていますが、実際に調査や判断を行うのは損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所という機関です。

では、後遺障害認定を受けるにはどのような手続が必要なのでしょうか。
認定手続は原則として面談等は実施されず、書面のみによって判断されます。
認定を申請するには、以下の2つの方法があります。

1つは、加害者側の保険会社が後遺障害等級の認定の申請手続を行う「事前認定」です。
もう1つは、被害者が直接加害者の加入する自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定の申請をする「被害者請求」です。

これら2つの方法のうち、適切な後遺障害等級認定を得るためには、被害者請求による申請手続をとるべきです。
なぜなら、事前認定の場合には、申請書類の作成や資料の収集から提出まで全て任意保険会社が行ってくれるという反面、被害者にとって有利な資料を積極的に収集して提出してくれるというわけではないため、適切な後遺障害等級認定を受けられないリスクが内在しています。

一方、被害者請求の場合はカルテや医師の意見書や陳述書等、被害者に有利な資料を提出したり、逆に自分に不利な資料を修正したり、積極的には提出しないということも可能です。
したがって、適切な後遺障害慰謝料を得るためには、被害者請求による申請手続で行うべきです

弁護士基準で算定できるようにする

入通院慰謝料の算定基準のところで解説しましたが、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つの基準の中で、弁護士基準が最も相場の高い基準になります。

過去の裁判となった事例を参考に算定された基準になりますから、自賠責保険基準の最低限の金額ではなく、また保険会社が定めた額でもない弁護士基準で算定されることが、より多くの慰謝料を請求するためには重要です。

したがって、被害者の方が受け取れる慰謝料を増額するためには、弁護士基準が適用されるようにするべきでしょう。

弁護士基準が適用されるようにするためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、裁判手続きに発展した場合に弁護士基準が適用されることは当然ですが、その他の効果で賠償額の増額が見込める可能性が高まります。
加害者の任意保険会社は示談交渉の話合いになった際、示談金の提示を記載した書面を送付してくることが通常です。

そのよう場合、任意保険会社は自社の基準である、任意保険基準に基づいて慰謝料を計算して金額の提示をしてくることがほとんどです。

しかし、賠償金の算出においては、前述のとおり任意保険基準のほかに自賠責基準と弁護士基準があります。
そこで、任意保険会社が私人である被害者本人に示談案を提示する場合には、最低限の補償額である自賠責保険基準や弁護士基準よりも低額な任意保険基準で提示してくることが通常です。
そこで、弁護士基準を知らずに低い基準で示談してしまう被害者の方が多いのが現実です。

弁護士に依頼すれば、任意保険会社の担当者との交渉も弁護士基準で進めることができる可能性もあります。
なぜなら、保険会社の担当者としては私人である被害者本人と和解交渉している段階では、弁護士基準を被害者が提示してきたとしてもただ拒否していればいいだけですが、弁護士が被害者の代理人となって介入してきた場合にはそうはいきません。

相手方の請求をただ拒否していただけでは、次のステージとして訴訟等の裁判手続に移行して、最も高額な弁護士基準での損害賠償請求が認められる可能性があります。

そこで任意保険会社の担当者としても、なるべく弁護士基準で算定した慰謝料の金額に近い額で早期に和解をして終わらせることに一定のモチベーションが生じてきます。

つまり、弁護士に依頼することで、裁判手続もしくは裁判手続以外での任意の交渉段階において、弁護士基準または弁護士基準に準じた相場での賠償金が認められやすくなるということです

以上から、慰謝料額を増額するためには弁護士に依頼することをおすすめします

入通院慰謝料以外の賠償金を請求し損なわないこと

損害賠償額を最大化するためには、入通院慰謝料以外に請求することができる賠償金についても、請求することを忘れないということは重要です。

入通院慰謝料以外に請求することができる項目としては、以下のものがあげられます。

  1. 修理費用
  2. 評価損
  3. 経済的全損
  4. 代車の費用

修理費用

修理費用とは、交通事故に遭って被害者の方が運転していた自動車が破損・故障し、修理することで再度使用できる見込みがある場合に必要になる修理費用のことをさします。
被害者は、加害者側に被害者の自動車の修理費用を請求することができます。

評価損

評価損とは、交通事故によって被害者が運転していた自動車が破損・故障し、修理することで再び使用することができる見込みがある場合であっても、交通事故によって自動車自体の価値が滅失または減少してしまうことです。

この滅失・現象した自動車の価値を損害として賠償請求することも可能です。

経済的全損

経済的全損とは、交通事故によって被害者の使用していた自動車が破損・故障していまい、仮に修理できたとしても、その修理費用が交通事故当時の自動車の時価額を上回ってしまう場合、これを「全損」と評価することです。

この経済的全損の場合には、修理費用ではなく、自動車の時価額を損害として加害者に支払ってもらうことができます。

ここで注意しなければならないのは、交通事故当時の時価額を超える修理費用については賠償を受けられないということです。

代車の費用

代車の費用とは、交通事故当時被害者が使用していた自動車を修理しているあいだ、または自動車を買い替えるあいだに他の自動車が必要となった場合のそのために費用です。

この場合には、レンタカー代や代車を手配するのに必要となった費用を損害として加害者に請求することができる可能性があります。

まとめ

4回にわたって交通事故と慰謝料についてご紹介をしました。

結論として、弁護士に依頼した場合に慰謝料が増額する可能性が大きいことを説明しました。
慰謝料を含む損害賠償について、ご自身のケースでは具体的にどのように計算すればよいのか判断が難しい場合
もあるでしょう。
そのような場合にはひとりで悩まず、まずは弁護士に相談するべきでしょう。

【交通事故と慰謝料(3)】入通院慰謝料は基準によっても金額が異なる

前回は、入通院慰謝料の計算方法と相場について記事を書きました。

しかし入通院慰謝料も何を基準にするかによって金額も違うのです。
そこで今回は入通院慰謝料の基準などを解説していきたいと思います。

入通院慰謝料は基準によっても金額が異なる

それでは、(1)自賠責保険基準(2)任意保険基準(3)弁護士基準それぞれの基準について詳細を説明していこうと思います。

自賠責保険基準

自賠責保険基準とは、自動車の保有者が強制的に加入させられている自賠責保険をもとに決められている基準になります。

交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としています。
したがって、被害者に支払われる慰謝料の金額も最低限度の額に定められています。

このように、法律に根拠のある基準であることには変わりありませんので、加害者側からは法律で決められている適正な基準額であると主張して示談金を自賠責保険基準で提示してくることも多々あります。

しかし、自動車損害賠償保障法によって義務付けられていることは、自動車保有者が自賠責保険に加入することであり、慰謝料額を定額で定めているわけではありません。

上記のような加害者や加害者側の保険会社の主張には、注意しておく必要があります。

自賠責保険では、120万円が補償される上限金額となっています。

自賠責基準では、慰謝料の他に治療費や休業損害・逸失利益などすべての損害賠償金額が120万円以下だった場合に採用されるもので、損害賠償合計が120万円を超えた場合は自賠責基準で慰謝料を算出する意味はないことになります。

そして、120万円以下の場合には、次にみる任意保険基準と自賠責保険基準とは同額となっていることが多いです。

したがって、損害額が120万円を超えた場合には自賠責保険基準では算出せずに、任意保険基準で慰謝料を計算することになります。

この場合の問題点としては、任意保険基準は各保険会社が独自に作っているものであるので、各社で異なるということが挙げられます。

社内基準であるため一般に公開されているものではないので、被害者の方が確認することができないという問題点があります。

任意保険基準

任意保険基準とは、保険会社が独自で設定している社内基準になります。

そのため、会社によって定められている基準は多少異なるところがありますが、加害者側の任意保険会社は被害者に示談金を提示するときに、この任意保険基準に基づいて算出された額を利用します。

昔は任意保険にも統一基準があり、その基準に従って入通院慰謝料が算出されていましたので、保険会社による算定額も差が出ることはありませんでした。
しかし、規制緩和が進み平成11年に旧任意保険基準が廃止され、現在は任意保険会社ごとに独自の基準を設定しています。

基準に基づく慰謝料の金額については、保険会社によって異なります。
しかし、多くの任意保険会社は旧任意保険基準を参考にして、それに近い金額での基準を設定していると言われています。

任意保険基準は、自賠責保険基準よりも慰謝料相場が高く設定されていると言われていますが本当でしょうか。
具体的に以下の事例を見てみましょう。

交通事故に遭って受傷して、入院せず、通院3か月で通院回数40回の事例を考えてみます。
任意保険基準での入通院慰謝料は前述の表より、378,000円となります。

ちなみに自賠責保険基準でも入通院慰謝料を算出してみましょう。

自賠責保険基準のもとでは、
4,300円×40日×2=344,000円です。

任意保険基準での入通院慰謝料は378,000円で、自賠責保険基準での入通院慰謝料が344,000円です。
このことから、任意保険基準で提示される慰謝料は、最低限の補償を目的とする自賠責保険基準と大きく変わることがないということがお分かりいただけるでしょう。

弁護士基準

弁護士基準とは裁判基準とも呼ばれていますが、どのような基準なのでしょうか。

弁護士基準とは、弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準のことを言います。

この基準が適用されるのは、被害者が弁護士に依頼したときや、訴訟を提起して裁判手続の中で慰謝料を賠償請求していくような場合に適用されます。

この基準は上述したとおり、「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」や「交通事故損害額算定基準」という本に記載されていますので、確認することができると思います。

弁護士基準は、上記3つの基準の中で最も慰謝料額が高い基準になります。
過去裁判で争われた場合に裁判所によって認められた金額になりますので、被害者の方に認められた正当な権利として請求できる金額ということには違いありません。

裁判になったとしても採用されることが多いですので、弁護士に依頼するメリットとしてこの基準の適用があげられます。

まとめ

今回は入通院慰謝料の金額の判定にかかわる基準について詳しくご紹介しました。

次回は交通事故と慰謝料をテーマにした記事の最後になります。

交通事故の慰謝料を増額させる方法などを紹介しますので、ご期待ください。

 

以上

【交通事故と慰謝料(2)】入通院慰謝料の計算方法と相場

前回は、治療費以外に請求できる入通院慰謝料とは何なのか、詳しく解説をいたしました。

今回は入通院慰謝料の計算方法と相場をテーマにご紹介をしたいと思います。

入通院慰謝料の計算方法と相場

入通院慰謝料は障害慰謝料とも呼ばれますが、どのように計算するのでしょうか。
入通院慰謝料は、入院の日数や通院回数、治療期間を計算式にあてはめることで計算します。

したがって、これらの数字をどの計算式にあてはめるか、またはこれらの数字が変わってくると入通院慰謝料として算出される金額が変わってくることになります。

そして、入通院慰謝料を算出するための基準には、大きく分けて以下の3つがあるとよく言われています。

  1. 自賠責保険基準
  2. 任意保険基準
  3. 弁護士基準

慰謝料相場は(1)自賠責基準(3)任意保険基準(4)弁護士基準のいずれかで計算することになります。
次に、それぞれの基準の計算方法とその相場の違いについて順番に解説していきます。

自賠責保険基準の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

まずは、自賠責保険基準における入通院慰謝料の計算方法について説明していきます。

自賠責保険基準では、入通院慰謝料は1日当たり日額4300円と決定されています。
具体的な計算式を説明します。

まず、「交通事故後最初の診察から治療終了までの期間」または、「入通院日数の2倍」に1日当たり4,300円かけて計算します。
そして算出された金額のうち少ない方が入通院慰謝料となります。
具体的に計算してみましょう。

交通事故に遭ってむちうちになり、初診から治療終了までに3か月、実際に病院には1か月につき10日通院していたとします。
交通事故後最初の診察から治療終了までの期間は約90日です。

4,300×90日=387,000円

実際の通院日数は10×3か月=30日です。
4,300×30日×2=258,000円

この場合、実通院日数を採用して計算した額の方が少ないので、後者の計算式によって算出された金額の方が小さくなり、これが入通院慰謝料として採用されます。

したがってこのケースでは、入通院慰謝料は258,000円だということになります。

なお,上記の2つの計算式より,2日に1回以上のペースで通院すれば慰謝料の金額が増額するのではないかと誤解して考える方がいます。

しかし,治療期間が上限となりますので,2日に1回を上回る頻度で通院したとしても,入通院慰謝料が増額することはありません。

任意保険基準の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

次に,任意保険基準での入通院慰謝料の相場等を解説します。
この基準は保険会社が各社独自に設定し,示談交渉に用いている基準になります。

ここでは、平成11年7月以前は統一基準があったためその金額を参考におおよその相場をご紹介したいと思います。

任意保険基準による入通院慰謝料表(単位:万円)

入院 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月 7か月 8か月 9か月 10か月
通院 25.2 50.4 75.6 95.8 113.4 113.4 128.6 141.2 152.4 162.6
1か月 12.6 37.8 63 85.6 104.7 120.9 134.9 147.4 157.6 167.6 173.9
2か月 25.2 50.4 73 94.6 112.2 127.2 141.2 152.5 162.6 171.4 176.4
3か月 37.8 60.4 82 102 118.5 133.5 146.3 157.6 166.4 173.9 178.9
4か月 47.8 69.4 89.4 108.4 124.8 138.6 151.3 161.3 168.9 176.4 181.4
5か月 56.8 76.8 95.8 114.6 129.9 143.6 155.1 163.8 171.4 178.9 183.9
6か月 64.2 83.2 102 119.8 134.9 147.4 157.6 166.3 173.9 181.4 185.4
7か月 70.6 89.4 107.2 124.3 136.7 149.9 160.1 168.8 176.4 183.9 188.9
8か月 76.8 94.6 112.2 128.6 141.2 152.4 162.6 171.3 178.9 186.4 191.4
9か月 82 99.6 116 131.1 143.7 154.9 165.1 173.8 181.4 188.9 193.9
10か月 87 103.4 118.5 133.6 146.2 157.4 167.6 176.3 183.9 191.4 196.5

上記の表について解説していきます。
入院しかしていない事案では、「入院」の欄の最上位の行が入院月数を表しています。
その一つ下段の数字が慰謝料金額になります。

では,通院しかしていない事案では,「通院」の欄の一番左行が通院月数を表しています。
その一つ右の行の数字が慰謝料金額になります
入院と通院の両方があった場合には、入院した月数と通院した月数とが交わる欄に記載された金額が慰謝料の基準となります。

それでは具体的な事案について入通院慰謝料がいくらになるのか考えてみましょう。
事故の結果,通院のみ3か月,通院回数40回の場合,上記の表からは入通院慰謝料は37万8000円となります。

弁護士基準(裁判基準)の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

最後に、弁護士基準(裁判基準)とはどのような基準なのでしょうか。
弁護士基準(裁判基準)には2つの算定基準が存在しています。

これらの基準は通称「赤い本」と呼ばれる日弁連が出している本に掲載されています。
むち打ち症などの比較的軽い症状の場合には①の表を使用します。
他方,骨折などの重症の場合には②の表を使用します。

入通院慰謝料表①(単位:万円)

単位(万円) 入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195
1ヶ月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199
2ヶ月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201
3ヶ月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202
4ヶ月 67 955 119 136 152 165 176 185 192 197 203
5ヶ月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204
6ヶ月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205
7ヶ月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206
8ヶ月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207
9ヶ月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208
10ヶ月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

入通院慰謝料②(単位:万円)

単位(万円) 入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306
1ヶ月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311
2ヶ月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315
3ヶ月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319
4ヶ月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 326 323
5ヶ月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325
6ヶ月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327
7ヶ月 124 157 188 217 244 266 286 301 316 324 329
8ヶ月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331
9ヶ月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333
10ヶ月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

具体的に表を見ながら、入通院慰謝料を算出してみましょう。
事故の結果,むち打ち症となり入院はせず,通院を3か月継続した場合には,軽傷の場合の表①を使用します。

このような事案では,入院0か月,通院3か月が交わった箇所を見ますと,530,000とあります。
よって,入通院慰謝料は53万円と割り出せます。

次に事故の結果,骨折し入院はせず,通院を3か月継続した場合はどうでしょう。

この事案は重症の表②を使用します。
②の表を見ると,入院0か月,通院3か月が交わった箇所には730000円とあります。
よって慰謝料は73万円となります。

まとめ

今回は入通院慰謝料の計算方法と相場について詳しくご紹介しました。

次回も交通事故と慰謝料をテーマに記事を公開いたします。

 

以上

【交通事故と慰謝料(1)】治療費以外に請求できる入通院慰謝料とは

交通事故に遭って受傷してしまったような場合、加害者に対して示談金を支払ってもらえることをご存じの方は多いでしょう。
病院に入通院したような場合には治療費は加害者側に負担してもらえますが、その他の損害はどうなるでしょうか。

今回から複数回にわけて、入通院慰謝料について3つの算定基準とそれぞれの基準による計算方法とその相場について図表を用いて分かりやすく解説していきます。

また、慰謝料を含む損害賠償金をできるだけ増額する方法についても具体的に説明していますので、是非最後まで読んでください。

交通事故では治療費以外に入通院慰謝料も請求可能

まず、慰謝料とはどのようなお金のことを指すのでしょうか。
慰謝料とは財産権以外に対する損害賠償金のことを言い、精神的または肉体的な苦痛に対してそれを慰謝することを目的に支払われるお金のことを言います。

精神的または肉体的な苦痛に対する損害賠償金が慰謝料であると説明しましたが、どういう意味でしょうか。
交通事故が原因で怪我をして、入院や通院を余儀なくされる状態になり、身体的な自由が奪われることや検査や治療に時間を割かなければならないこと、身体の異常等々様々な苦痛に晒されることになります。

慰謝料とは、このような精神的または肉体的な苦痛を慰謝するために支払われる金銭であるということです。
慰謝料イコール示談金だと理解している方も多いようですが、その理解は少し不正確です。

交通事故に遭って受傷した場合には、それらの苦痛以外にも様々な損害が発生します。
交通事故の場合、まず、入院や通院によって病院に支払う治療費や、病院までの交通費が発生します。
入通院を余儀なくされることで、本来であれば働いて得られたはずであるのに、休まざるを得なくなったために得られなくなった収入については休業損害が発生します。

さらに、後遺障害が残った場合には、後遺障害のせいで労働能力が喪失または減少してしまいます。
そのために、将来得られるはずであった収入が得られなくなる分を補填する逸失利益などが生じます。

慰謝料はあくまで、交通事故が原因で受傷した怪我や治療による精神的または肉体的な苦痛に対して支払われる損害賠償金ですので、治療費等のその他の支出とは別に加害者や加害者側の保険会社に請求することができます。

以上から慰謝料は示談金の中の一部をさしますが、それ以外にも示談金として請求できる損害があるということになります。
こういった理由で、示談金イコール慰謝料という理解は不正確であるということになります。

入通院慰謝料は計算方法が決まっている

では、入通院慰謝料はどのように計算するのでしょうか。
治療費や交通費であれば、領収証やレシートがありますので実際に負担した実費がわかり、これを請求することができます。

他方で慰謝料はどのように算出するのでしょうか。
実は、入通院慰謝料はその相場が決まっています。
事実上、慰謝料を考える場合には、裁判所であっても定額化している傾向があります。

裁判をしない任意での示談交渉の段階でも、個々の判断はほとんど結論に影響を与えないまま相場通り計算されている実態もあります。
したがって、慰謝料相場を理解しておくことは示談交渉を有利に進めていくために必要な知識であると言えます。

まとめ

今回は治療費以外に請求できる入通院慰謝料について詳しくご紹介しました。

交通事故と慰謝料をテーマに複数回解説していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

以上

弁護士特約を重複させるメリット

弁護士費用特約の補償が重複した場合には、保険料も重複しているためその分無駄に保険料を負担していることになります。
それでは補償が重複することにはデメリットしかないのでしょうか。
死亡事故や重傷事故の場合には弁護士費用特約の補償が重複することにはメリットもありますので説明していきます。

重複により補償限度額が上がる

弁護士費用特約の補償が重複すると、その重複した部分について保険料がそれぞれ発生します。そこで、保険適用の場合に保険金が二重に貰えるわけではないので重複部分の保険料は無駄だということになります。

しかし、補償が重複している場合には補償限度額が増える場合があります
弁護士費用特約による補償限度額とはどのようなものでしょうか。
一般的な補償限度額は、被保険者1名につき、弁護士への法律相談費用は10万円、弁護士への着手金および報酬については300万円です。最大1700万円までの損害賠償金の請求に関する事案については弁護士費用を補償してもらえることになります。

それでは、損害賠償金の請求が1700万円を超える請求をするケースについてはどうでしょうか。
例えば、交通事故で被害者が死亡した場合や、後遺障害等級が11級を超えるような後遺障害が残る場合など重篤な結果が生じたケースには損害賠償金として相手方に1700万円以上の金銭を請求することが容易に想定できます。

このような弁護士費用特約の補償限度額を超過するような場合には、弁護士費用特約の補償が重複していれば2つの保険により最大600万円までの弁護士費用が補償されることになります。
これはどういうことかというと、約3900万円までの損害賠償請求に関する弁護士費用が保険会社により負担されることになります。

つまり、弁護士というプロに依頼することによって事故の相手方から取り戻す金銭が増額できたとしても弁護士に依頼する費用に自己負担額があると、結局十分な補償を受けたことにはなりません。
そこで弁護士に依頼した場合の費用の手出し負担を軽減させることができるというメリットがあります。

もっとも、交通事故事件の場合に弁護士費用が300万円を超過するような事例は多くはありません。したがってそのような稀有なケースを想定して弁護士費用特約の保険による補償を重複させておくというメリットはそれほど大きいものとはいえないでしょう。

ただし、リスクは小さいといえども、もし万が一重大事故に遭遇した場合には、被害者本人だけではなく、配偶者や同居の親族の保険契約の内容なども確認してみましょう。
弁護士費用特約が重複している補償が存在している可能性があります。

弁護士費用特約による弁護士費用の補償についてまとめておくと以下のようになります。
通常の交通事故の場合には、補償の重複がない場合もある場合でも弁護士費用については300万円を超えるようなケースは少ないですので全額補償される可能性が高いです。

そして、死亡や後遺障害等級が11級以上のような重大な結果を招来した交通事故の場合には、補償の重複がない場合には弁護士費用について300万円を超える部分については自己負担となります。
他方、このようなケースで補償の重複がある場合には600万円までの弁護士費用が補償されます

別個の親族や友人も補償対象となる

別居の親族や友人・知人が自動車に搭乗していた場合に弁護士費用特約が付されている方の自動車に乗っていた場合には保険の補償対象となります。

例えば、1台目の自動車には弁護士費用特約を付していて、2台目の自動車には付けなかったとします。
本人と同居の家族は、1台目、2台目のどちらの自動車に搭乗していても1人ずつ弁護士費用特約を利用することができますが、それ以外の第三者が2台目に搭乗していた場合に交通事故に遭ったとしても弁護士費用特約を利用することができません。

しかし、2台目の自動車についても弁護士費用特約を付していた場合ではどうでしょうか。
この場合に本人と同居の親族以外の第三者が2台目に搭乗中に交通事故にあったとしても弁護士費用特約を適用することができます。

つまり、別居の親族や友人が自動車に乗る場合には1台目および2台目それぞれに弁護士費用特約を付しておくことでいざという交通事故であっても弁護士費用を補償してもらえるというメリットがあるといえます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は弁護士特約を重複させるメリットについて解説しました。
まずはご自身の保険契約の内容について確認してみましょう。

交通事故に遭った場合に弁護士費用特約を利用できる場合には弁護士費用を補償してくれますのでまずは弁護士に相談することをお薦めします。

以上

弁護士特約は重複すると無駄?

交通事故に遭った場合に被害者が弁護士費用を自己負担しなくてもよい弁護士費用特約という仕組みがあります。
この弁護士費用特約は2台目以降に保有する自動車の保険にも付した方がよいのでしょうか。
また、弁護士費用特約が重複した場合、補償はどのようになるのでしょうか。

2台目以降の車に弁護士特約を付けると重複する

まず、弁護士特約や弁護士費用特約と呼ばれるものはどのようなものなのでしょうか。

弁護士費用特約とは、交通事故によって負傷したり財産の損害を受けたりして、加害者に対して損害賠償請求を行うときに弁護士に依頼する費用や法律相談をする場合の費用を保険会社が被害者の代わりに補償してくれる特約です。

それでは、弁護士費用特約は自動車を2台目以降保有する場合にも付けた方が良いのでしょうか。1台目の自動車と2台目の自動車にそれぞれ弁護士特約が付されていた場合にはどのような取り扱いとなるのでしょうか。

結論から言えば弁護士特約は1台目の自動車に付しておくだけで十分です。
なぜなら、本人や同居の家族が2台目以降に保有した自動車に搭乗中に交通事故に遭ったとしても、1台目に付した弁護士特約の補償を受けることができるからです。

そのため、弁護士費用特約は1台目の自動車に付していれば基本的に困ることはないと考えておけば大丈夫だと思います。
また、2台目以降の保有した自動車に弁護士費用特約を付した場合には弁護士費用特約による補償が重複してしまうことがあります。

それでは、例外として2台目以降に保有する自動車にも弁護士費用特約を付した方がいい場合はあるのでしょうか。
2台目以降に保有する自動車にも1台目と重複して弁護士費用特約が付されていていれば、親族以外の第三者に対する補償の面でメリットがあります。
どういうことかというと、2台目以降に弁護士費用特約が付いていた場合には、親族以外の第三者が乗車していて交通事故に遭い負傷してしまったとしても、弁護士費用特約の適用を受けることができるということです。

同居している家族以外の第三者とは、たとえば、別居している他人のみならず、別居している両親や祖父母、孫等も含まれます。そのような人の送り迎えや搭乗させている人には保険適用の主体的範囲は重要な問題です。
本人の同居の家族以外の第三者を自動車に乗せることが多い方にすれば、1台目の弁護士費用特約の重複はとりわけ問題にすることなく2台目以降の自動車についても弁護士費用特約を締結しておくことが転ばぬ先の杖となるかもしれません。これについて詳しくは後述します。

以上の説明をまとめておきます。

1台目の自動車に弁護士費用特約がある場合、この1台目の自動車に搭乗した本人とその家族には1台目の保険により交通事故の補償を受けることができます。
また、本人と家族以外の第三者についても1台目に搭乗する場合に交通事故に遭った場合には1台目も保険の適用を受けることができます。

他方、2台目以降の自動車に弁護士費用特約がない場合には取り扱いが異なってきます。

本人と家族が2台目の自動車に搭乗して交通事故に遭った場合にも1台目の弁護士費用特約が適用され補償を受けることができます。
しかし、本人と家族以外の第三者が2台目の自動車に搭乗中に交通事故に遭った場合には1台目の弁護士費用特約の適用はなく補償を受けることができません。

同居の家族の保険についている弁護士特約も重複する

保険が付されているのが1台目の自動車の場合には弁護士費用特約により補償される保険の重複は起きません。
しかし、本人の同居の家族が自動車保険に加入していて弁護士費用特約がある場合には、1台目であっても補償が重複しています。
まず、自動車保険に加入するときは、家族の自動車保険の内容についても確認しておくことが大切です。
本人の加入している自動車保険に弁護士費用特約が付されている場合にも、家族との自動車保険との内容の重複は確認しておく必要があります。

例えば、本人が自動車保険に加入しようと検討している場合、すでに本人の同居の家族が契約している自動車保険に弁護士費用特約が付されていたとします。
この場合には本人の同居の家族の自動車保険の適用により、本人および本人の配偶者についても弁護士特約による補償を受けることができます。

したがって、このような事案で本人が独自に弁護士費用特約に加入すると、本人とその配偶者に対する自動車保険の補償が重複してしまう結果となります。

他方で、このケースで本人に別居中の未婚の子どもがいる場合を考えてみましょう。

この子どもは本人の親の保険による弁護士費用特約による補償を受けることはできません。

この別居中の未婚の子どもにも自動車保険の補償を適用させるためには本人が独自に弁護士費用特約に加入することに意味があるといえるでしょう。

他の損害保険の弁護士特約との重複にも注意

弁護士費用特約は、自動車保険の特約として付されることが多いです。
しかし、自動車保険の特約ではなく火災保険の特約として弁護士費用特約を付すことができる場合もあります。

そのような場合には、自動車保険の特約と火災保険の特約で弁護士費用特約が重複する事態になります。

それでは、火災保険の弁護士費用特約は自動車保険の特約とは違いがあるのでしょうか。
自動車保険の弁護士費用特約と、火災保険の弁護士費用特約とは異なる場合があります。
自動車保険の弁護士費用特約は、保険が適用されるのが契約車両の交通事故に限定されている場合がほとんどだと思います。

他方で火災保険については、歩行中に落下物にあたって負傷したケースや、歩行中に自転車に追突されて負傷したケースのような日常生活上での事故も補償適用となっている場合があります。

自動車を持っている場合には火災保険の弁護士費用特約を別途付けておく必要性は高くないでしょう。ただし、火災保険の弁護士費用特約の方が補償の範囲が広い場合もありえます。
自動車での交通事故対策も含めてより広範囲の補償を具備しておきたいと考えるのであれば弁護士費用特約を付しておくことにも意味があります。
しかし、重複する範囲については保険契約する意味はないですので、自動車保険の特約、火災保険の特約の適用範囲をあらためてよく確認してから契約することが重要です。

結論から言うと弁護士費用特約を複数契約する必要性は低いです。

複数の保険で弁護士費用特約を契約していた場合であっても、複数の保険から保険金を受け取れるわけではないことは留意しておく必要があります。

例えば、事故で負傷して弁護士に依頼したことで費用が100万円かかったとしましょう。
その場合、自動車保険と火災保険で弁護士費用特約を付していたからといって、弁護士費用200万円を受け取ることはできません。あくまで受け取れるのは実際に生じた負担100万円のみです。
したがって、重複して契約している場合には保険料が無駄になっている可能性があります。
また、同居の親族や配偶者が保険契約している場合にも重複に注意してください。

弁護士費用特約は、配偶者や同居の親族などは保険の対象として含んでいることが一般的ですので家族で複数の保険を契約することにあまり意味はないかもしれません。

補償が重複している場合には、保険料も重複している場合がありますので確認しておきましょう。

以上

交通事故で付けられる違反点数

交通違反は、発覚すると違反点数が付けられる仕組みで、その違反点数の数によって受ける罰の種類も異なります。今回は、交通事故を起こした場合の点数はどうなっているのか、詳しく解説します。

物損事故の場合

車に追突する・ガードレールに激突するなどの事故を起こしながら、被害者に該当吸える人物がケガ・死亡をしていない事故の名称が、物損事故です。

物損事故の場合、被害者は出ていないので、行政・刑事処分には当てはまりません。つまり、行政・刑事的な視点でみた場合、免停、懲役、罰金などの扱いにはならないのです。

交通違反における違反点数は、行政処分として判断されたものに付けられるので、物損事故における違反点数は対象外となります。

ただし、行政・刑事責任は問われなくても、民事責任としてみた場合、損害賠償の責任は生じるので、示談金などの支払いをしなくてはいけません。

人身事故の場合

人身事故は被害者が存在するので、民事だけでなく行政の責任が生じて、事故の規模によっては刑事責任も問われます。

そして、人身事故は行政に該当するので違反点数が加算されることになり、事故の状況によって違反点数は変化する仕組みです。

基礎点数と付加点数

人身事故を起こした場合、基礎点数付加点数という2種類の違反点数が加算されます。

基礎点数は交通違反を起こした場合、必ず加算されるもので一律2点という決まりです。

その基礎点数にプラスされるのが付加点数です。この点数は事故を受けた被害者の状態によって区分されます。

・死亡事故の場合
20点(被害者側に過失がある場合は13点)

・全治3ヶ月以上で後遺障害ありの場合
13点(被害者側に過失がある場合は9点)

・全治30日以上3ヶ月未満の場合
9点 (被害者側に過失がある場合は6点)

・軽傷で全治15日以上30日未満の場合
6点 (被害者側に過失がある場合は4点)

・軽傷で全治15日未満および建造物破損の場合
3点 (被害者側に過失がある場合は2点)

被害者側に過失割合がまったくなく、加害者側の一方的な責任の場合、そして、被害者が負った損傷が重いほど違反点数も多くなる仕組みです。

点数によって決まる運転免許の処分

違反点数の加算、過去の交通違反の記録によって、所持している運転免許に対する処分が決まります。

点数と処分の関係は、以下の通りです。

・1点(免停、免許取り消しはなし)
・2点(違反歴によって免停なしか免停90〜150日
・3点(違反歴によって免停なしか免停120〜180日
・4点(違反歴によって免停・免許取消なしか免停60〜150日・取消1〜3年
・5点(違反歴によって免停・取消なしか免停60日・取消1〜3年
・6点(免停30〜90日・取消1〜3年
・7点 (免停30〜90日・取消1〜3年
・8点(免停30〜120日・取消1〜3年
・9点 (免停60〜120日・取消1〜3年
・10~11点(免停60日・取消1〜4年
・12~14点(免停90日・取消1〜4年
・15~19点(取消1〜4年
・20~24点(取消1〜5年

当て逃げ、飲酒運転をした場合

当て逃げをした場合、それも処分対象となります。違反点数は基礎・付加点数の合計で7点になり、免停約1ヶ月の処分です。

飲酒運転をした場合も交通違反に該当するので、違反点数が加算されます。

飲酒運転は2種類あり、酒酔い運転酒気帯び運転の2つです。酒酔い運転は、アルコール摂取によって正確な運転判断ができないと断定された状態で、違反点数35点の加算、3年の免許取消となります。

酒気帯び運転は、正常な状態であっても少しでもアルコール摂取をした場合です。この違反項目はアルコール摂取量によって違反点数が異なり、13〜25点が加算されて、免停や取消処分となります。

まとめ

いくら小さい交通違反であっても、それを積み重ねるとそれだけ違反点数も加算されて、最終的には免停や免許取消の処分が待っています。

点数を稼いで免許を取り上げられないように、安全運転を心がけましょう。

以上

 

無免許で交通事故を起こした場合の刑罰

自動車やバイクを運転するには免許を取得する必要がありますが、もし、違法である無免許運転をして、さらに交通事故を起こしてしまった場合、どのような刑罰があるのでしょうか。今回は無免許運転の交通事故の刑罰について解説します。

無免許運転の定義

無免許の交通事故について知る前に、そもそも無免許運転とはどのような定義なのか、知っておきましょう。無免許運転については道路交通法の第六十四条に詳しく記載されているので、それを以下よりわかりやすく説明します。

運転免許証を一度も取得したことがない

運転免許証は、教習所に通う・試験を受けるなどして自身の免許証を発行してもらうことが可能です。しかし、そのような一連の道程を歩まずに、一度も運転免許証を所持した経験のない人は、車やバイクを運転する資格はありません。その決まりを破って運転する人は違反となります。

運転資格がない乗り物に乗っている

運転免許証にはさまざまな種類があり、自分が乗車する自動車やバイクに合わせて、それを対象とした免許証を取得・所持する必要があります。

例えば大型トラックは大型免許を取得する必要があり、それ以外の普通免許やバイクの免許を持っていても運転はできません。そのため、大型免許を持っていないのに大型トラックを運転することは違法に該当します。

免停期間中

過去に交通違反などを起こして、違反点数の合計がある点数まで到達すると、免停処分が科せられて運転が禁止となります。免停期間は点数によって異なり、最小で30日、最大で180日です。この免停中の運転は無免許運転の一種なので、これが発覚すると免許取り消しとなります。

免許取り消しの欠格期間中

免許の取消しは過去に違反で付けられた点数によって、いくつかのタイプがあります。付けられた点数の数で免許再取得ができるまでの欠格期間が異なり、その期間の幅は短くて1年、最長で10年です。この欠格期間中に「過去に運転の経験がある、運転には自信がある」などの理由で運転しても、当然ながら無免許運転扱いです。

免許更新をしない

運転免許は数年に1回更新をする必要があり、更新をしなかった場合は運転資格の停止の扱いになります。特に違反行為をしていなくても、この時点で免許停止の状態なので無免許と同様です。ただし、失効日から半年以内に講習を受講して、視力や動体視力の適性試験を通過すれば、免許証の交付が可能です。

無免許運転で交通事故を起こした場合

無免許での交通事故は、罰金や保険などはどのようになっているのでしょうか。以下より具体的な説明をします。

罰金、違反点数

上記のような無免許運転に該当する状態で交通事故を起こすと、50万円以下の罰金および3年以下の懲役が科せられます。それに加えて違反点数が25点も付くので、数ある交通違反のなかでも重罪の扱いです。そして、交通事故の内容によってさらに点数が付加されて、刑事罰としての罪が重くなります。

保険は適用されるのか

無免許運転で交通事故が発生して、もし加害者が自賠責保険や任意保険に加入していた場合、対人・対物賠償保険は保険の対象内です。そのため、被害者が大きな損害を受けてもこれらの保険が補償してくれるので、被害者や被害者の所有物に関してはケアできます。

しかし、保険は被害者には適用されますが、加害者は対象外です。そのため、大きな損害が発生しても自身で処理しなくてはいけません。そして、無免許運転の車に同乗者がいた場合、運転者が無免許であると知っていた・知らなかったによって保険は対象内・対象外と変化する仕組みです。

知っていた場合は、搭乗者傷害保険人身傷害補償保険の保険金が支払われないケースもあり、仮に支給の対象内となった場合でも、減額する可能性もあります。また、同乗ではなく車を貸し出した場合でも、無免許だと知っていた場合は保険は適用されず、事故による車の修理代は一切支給されません。

まとめ

車の無免許はそれだけでも決して軽い罪ではありませんが、さらに交通事故を起こしてしまった場合、莫大な損害をこうむります。最悪の事態を引き起こさないように、絶対に無免許運転はやめましょう。

 

以上