交通事故で示談不成立となった場合の紛争解決機関

 

今回は交通事故で示談不成立となった場合の紛争解決機関をご紹介します。

~そもそも示談とは~

示談とは交通事故の加害者側と被害者側が、被害者にどんな損害が生じたのか、その損害についてどれだけの賠償金が発生するのか、発生した賠償金をどのような方法で支払うのかなどの示談の条件について、話し合いによって決めて終局的に解決することをいいます。示談が成立すると、被害者側は加害者側に示談交渉で決めた方法に従って賠償金の支払い求めることができますし、反対に加害者側には賠償金を支払う義務が生じます。また、その他示談交渉で決めた事項(約束事)についてはお互い遵守しなければなりません。また、示談交渉は基本的にはやり直すことができません。

交通事故発生から示談までの大まかな流れは以下のとおりです(怪我の場合)。

1、交通事故発生

2、治療(入院・通院)

3、症状固定

↓※後遺症がない方は5へ

4、後遺障害等級認定

5、示談交渉

6、示談成立OR示談不成立

示談不成立でもっとも多いのが

被害者が加害者側から提示された示談金額に納得がいかない

というケースです。なお、交通事故の示談金は自賠責基準、任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の支払い基準があり、自賠責基準よりも任意保険基準、任意保険基準よりも裁判所(弁護士)基準の方が示談金は高くなります。示談交渉で弁護士が間に入らなければ、任意保険基準により示談金額が決まりますから、被害者が示談金額に不満を持つことが多いのです。

また、示談金額を決める際のベースとなる

過失割合に加害者側、被害者側とも納得がいかない

というケースもよくあります。過失割合の過失とは「不注意=落ち度」のことをいいます。この不注意の程度を最大10の割合を、加害者と被害者に割り振ったものが過失割合です(例えば、加害者6対被害者4、などという風に表現されます)。加害者側からすると過失割合が大きければ大きいほど(被害者の過失割合が小さければ小さいほど)示談金は大きくなり、被害者側からすると過失割合が小さければ小さいほど(加害者の過失割合が大きければ大きいほど)示談金は大きくなります。交通事故では、被害者者が停止中に後方から追突されたなどいうように、明らかに被害者に過失が認められない場合を除き、被害者にも何らかの過失が認められることが通常です。しかし、上記のとおり、過失割合は示談金額に大きな影響を与えますから、過失割合(事故態様、事故状況など)について当事者間で折り合いがつかず示談不成立の原因となるのです。

その他、被害者が保険会社の対応に納得がいかない、ということでも示談不成立となることがあります。

以下では、示談不成立となった場合の解決方法についてご紹介します。

~示談不成立の場合の紛争解決機関~

示談不成立となった場合は、当事者以外の第三者(紛争解決機関)の力を頼る必要があります。交通事故の紛争解決機関には①交通事故紛争処理センター、②日弁連交通事故相談センター、③裁判所の3つがあります。

=①交通事故紛争処理センター=

交通事故紛争処理センターは、交通事故の加害者と被害者が示談をめぐる紛争を解決するため、センターから委託を受けた弁護士が当事者の間に立って法律相談、和解のあっ旋を行ったり、あっ旋が不調に終わった場合は3人の専門家からなる審査員による審査手続を開き示談を促すという機関です。

弁護士をご自身で選任する必要はありませんし、センターに出向くまでの交通費などは別として、弁護士、センターを利用するにあたっての費用は一切かかりません。また、交通事故に慣れた弁護士、専門家に判断を委ねることができ、手続きは迅速に進み、公平・中立な妥当な結論(示談内容)を得ることができる点が最大のメリットです。なお、加害者の保険会社は審査手続で出された結論を尊重しなければなりませんが、被害者はこれに従う必要はなく、従わなかった場合は③裁判所へ舞台を移すことになります。

=②日弁連交通事故相談センター=

日弁連交通事故センターも、交通事故に関する電話相談、面談相談(30分×原則5回まで)、示談あっ旋・審査を業務とする機関です。しかも、センターに出向く際の交通費を除き費用はかかりません。しかも、交通事故処理センターは損害額がある程度確定した段階でしか相談できないのに対して、日弁連交通事故相談センターでは損害額が確定する前の交通事故発生直後から相談することができるのが特徴です。

もっとも、示談あっ旋が不調に終わった場合に審査手続を行ってくれるのは、相手方が日弁連交通事故相談センターと提携している共済保険会社の場合のみに限られます。つまり、共済でない保険会社が示談に応じない場合は手続き終了となり、舞台は③裁判所へと移行することになります。

=③裁判所=

裁判所は①、②でも解決が図られなかった場合の最終解決の場です。ただ、すべての交通事故紛争について判決が言い渡されるわけではなく、裁判の過程で裁判所あら和解案が示され、それに当事者が合意すれば判決を待つまでもなく終了ということになります。

以上