交通事故に遭うことは人の人生にとって一度あるかないかの出来事でしょう。したがって、交通事故が発生すると加害者もちろん被害者も「どうしていいのか分からない」という方が大半だと思われます。そこで、この記事では、交通事故に遭った場合に被害者として何をすべきなのか、という点について詳しく解説していきたいと思います。
1.交通事故の初期対応の流れ
交通事故の初期対応の流れは以下のとおりです。
なお、交通事故状況、怪我の状況によっては怪我の治療を最優先とすべき場合もあります。以下はあくまで対応可能な被害者あるいはその同乗者が取るべき対応とお考えください。
①運転の停止・負傷者の救護措置、警察への事故報告・届出
↓
②加害者、加害車両等の確認
↓
③事故状況の調査・証拠保全
↓
④保険会社への事故報告
2.運転の停止・負傷者の救護措置、警察への事故報告・届出(①)
⑴ 運転の停止、負傷者の救護措置
交通事故に遭ったかなと思ったら車の運転者は直ちに車の運転を停止しなければなりません。そもそも交通事故直後はどちらが加害者なのか被害者なのか判然としない場合もあります。また、被害者であることが明らかな場合でも、事故状況によっては加害者の方が怪我の程度が大きく救護が必要という場合も稀にあります。道路交通法ではこうした場合も想定して、車の運転者(加害者、被害者問わず)に停止義務を課しているのです。
さらに、停止義務はその後の救護を可能とするためのものです。道路交通法は加害者、被害者及びそれぞれの同乗者に負傷者を救護する義務を課しています。この義務を怠ると罰則(最大10年以下の懲役または100万円以下の罰金(運転者の場合))や免許取消しの行政処分を科される場合があります。なお、具体的な救護措置としては
・救急車の要請(119番通報)
・病院への搬送
などが考えられます。要はそのときの交通事故状況に応じた最善の方法を尽くすことが大切です。
⑵ 警察への事故報告・届出
また、警察への事故報告も加害者、被害者の義務です。通常、加害者がすべきものと思われがちですが、責任逃れから警察への報告を渋る加害者もいます。その場合は被害者が警察へ報告すべき義務があります。この義務を怠ると罰則(3月以下の懲役または5万円以下の罰金)を科される場合もあります。また、警察へ届出しないと「交通事故証明書」の発行を請求することができません。交通事故証明書は
・加害者の保険会社に賠償金を請求する場合
・ご自身の保険会社に保険金を請求する場合
・加害者の自賠責保険会社に被害者請求(※)する場合
・労災保険金の支払いを請求する場合
などに必要とされます。
警察に届出をしないとこうした請求をすることができません。
※被害者請求※
被害者請求とは、被害者が、加害者が加入している自賠責保険会社に対して保険金の支払いを求める請求です。なお、次の場合では被害者請求する必要性が高いといえます。
・仮渡金請求したい場合
→被害者請求には仮渡金請求と本請求の2つがあります。仮渡金は被害者の当面の治療費、生活費を工面する一時金です。交通事故の状況等をめぐって加害者側と争っており、治療費を支払ってくれない、交渉が長期化しそうなどという場合は仮渡金請求する必要性が高いでしょう。
・加害者が任意保険に加入していない場合
→加害者が無資力(だからこそ任意保険に加入していない)で被害者に賠償できない可能性があるためです。
3.加害者、加害車両等の確認(②)
交通事故によって負傷したり、物を壊された場合は、被害者は加害者に対して損害賠償することになります。そのためには、加害者が誰なのかわからなければなりません。そのため加害者(運転者)の「氏名」、「住所」、「会社名」などを運転免許証等で確認しておきましょう。また、前記の被害者請求などのため、加害者の自賠責保険会社、任意保険会社も把握しましょう。自賠責保険会社は車の運転時に備え付けておかなければならない自動車検査証、自動車損害賠償責任保険証明書で確認することができます。
4.事故状況の調査・証拠保全(③)
可能であればスマートフォン等で車の損壊状況、衝突位置等を撮影しておきます。また、必要があって車を移動させなければならないとき以外は、警察官の実況見分が終わるまで車は移動させないほうがよいです。交通事故現場の状況は交通事故直後の状況を残しておくのがベターです。
5.保険会社への事故報告(④)
交通事故の報告は警察のみならずご自身が加入されている任意保険会社に対しても行います。保険に搭乗者傷害特約、人身傷害補償特約、無保険車傷害特約、弁護士費用特約を付けている場合はこれらの特約を使える可能性があるからです。ご自身ではなくご家族が交通事故に遭った場合にも連絡する必要があります。同様に上記の特約を使える場合があります。
以上