交通事故は専門家へ相談しよう

交通事故は誰もが遭う可能性のあるものですが、人生において何度も経験するものでもありません。

そのため、交通事故に遭ってしまった際に、どのように対応するのがベストなのかという判断は普通の方には難しいといえるでしょう。

そこで、交通事故の対応については、専門家に相談することをおすすめします。ここでは、専門家に相談することのメリットや専門家を選ぶ際の注意点について解説していきます。

交通事故の専門家とは

交通事故の専門家としては、弁護士や行政書士が挙げられます。

弁護士は、保険会社との示談交渉など交通事故の手続き全般への対応を、行政書士は、後遺障害認定の申請書など交通事故にかかわる書類作成を専門としているところが多いでしょう。

専門家に相談するメリット

ここでは、交通事故の問題を専門家に相談するメリットを解説します。

交通事故解決までの流れを理解できる

交通事故に遭うのが初めての場合には、この後の手続きがどうなるのかわからずに不安という方も多いでしょう。

専門家に相談することで、事故解決までの流れを丁寧に説明してもらうことができ、この先どうなるのかわからないという不安を取り除くことができます。

手続きを有利に進めることができる

交通事故の内容について言い分が違う場合には、それぞれの話の内容から過失割合を決めることになります。

過失割合がどうなるかというのは、交通事故の手続き全般において影響を与える重大な事項です。

その交渉を専門家である弁護士に任せることで、自分の主張を上手く整理し、証拠に基づいた主張をすることができます

その結果として、過失割合の交渉が上手くいけば手続を有利に進めることができる可能性が高くなるでしょう。

賠償金の金額が増える可能性がある。

交通事故の被害者で通院が必要となった場合には、慰謝料の支払いを受けることができます。

この慰謝料については、弁護士が交渉することで裁判基準という基準での支払いを受けることができるようになります

慰謝料の支払い基準としては、保険会社による独自の基準と、裁判になった場合の基準(裁判基準)などがありますが、裁判基準の方が金額は高くなります。

そのため、弁護士が交渉することで、賠償金の金額が増える可能性があります。

専門家を選ぶ際の注意点

専門家を選ぶ際には、交通事故の解決実績が豊富な専門家を選ぶようにしましょう。弁護士や行政書士でも交通事故の取り扱い経験がほとんどないという方もいるので注意が必要です。

また、専門家に相談する際には、自身の保険に「弁護士特約」というものがあるのかに注意しましょう。弁護士特約があれば、弁護士や行政書士の相談についても自身での費用負担なく利用することができます。

交通事故の警察への届出について

交通事故が発生した場合には、警察に届け出なければなりません。これは、運転者としての義務ですので、届出は必ず行うようにしましょう(道路交通法72条1項)。

交通事故の届出には、「人身事故」の届出と「物損事故」の届出の2つの種類があります。

この点について、交通事故の加害者から「物損事故にして欲しい。」などと頼まれたという方もいらっしゃるでしょう。

そのときに相手の頼みに応じても良いものなのかを判断するためには、「人身事故」と「物損事故」でどのような取り扱いの差があるのかを理解している必要があります。

交通事故を警察に届け出することの意味や人身事故と物損事故の違いについて解説していきます。

警察への届け出の意味

交通事故を警察に届け出すると、それぞれの当事者の事情聴取と実況見分が行われます。そして、その手続を終えると交通事故証明書の発行を受けられるようになります

交通事故証明書は、自賠責保険や任意保険など保険金請求の場面で必要になる重要な書類です。当然のことながら、交通事故としての届け出がされてなければ、保険金の支払いも受けられなくなってしまいます

交通事故を警察に届け出することなく当事者同士で勝手に示談をしてしまったというケースもありますが、これは届出義務という法律上の義務に違反する行為であり、後にトラブルとなっても解決するのも難しくなるでしょう。

また、相手方が事故現場から逃走してしまったというような場合でも、警察への届け出は必ず行うようにしましょう。

届け出をしないと、ひき逃げなどでの捜査をしてもらえないのはもちろんのこと、保険請求の手続もできなくなるので注意が必要です。

「人身事故」と「物損事故」の違い

人身事故と物損事故の違いとしては、まず、加害者が刑事罰を受ける可能性があるのか、免許の違反点数が加算されるのかという違いがあります。

被害者の方の中には、加害者が処罰されたり、違反点数が加算されたりということについては、関心のない方もいらっしゃるでしょう。

しかし、人身事故を物損事故の扱いとすることで被害者自身も不利益を受けることがあります

人身事故の場合には、自賠責保険や任意保険から治療費や慰謝料の支払いを受けることができます。
物損事故の扱いであっても、これらの支払いに対応してくれる場合もありますが、人身事故扱いの場合と比べて不十分なものとなる可能性が高いでしょう。

また、事故状況に争いが生じた際に、物損事故扱いでは、警察から実況見分調書を取り寄せることができなくなります。
実況見分調書がなければ事故状況の証明は難しく、加害者に有利な結果となってしまう可能性もあります。

そのため、加害者から物損事故にして欲しいなどの要望があっても、受け入れることはおすすめできません。

交通事故発生から示談までの全体像2

今回は、前回の記事に続いて交通事故の全体像を解説していきます。

交通事故発生から示談までの全体像1

3.怪我についての症状固定

治療の終了

病院での通院治療を続けて、症状が完治したら治療終了となります。

また、怪我の内容によっては症状が完治していなくても治療終了となることがあります。交通事故の治療やリハビリを続けていても、それ以上の症状改善が見込めない状態になることを症状固定といいます。

症状固定の状態となると、その時点で保険会社から治療費を支払ってもらっての治療は終了となり、あとは示談交渉によって解決するこちになります。

後遺障害認定

症状固定で治療が終了した場合には後遺障害認定の申請手続きをおこなうことができます。

申請の結果、後遺障害の認定を受けると、後遺障害についての慰謝料などの支払いを受けることが可能です。

4.保険会社から賠償金の提示

賠償金の種類

病院での治療が終了すると、保険会社から賠償金の提示がされます。

賠償金の種類には次のようなものがあります。

  1. 治療費・交通費
  2. 休業損害
  3. 後遺障害による逸失利益・慰謝料
  4. 入院通院による慰謝料
  5. 物的損害
  6. その他

賠償金の提示

保険会社は、これまでの治療経過や過失割合など今回の交通事故についての様々な事情を踏まえて、賠償金の提示をおこないます。

通常、保険会社からの賠償金の提示は、保険会社からの書面によっておこなわます。保険会社からの書面は、治療費など項目ごとの賠償金が記入された書面と、免責証書と呼ばれる示談書に分けられています。

賠償金の内容に納得できれば、免責証書に必要事項を記載して保険会社に返送するようにしましょう。

5.保険会社との交渉

保険会社からの賠償金の提示に納得できない場合には、保険会社との交渉をおこなうことになります。

保険会社との示談交渉を進めるには専門的な知識が必要です。

交渉をおこなう場合には、一度、交通事故の専門家に相談してみることをおすすめします。

交渉で合意に至らなければ裁判で決着となる可能性もあります。

6.賠償金の支払い

保険会社との交渉が終わると、保険会社から賠償金の支払いを受けることができます。

まとめ

交通事故の全体像を解説しました。

交通事故の発生から賠償金の支払いまでにかかる時間は、交通事故の内容やその後の経過によって様々です。事案によっては数年かかるといったこともあるでしょう。

どのような交通事故であっても、最初に解決までの全体像を知っておくことは重要です。

今回の記事を参考に、交通事故の全体像を把握したうえで、手続を進めるようにしてください。

 
以上

交通事故発生から示談までの全体像1

多くの方にとって、交通事故は人生で何度も経験するようなものではありません。

そのため、交通事故に遭って、何から始めたら良いのか、解決までどのくらいかかるのかと不安になる方がほとんどでしょう。

そこで、今回は、交通事故発生から示談までの全体像を解説していきます。細かい部分よりも、まずは全体像を知ることで、安心して手続を進めるようにしましょう。

交通事故発生から示談までの流れは次のようになります。

  1. 交通事故の発生
  2. 怪我の治療開始・過失割合の交渉
  3. 怪我についての症状固定
  4. 保険会社から賠償金の提示
  5. 保険会社との交渉
  6. 賠償金の支払い

それぞれの内容を見ていきましょう。

1.交通事故の発生

負傷者の救護・現場の安全確保

交通事故にあってしまったら、まずは負傷者の救護や現場の安全を確保しましょう。

救急車の手配や事故車両の移動など、被害を拡大させないために迅速に行動することが必要です。

警察への連絡

交通事故の大小にかかわらず、交通事故が発生した場合には必ず警察へ連絡しましょう。

警察への通報は道路交通法条の義務となっており、通報を怠ると罰則を受ける可能性もあるので注意が必要です。

警察への通報をおこなうことで、交通事故証明書の発行を受けられるようになります。交通事故証明書は、保険請求の手続などで必要となる書類です。

加害者との連絡先交換

事故現場で加害者と連絡先を交換することを忘れないようにしましょう。

現場では気付かなくても、あとになって自動車の損傷が見つかったり、身体の痛みが出てきたりする場合もあります。

加害者の連絡先がわからなければ、修理費用や治療費を自分で負担しなければならなくなる可能性もあります。

2.怪我の治療開始・過失割合の交渉

まずは病院へ

身体の痛みや不調がある場合には、すぐに病院や整形外科で受診しましょう。

交通事故の発生から時間が経ってから病院で受診しても、その怪我が交通事故によるものなのかが判断できず治療費の支払いを受けられない可能性があります。

交通事故にあったら、すぐに病院で受診するのが重要です。

保険会社への連絡

交通事故が発生したことを自分の保険会社に連絡するようにしましょう。また、加害者にも、加害者が加入する保険会社に連絡を入れてもらいます

保険会社に連絡を入れることで、今後の流れについて大まかな説明を受けることができます。

また、必要に応じて治療費の支払いを受けることができたり、交通事故の内容によっては、過失割合の交渉を開始したりすることになります。

まとめ

交通事故の全体像について前半部分を解説しました。

次回の記事で後半部分の解説をおこないますので、併せて参考にしていただければ幸いです。

以上

交通違反の争い方

交通事故を起こしてしまった場合、違反点数が課せられるほか、違反の内容によっては、行政罰や刑事罰を受ける可能性があります。

しかし、違反の事実がないのに、違反点数や、行政罰・刑事罰を受けることは納得できませんよね。

今回は、交通違反の争い方について説明致します。

違反点数の争い方

違反点数の争い方について見ていきます。

警察署に上申書を提出する

法律上、違反点数だけを争う手段はありません。

もっとも、ドライブレコーダーなどで違反の事実がないことが明らかである場合、取り締まりを行った警察署庁宛に、たとえば上申書という形で、違反がないことを伝えることができます。

これにより、任意に違反点数が取り消される可能性があります。

免許更新の際に争う

違反点数が付いた場合、次回の免許更新の際、いわゆるゴールド免許の取得ができません。

そこで、ゴールド免許を取得できなかった後に、ゴールド免許の取得を求めて、都道府県公安員会に対する審査請求又は裁判所に対する取消訴訟をすることができるとされています。

審査請求や取消訴訟の中で、違反の事実がなかったことを争うことができるのです。

免許停止・免許取り消しの争い方

免許停止・免許取り消しの争い方について見ていきます。

意見の聴取の機会に争う

90日以上の免許停止・免許取り消しの処分を行う場合には、意見の聴取といって、処分について意見を述べる機会が与えられます。

そこで、意見の聴取の機会に、違反の事実がないことを意見として述べ、免許停止・免許取り消しを争うことができます。

この意見聴取は、通常5分~10分程度の簡単なものですから、事前に、違反の事実がないことを分かりやすくまとめた書面を準備しておくことが大事です。

また、30日・60日の免許停止の場合には、意見の聴取がありませんが、処分を受ける前に、都道府県警の運転免許課に上申書を提出することにより、事実上、意見を述べることができます。

不服審査請求で争う

運転免許の停止・免許の取り消し処分に不服がある場合、都道府県公安委員会に対する不服審査請求ができるとされています。

この不服審査請求の中で、運転免許の停止・免許の取り消し処分を争うことができます。

裁判で争う

以上のように、免許停止・免許取り消しの処分に対しては、不服審査請求があります。

しかし、不服審査請求で判断が覆る例はほとんどありません。

これは、同じ行政処分庁(都道府県公安委員会)が判断するということも影響しているかもしれません。

そこで、免許停止・免許取り消し処分の取消訴訟という形で、裁判で争うことができます。

裁判では、裁判所という第三者が判断するため、公平性が期待することができます。

他方、不服審査請求の場合、結論が出るまでに数か月であるのに対し、裁判の場合には、判決が出るまで半年~1年以上の時間がかかる点には注意が必要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

交通違反に色々な争い方があることが分かっていただけたのではないでしょうか。

もっとも、効果的に争うためには、必要な証拠を集め、分かりやすい書面にするなど、準備が大変です。

ですので、納得いかない!と思われた場合、まずは、専門家にご相談されることをオススメ致します。

以上

交通事故で行政書士がサポートできること・できないこと

今回は、交通事故で行政書士がサポートできること、反対にできないことについてご説明致します。

この点はグレーゾーンなところもあり、微妙なテーマですので、あくまで私個人の見解という形でとらえていただければと思います。

行政書士がサポートできること

行政書士の仕事は、「権利義務に関する書類」「事実証明に関する書類」を作成することです。

たとえば、交通事故の加害者と被害者が交渉を行って、示談をした場合に、その示談内容を「示談書」として作成することは、「権利義務に関する書類」の作成として、当然、行政書士として行うことができます。

また、自賠責の被害者請求では、交通事故の事故状況を説明する図を作成することが必要ですが、被害者の方から事故状況を聞き取り、実際に事故現場を見に行くなどした上で、この図を作成することは、「事実証明に関する書類」の作成ですから、当然、行政書士ができます。

行政書士がサポートできないこと

他方、行政書士として絶対できないことは、被害者又は加害者の代理人になるこです。

代理人になるというのは、簡単にいえば、被害者・加害者の「代わり」になるということです。

なぜできないかというと、紛争当事者の代理人には弁護士しかなれない、という法律があるからです(これに違反することを「非弁行為」といいます。)。

たとえば、被害者から依頼を受けて、被害者の代わりに、加害者と示談交渉をすること、これは弁護士にしかできない代理行為ですから、行政書士が行うことはできません。

グレーゾーン

さて、ここからが微妙なところで、自賠責の保険金請求やそのための書類作成を行政書士がサポートできるか、という問題があります。

私見ではありますが、まず、自賠責の保険金請求を「代理して」行うことはできないと考えております。上述した非弁行為にあたると考えられるからです。

他方、単に、自賠請求のために必要な書類を集め、被害者の方の代わりに、被害者請求の書類を整えること(請求は被害者本人が行います)、これは「事実証明に関する書類の作成」ということで、行政書士が行っても問題ないと考えております。

微妙なのは、自賠責請求の必要書類の取得にあたって、自賠責請求のために必ずしも必要がない定型書式以外の書類を集めたり、そういった書類の取得についてアドバイスすることの是非です。

これもダメだという方ももちろんおりますが、私としては、基本的には、依頼する方の自己責任 だと考えております。

ダメだという意見の根拠としては、高度な専門的な知識を持つ弁護士が関与しなかったことにより、たとえば本来であれば後遺障害等級が認定されるべき事案について認定されなかったりする危険があるということだと思いますが、行政書士よりも弁護士の方が詳しいということが一般的にも妥当するかは疑問です。

確かに、中には性質の良くない行政書士さんもいるかもしれませんが、それはそういった行政書士さんを選択した方の自己責任ではないか、と思うのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

最後は少し冷たい表現になってしまったかもしれません。

交通事故において行政書士がサポートできることは多々あります。

ただ、グレーゾーンもあることは念頭に置いていただき、信頼できる方を選択されるのが良いように思います。

以上

弁護士の探し方

今回は、他業種にはなりますが、弁護士の探し方について、ご紹介しようと思います。

私の経験に基づくものになりますので、その点はご容赦いただければと思います。

ネットで探す

まず考えられるのは、ネットで探すということです。

ネットで探すメリットは、今や多くの法律事務所がホームページを持っていますから、法律事務所ごとの比較ができることです。

弁護士と依頼者さんのお付き合いも人と人とのお付き合いだと思いますから、自分に合いそうな弁護士さんを探すことができるという点も、ネットで探すメリットです。

友人・知人から紹介してもらう

次に考えられるのは、友人・知人からの紹介です。

ネットから探す場合、弁護士との信頼関係は1から構築することになります。

これに対して、友人・知人からの紹介の場合は、友人・知人と弁護士との間に一定の信頼関係があることが通常ですので、その分、最初からある程度、信頼をもって弁護士に相談・依頼できることが期待できます。

もっとも、友人・知人が知っている弁護士が、何の専門であるかは分かりません。

たとえば、友人・知人から、過去に会社紛争でお世話になった弁護士を紹介してもらうという場合には、期待に沿えない結果となることもあります。

もし差し支えなければ、紹介してもらえる弁護士が、どういう分野をよく取り扱っているかなど、紹介してもらう前に聞いてみても良いかもしれません。

保険会社から紹介してもらう

交通事故で、こちら側にも保険会社が付いている場合、保険会社から弁護士を紹介してもらうこともできます。

大抵の保険会社は、相談しやすい弁護士事務所を幾つか知っていることが通常です。

また、保険会社から相談を受ける弁護士事務所は交通事故を多数取り扱っていることが通常です。

したがって、交通事故事件に関しては、保険会社を通じて弁護士の紹介を受ける、というのも有益です。

法律相談センター・役所での相談

弁護士は、全国各地の、どこかの弁護士会に所属しています。

たとえば、大阪の弁護士であれば、通常、大阪弁護士会に所属しています。

そして、各弁護士会は、法律相談センターを設けて、広く市民の方からの法律相談を受けています。

地域によっては、交通事故に特化した法律相談の日を設けていることもあり、その法律相談には、交通事故に関して一定の経験がある弁護士が参加していることが期待できます。

また、各地の市役所・区役所でも、弁護士が法律相談を行っていることがあるので、市役所・区役所の窓口に行って尋ねてみるのも1つです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

以上のように、弁護士の探し方は色々ありますが、最終的には、自分自身にあった弁護士さんに依頼されるのが一番と思います。

弁護士さんをどうやって探したら良いのか迷っている方にとって、今回の記事が助けになれば幸いです。

以上

後遺障害申請は被害者請求・事前認定どちらを選ぶべき?(2)事前認定のメリット・デメリット

前回に引き続き、被害者請求・事前認定について、ご説明致します。

前回は被害者請求のメリット・デメリットについてご説明しましたので、今回は、事前認定のメリット・デメリットについてご説明致します。

事前認定のメリット・デメリット

メリット

事前認定のメリットは、被害者請求のデメリットの裏返しで、「楽」という点に尽きます。

自賠責保険金の請求には、必ず必要な資料がたくさんありますが、事前認定の場合、これらの資料の取得を全て加害者側の保険会社で行います。

もちろん、後遺障害診断書などは、被害者自身でお医者さんに依頼して書いてもらい、加害者側の保険会社に送付することが必要ですが、事前認定の場合、被害者側ですべきことは、この後遺障害診断書の取得くらいです。

そのため、被害者請求の準備をしている時間が取れないという場合や、そもそも後遺障害の認定がされればラッキーというケースでは、あえて手間暇をかけず、事前認定を選択するということもよくあります。

デメリット

事前認定のデメリットは、以上のように、後遺障害の申請が加害者側の保険会社任せになってしまう点です。

加害者側の保険会社としては、後遺障害が認定されようとされまいと、どちらでも良いので、一般的に考えると、後遺障害申請のために必要最低限の書類しか取得しないと考えられます。

そうすると、たとえば、診療記録を記載したカルテは、必要書類ではないので、治療経過が問題となるケースでも、カルテの提出がされないまま後遺障害の認定がされてしまう、ということも考えられます。

さらに、聞くところによると、加害者側が事前認定をする際には、「経過サマリ」のような治療経過等について記載した書類を一緒に送ることもあるようです。

ここに何が書かれているかは分かりませんが、被害者側に不利な事情が目立つように書かれている可能性も否定はできません

このように、被害者側にとって不利な資料が提出される可能性もあることは、事前認定のデメリットといえます。

まとめ

では結局、被害者請求・事前認定のどちらを選ぶべきなのでしょうか?

これはケースバイ・ケースとしかいえませんが、一般的にいえば、被害者請求をする時間的な余裕と余力がある場合には、被害者請求を選択するのが無難といえます。

他方、被害者請求をする余裕がない場合、後遺障害が認定される可能性が低い場合、そもそも損害賠償金に対するこだわりが強くない場合等については、事前認定を選択することも合理的です。

いずれにしましても、被害者請求・事前認定それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、選択することが大事かと思い、今回の記事がその助けになれば幸いです。

以上

後遺障害申請は被害者請求・事前認定どちらを選ぶべき?(1)被害者請求のメリット・デメリット

自賠責保険における後遺障害申請には、被害者請求と事前認定という2つの方法があります。

今回は、後遺障害申請にあたって、被害者請求と事前認定どちらを選ぶべきか、それぞれのメリット・デメリットなどについてご説明致します。

被害者請求と事前認定の違い

被害者請求とは、交通事故の被害者本人が、自賠責保険会社に直接、後遺障害の申請をし、保険金の請求をすることをいいます。

これに対して、事前認定とは、加害者側の保険会社が、自賠責(正確には損害賠償率算定機構)に対し、後遺障害等級の確認を行うことをいいます。

なぜ加害者側の保険会社が後遺障害等級の確認をするかというと、加害者側の保険会社は、被害者に対して損害賠償金を支払った後、自賠責保険会社から支払った保険金の全部または一部の回収作業を行います。

これを「自賠回収」と呼んだりしますが、たとえば、加害者側の保険会社が独自に被害者について後遺障害14級が認定されることを前提に損害賠償金の支払いを行っても、後で、自賠責保険会社が後遺障害を否定した場合には、後遺障害14級を前提とする自賠責保険金の支払がされず、大部分の「自賠回収」ができなくなってしまいます。

こうなると、加害者側の保険会社としては「損」になるため、被害者に対して損害賠償金の支払を行う前に、自賠責に対して後遺障害等級の確認を行うことが通常で、これを「事前認定」といいます。

被害者請求のメリット・デメリット

メリット

被害者請求のメリットは、自分自身で資料を集め、後遺障害の申請ができる点です。

自賠責保険金の請求にあたって、必ず必要な資料は決まっていますが、それ以外の資料の提出が禁止されているわけではありません

そのため、被害者請求をする場合には、必要資料の他、自分自身に有利な様々な資料(診療経過に関するカルテや、後遺障害診断書より詳細な医師の意見書等)も提出することができます

このように、自分自身にとって有利な様々な資料を提出することができ、後遺障害が認定される可能性を高められる点が、被害者請求の何よりのメリットです。

また、結果として、仮に非該当になったとしても、自分自身で提出した資料によって判断されたわけですから、納得感も得られます。

デメリット

これは、端的に「大変」ということです。

自賠責保険金の請求には、必要な書類が決められていると書きましたが、実は、これを集めるだけでも相当大変です。

ましてや、診療経過に関するカルテの取り寄せを行ったり、医師の意見書作成をお願いしたりといったことは、なかなか、日常生活をしながらできるものはありません。

こういう大変さが、被害者請求のデメリットとしてあります。

 

少し長くなってしまったので、事前認定のメリット・デメリットについては(2)でご紹介いたします。

以上

自賠責保険における異議申立てのポイント

自賠責保険に後遺障害の申請をしたものの、非該当であった場合、あるいは期待する後遺障害等級でなかった場合、異議申立てをして再度の判断を仰ぐことができます。

今回は、異議申立てのポイントについてご説明いたします。

認定理由を精査する

自賠責保険における後遺障害の認定結果については、必ず、どういう理由で後遺障害が認定されなかったのかを記載した理由書が添付されています。

たとえば、むち打ちで後遺障害非該当の結果を受ける場合には、大抵、「他覚所見が認められず、医学的に説明可能な後遺障害が残存しているとは認められない」といった理由が記載されています。

この理由書を読むことで、後遺障害認定のために何が足りないかを知ることができます理由書をよく読むことが、異議申立ての第一歩ともいえます。

たとえば、上記のような記載内容であれば、本当に他覚所見が認められないのかといった観点から、かかりつけ医に意見書を書いてもらう、といったことが考えられます。

専門家に相談する

自賠責における後遺障害認定においては、細かく、等級ごとの認定基準が定められています。

自分自身の症状が、どの後遺障害等級に相当する後遺障害で、後遺障害認定のためにどのような検査が必要かといった点は、後遺障害等級に詳しい専門家でなければ、見当すらつかないといったことは珍しくありません。

異議申立てにあたって、お医者さんの意見を聞くにしても、そのポイントがどこで、何を検査して欲しいのかが分からなければ、せっかくお医者さんに意見書を書いてもらったのに、あまり意味がなかった、ということにもなりかねません。

そのため、異議申立てをする前に、まずは一度、交通事故に詳しい専門家に相談することも有益です。

異議申立ては何度でもできる

異議申立てに回数制限はありません

そして、異議申立てをして結果が変わらない場合でも、たとえば異議申立てにあたって新しい資料を追加した場合には、その資料についての評価が記載された理由書が添付されることが通常です。

そのため、微妙なケースでは、異議申立てを繰り返し、その都度、判断理由を見返しながら、必要な資料を追加しつつ、最終的に等級認定がされるケースもあります。

もちろん、こういった微妙なケースについては、かかりつけ医や専門家のサポートを受けながら異議申立てを行うことが望ましいといえますが、いずれにせよ、簡単に諦めないことも大事です。

ただ、見込みのない異議申立ては、何度やっても結果は変わりませんから、そのあたりのバランスは考える必要があろうかと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。

後遺障害が認定されるかどうかは賠償額を左右しますから認定結果に納得ができない場合には、諦めずに異議申立てにチャレンジしてみてみることも一考かと思います。

以上