交通事故の全体像

 

~はじめに~

日頃、皆さんも車を運転する際、あるいは街中を歩いている際、何度か交通事故そのものや交通事故直後の状況を目撃したことはあるのではないでしょうか?また、ニュースなどではたびたび悲惨な交通事故が報道されていますから、交通事故は私のたちの日常生活に切っても切れない出来事の一つです。

誰しも交通事故を起こそうと思って起こしている人はいません。

しかし、交通事故はちょっとした不注意によって起きてしまい、ときには取り返しのつかない不幸な結果にまで発展してしまう危険も孕んでいます。

それゆえ、誰が、いつ、どこで交通事故の当事者、つまり交通事故の加害者、あるは被害者になるか分かりません

もっとも、交通事故の加害者、あるいは被害者になることは、多くの方にとって一生に一度経験するかしないかのことでしょう。

したがって、いざ交通事故の当事者となるとその取扱いに慣れていないがゆえに途方もない不安にかられます。

交通事故の規模、交通死亡事故、被害者の負った怪我の程度が大きくなればなるほど不安は増すばかりでしょう。

私は、交通事故という一生に一度あるかないかの出来事に不幸にも遭遇した方にとって、少しでも正確かつ有益な情報をご提供できればと思いこのブログを立ち上げました

さっそくですが、以下では交通事故全体の大まかな流れをご紹介します。

まずはざっくりと交通事故の流れをつかんでいただければ幸いです。

~交通事故から示談までの流れ~

交通事故から示談までの一般的な流れは以下のとおりです。

⑴交通事故発生

⑵病院を受診・治療を受ける

⑶症状固定

⑷後遺障害等級認定

⑸示談

⑴交通事故発生

①警察に110番通報する

道路の危険を除去(可能であれば、車を安全な位置に移動)した上で、警察に110番通報します。

加害者が連絡を渋った場合は被害者が通報しましょう(事故報告は義務です)。

事故報告しないと警察から「交通事故証明書」を発行してもらえず加害者の保険会社に賠償金を請求することができなくなります。

②加害者の個人情報を把握する

加害者(運転者)の「氏名」、「生年月日」、「住所」、「連絡先」、「会社名」などを把握しましょう。

「氏名」、「生年月日」、「住所」は免許証で確認すると確実です。

「連絡先」は無理に把握する必要はありません。

「会社名」は名刺などで確認するとよいでしょう。

加害車両が営業車の場合は加害者の使用車にも責任が発生する場合がありますから把握しておくと便利です。

③交通事故状況の把握

できれば交通事故直後(①で道路の危険を除去する前)の車の衝突状況をスマートフォンなどで撮影しておくと、あとで加害者の保険会社に賠償金を請求する際に必要となる「交通事故発生状況報告書」の作成の際に役に立ちます。

また、警察に公平な「実況見分調書」を作成してもらうためには警察の実況見分には必ず立ち会いましょう。

④加害者の保険会社の把握

強制保険である自賠責保険会社、任意保険である任意保険会社を把握しましょう。

自賠保険会社については車検証と一緒に保管されている自賠責保険証書によって確認することが可能です。

加害者が任意保険に加入していない場合などは自賠責保険会社に被害者請求する必要がある場合があります。

⑤自身の任意保険会社にも連絡

また、事故報告は警察のみならずご自身が加入されている任意保険会社に対しても行います。

保険に搭乗者傷害特約、人身傷害補償特約、無保険車傷害特約、弁護士費用特約を付けている場合はこれらの特約を使える可能性があります。

また、ご自身ではなくご家族が交通事故に遭った場合も連絡しましょう。

これらの特約が使える場合があります。

⑵病院を受診・治療を受ける、継続する

交通事故に遭ったら速やかに病院を受診し治療を受けましょう。

・たいしたことはないと思って病院を受診しない

・自己判断で病院を受診しない

などという行為はNG行為です。

また、

・今は痛みがないから大丈夫

などと思って病院を受診しない方がおられます。

しかし、交通事故の怪我で多いむち打ちの場合、交通事故時には痛みが発生せず、交通事故から数日経って痛みが発生するということがよくあります。

その場合、交通事故から病院受診までの期間が空けば空くほど「他の原因で痛みが出たのではないか?」「痛みの主原因は交通事故ではなく、他の原因にあるのではないか?」などと交通事故と怪我の因果関係を疑われ、受け取れるはずの賠償金も受け取れない、という結果にもつながりかねません。

交通事故時に痛みが出ていなくても、その後に痛みが発症することはよくあることです。

したがって、面倒とは感じても必ず病院を受診するようにしましょう。

また、一度病院を受診した以上、医師の指示に従い、医師が治療の継続は必要でないと判断するまでは通院するようにしましょう。

なお、のちほどご説明する後遺障害等級の認定を受けるためには、症状固定までにどんな治療を受けたのか(治療内容)ということなども非常に大切になってきます。

どんな点に気を付けるべきか不安な方ははやめに専門家に相談しておきましょう。

⑶症状固定

症状固定とは、交通事故時の怪我からある程度症状は改善したものの、いまだ痛み(後遺症)が残存しており、かつその症状が将来完全に改善する見込みがない状態、のことをいいます。

医学用語ではありませんが、治療を継続していると医師から「これ以上の(リハビリも含めた)治療は止めましょう。」と言われることがあります。

症状固定かどうかは医師が判断することですから、受診時に日頃の症状や怪我による悩みを医師に伝え、医師の指示に従って治療を継続しておくことが必要です。

なお、治療継続中に保険会社から「そろそろ症状固定としませんか?」などと言われることがあります。

これは治療費支払いの打ち切り、のことを意味していますが、その圧力に押されて症状固定とする必要はありませんし、治療を諦める必要もありません。

治療継続が必要な場合は、健康保険を使う、自賠責保険に被害者請求するなどの方法を検討しましょう。

⑷後遺障害等級認定

後遺症が残った場合は後遺障害等級の認定を受ける必要があります(後遺症の中でも認定を受けた後遺症を後遺障害といいます)。

後遺障害等級の認定を受けることができれば、等級に応じた「後遺障害による逸失利益」、「後遺障害慰謝料」の賠償員を獲得することができます。

認定を受けるには必要書類をそろえて加害者の自賠責保険会社に提出する必要があります。

そして自賠責保険会社から書類の送付を受けた自動車損害調査事務所が、原則として書類を基に調査を行います。

その後、調査結果を自賠責保険会社に通知し、通知結果に基づき自賠責保険会社が等級を認定するか、認定するとしていかなる等級とするかを決めます。

結果に不服がある場合は

異議申し立て(後遺障害等級認定の再申請)をすることができます。

異議申し立ての回数に制限はありません(何度でも申し立て可能です)。

⑸示談

後遺障害等級の認定が必要ない場合は症状固定後、後遺障害等級の認定を申請した場合はその結果が確定した後、示談成立に向けた詰めの話し合いが進められます。

示談交渉で条件がまとまらず示談が成立しなかった場合は、紛争案件を示談(和解)のあっ旋(実際に示談を締結してくれるわけではありません)などを行う交通事故紛争処理センター、裁判所の場に移して最終解決を目指すことになります。

 

以上