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後遺障害申請は被害者請求・事前認定どちらを選ぶべき?(2)事前認定のメリット・デメリット

前回に引き続き、被害者請求・事前認定について、ご説明致します。

前回は被害者請求のメリット・デメリットについてご説明しましたので、今回は、事前認定のメリット・デメリットについてご説明致します。

事前認定のメリット・デメリット

メリット

事前認定のメリットは、被害者請求のデメリットの裏返しで、「楽」という点に尽きます。

自賠責保険金の請求には、必ず必要な資料がたくさんありますが、事前認定の場合、これらの資料の取得を全て加害者側の保険会社で行います。

もちろん、後遺障害診断書などは、被害者自身でお医者さんに依頼して書いてもらい、加害者側の保険会社に送付することが必要ですが、事前認定の場合、被害者側ですべきことは、この後遺障害診断書の取得くらいです。

そのため、被害者請求の準備をしている時間が取れないという場合や、そもそも後遺障害の認定がされればラッキーというケースでは、あえて手間暇をかけず、事前認定を選択するということもよくあります。

デメリット

事前認定のデメリットは、以上のように、後遺障害の申請が加害者側の保険会社任せになってしまう点です。

加害者側の保険会社としては、後遺障害が認定されようとされまいと、どちらでも良いので、一般的に考えると、後遺障害申請のために必要最低限の書類しか取得しないと考えられます。

そうすると、たとえば、診療記録を記載したカルテは、必要書類ではないので、治療経過が問題となるケースでも、カルテの提出がされないまま後遺障害の認定がされてしまう、ということも考えられます。

さらに、聞くところによると、加害者側が事前認定をする際には、「経過サマリ」のような治療経過等について記載した書類を一緒に送ることもあるようです。

ここに何が書かれているかは分かりませんが、被害者側に不利な事情が目立つように書かれている可能性も否定はできません

このように、被害者側にとって不利な資料が提出される可能性もあることは、事前認定のデメリットといえます。

まとめ

では結局、被害者請求・事前認定のどちらを選ぶべきなのでしょうか?

これはケースバイ・ケースとしかいえませんが、一般的にいえば、被害者請求をする時間的な余裕と余力がある場合には、被害者請求を選択するのが無難といえます。

他方、被害者請求をする余裕がない場合、後遺障害が認定される可能性が低い場合、そもそも損害賠償金に対するこだわりが強くない場合等については、事前認定を選択することも合理的です。

いずれにしましても、被害者請求・事前認定それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、選択することが大事かと思い、今回の記事がその助けになれば幸いです。

以上

後遺障害申請は被害者請求・事前認定どちらを選ぶべき?(1)被害者請求のメリット・デメリット

自賠責保険における後遺障害申請には、被害者請求と事前認定という2つの方法があります。

今回は、後遺障害申請にあたって、被害者請求と事前認定どちらを選ぶべきか、それぞれのメリット・デメリットなどについてご説明致します。

被害者請求と事前認定の違い

被害者請求とは、交通事故の被害者本人が、自賠責保険会社に直接、後遺障害の申請をし、保険金の請求をすることをいいます。

これに対して、事前認定とは、加害者側の保険会社が、自賠責(正確には損害賠償率算定機構)に対し、後遺障害等級の確認を行うことをいいます。

なぜ加害者側の保険会社が後遺障害等級の確認をするかというと、加害者側の保険会社は、被害者に対して損害賠償金を支払った後、自賠責保険会社から支払った保険金の全部または一部の回収作業を行います。

これを「自賠回収」と呼んだりしますが、たとえば、加害者側の保険会社が独自に被害者について後遺障害14級が認定されることを前提に損害賠償金の支払いを行っても、後で、自賠責保険会社が後遺障害を否定した場合には、後遺障害14級を前提とする自賠責保険金の支払がされず、大部分の「自賠回収」ができなくなってしまいます。

こうなると、加害者側の保険会社としては「損」になるため、被害者に対して損害賠償金の支払を行う前に、自賠責に対して後遺障害等級の確認を行うことが通常で、これを「事前認定」といいます。

被害者請求のメリット・デメリット

メリット

被害者請求のメリットは、自分自身で資料を集め、後遺障害の申請ができる点です。

自賠責保険金の請求にあたって、必ず必要な資料は決まっていますが、それ以外の資料の提出が禁止されているわけではありません

そのため、被害者請求をする場合には、必要資料の他、自分自身に有利な様々な資料(診療経過に関するカルテや、後遺障害診断書より詳細な医師の意見書等)も提出することができます

このように、自分自身にとって有利な様々な資料を提出することができ、後遺障害が認定される可能性を高められる点が、被害者請求の何よりのメリットです。

また、結果として、仮に非該当になったとしても、自分自身で提出した資料によって判断されたわけですから、納得感も得られます。

デメリット

これは、端的に「大変」ということです。

自賠責保険金の請求には、必要な書類が決められていると書きましたが、実は、これを集めるだけでも相当大変です。

ましてや、診療経過に関するカルテの取り寄せを行ったり、医師の意見書作成をお願いしたりといったことは、なかなか、日常生活をしながらできるものはありません。

こういう大変さが、被害者請求のデメリットとしてあります。

 

少し長くなってしまったので、事前認定のメリット・デメリットについては(2)でご紹介いたします。

以上

自賠責保険における異議申立てのポイント

自賠責保険に後遺障害の申請をしたものの、非該当であった場合、あるいは期待する後遺障害等級でなかった場合、異議申立てをして再度の判断を仰ぐことができます。

今回は、異議申立てのポイントについてご説明いたします。

認定理由を精査する

自賠責保険における後遺障害の認定結果については、必ず、どういう理由で後遺障害が認定されなかったのかを記載した理由書が添付されています。

たとえば、むち打ちで後遺障害非該当の結果を受ける場合には、大抵、「他覚所見が認められず、医学的に説明可能な後遺障害が残存しているとは認められない」といった理由が記載されています。

この理由書を読むことで、後遺障害認定のために何が足りないかを知ることができます理由書をよく読むことが、異議申立ての第一歩ともいえます。

たとえば、上記のような記載内容であれば、本当に他覚所見が認められないのかといった観点から、かかりつけ医に意見書を書いてもらう、といったことが考えられます。

専門家に相談する

自賠責における後遺障害認定においては、細かく、等級ごとの認定基準が定められています。

自分自身の症状が、どの後遺障害等級に相当する後遺障害で、後遺障害認定のためにどのような検査が必要かといった点は、後遺障害等級に詳しい専門家でなければ、見当すらつかないといったことは珍しくありません。

異議申立てにあたって、お医者さんの意見を聞くにしても、そのポイントがどこで、何を検査して欲しいのかが分からなければ、せっかくお医者さんに意見書を書いてもらったのに、あまり意味がなかった、ということにもなりかねません。

そのため、異議申立てをする前に、まずは一度、交通事故に詳しい専門家に相談することも有益です。

異議申立ては何度でもできる

異議申立てに回数制限はありません

そして、異議申立てをして結果が変わらない場合でも、たとえば異議申立てにあたって新しい資料を追加した場合には、その資料についての評価が記載された理由書が添付されることが通常です。

そのため、微妙なケースでは、異議申立てを繰り返し、その都度、判断理由を見返しながら、必要な資料を追加しつつ、最終的に等級認定がされるケースもあります。

もちろん、こういった微妙なケースについては、かかりつけ医や専門家のサポートを受けながら異議申立てを行うことが望ましいといえますが、いずれにせよ、簡単に諦めないことも大事です。

ただ、見込みのない異議申立ては、何度やっても結果は変わりませんから、そのあたりのバランスは考える必要があろうかと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。

後遺障害が認定されるかどうかは賠償額を左右しますから認定結果に納得ができない場合には、諦めずに異議申立てにチャレンジしてみてみることも一考かと思います。

以上

むち打ちで後遺障害を獲得するためのポイント

今回は、特によく見かける、むち打ちで、後遺障害を獲得するためのポイントについてご紹介いたします。

後遺障害等級を獲得するメリット

後遺障害等級を獲得するメリットは、何より慰謝料が増額するという点にあります。

たとえば、同じむち打ちのケースでも、後遺障害の14級が付けば、それだけで自賠責から75万円という金額が上乗せされます。

後遺障害等級が認定されない、いわゆる非該当のケースと比較すると、後遺障害14級が認定されるかされないかだけで、最終的な受取金額に100万円近くの差が出る場合もあります。

そういう意味で、後遺障害等級は、獲得できる見込みがあるのであれば、是非とも、獲得を目指すべきといえます。

後遺障害を獲得するためのポイント

事故後、早い段階でレントゲン、MRIを撮影してもらう

後遺障害の認定にあたっては、画像所見が一番重視されます。

簡単にいうと、レントゲンやMRIで神経症状の根拠となるような画像が認められれば、後遺障害が認定されやすいですし、認められなければ認定されにくい、というのが一般論です。

そして、レントゲンやMRIを撮影する時期は事故直後が望ましいです。

なぜなら、事故から時間が経過してしまうと、仮にレントゲンやMRIで神経症状の根拠となるような画像が認められたとしても、それが事故によってそうなったのか、自然経過としてそうなったのかが分かりにくくなってしまうからです。

また、レントゲンは骨しか映らないので、特にむち打ちなどの神経症状の場合には、MRIも撮影してもらっておいた方が良いです。

MRIの費用は1万円など高額ですから、相手方の保険会社が治療費等の負担をしている間に撮影しておくことが勧められます。

頑張って定期的に通院する

また、定期的な通院も大事です。

たとえば、通院に1か月くらいの期間が空いてしまうと、「本当に後遺障害が残るような怪我なのか」という疑いが出るからか、後遺障害が認定されにくいです。

逆に、定期的に通院を継続しているケースでは、画像所見がなかったとしても、「通院経過に照らせば」というような形で、後遺障害14級が認定されるケースが散見されます。

そういった意味で、頑張って定期的に通院することが大事です。

なるべく詳しく後遺障害診断書を書いてもらう

自賠責保険では、後遺障害申請をする際、定型の後遺障害診断書をお医者さんに書いてもらい、提出することが必要です。

後遺障害の認定にあたっては、この後遺障害診断書が極めて重要ですから、お医者様には、なるべく詳しく後遺障害診断書を書いてもらうことがオススメです。

後遺障害診断書には、他覚所見(画像や検査の結果から分かる見解)と、自覚症状(患者様の主観的な訴え)を記載する欄がありますが、特に他覚所見が重要です。

お医者様には頼みにくいかもしれませんが、「できる限り詳しくお願いします!」と頼んでみましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

冒頭でご説明しましたとおり、後遺障害が認定されるかどうかは最終的な賠償額に大きく影響します。

皆様の助けになれば幸いです。

以上

交通事故の治療費と被害者請求について

交通事故に遭い怪我をした場合、怪我の治療費はどのように支払われるのでしょうか?この点、いまいち「イメージがつかない」、なんとなく「加害者の保険会社が支払ってくれるんじゃないの?」とお考えの方が多いのではないでしょうか?今回は、この交通事故と治療費、そして、被害者が行うべき「被害者請求」について解説してまいります。

交通事故の治療費について

被害者は、原則として、交通事故直後から怪我の完治あるいは症状固定(治療を継続しても怪我の症状がこれ以上改善する見込みがないと医師により診断された状態)までに治療のためにかかった費用(実費)を請求できます(例外的に、症状固定後に治療に要した費用を請求できる場合もあります)。

被害者が請求するといっても、加害者が任意保険に加入している場合は、基本的に保険会社が病院へ治療費を支払います(一括対応します)から、被害者から加害者へ直接請求する手続きは不要です。

被害者請求した方がよい場合

もっとも、そもそも加害者が任意保険に加入していない場合もありますし、加入していたとしても保険会社から病院へ治療費が支払われない場合もあります。そのため、そうした場合などは被害者自ら加害者の自賠責保険へ治療費の支払いを請求した方がよい場合があります。この手続きを「被害者請求」といいます。被害者請求した方がよいのは以下の場合です。

加害者が任意保険に加入していない場合

冒頭でも触れましたが、加害者が任意保険に加入していない場合です。

加害者が任意保険に加入していない場合、(任意保険会社から)病院へ治療費は支払われません。つまり、いったん、被害者ご自身で治療費を負担しなければならないのです。また、加害者は自身に資力がないため、任意保険に加入していないということも考えられます。そうすると、後日、加害者に対して治療費を請求しても、加害者から支払いを受けることができず損してしまう可能性があります。そのため、面倒ではありますが、損をしないよう被害者自身が加害者の自賠責保険会社へ直接請求するというわけです。

加害者の任意保険会社が病院へ治療費を支払ってくれない場合

加害者の任意保険会社が病院へ治療費を支払ってくれない場合とは、たとえば、過失割合を巡って争われている場合(被害者、加害者とも交通事故の状況に納得がいかない場合)、保険会社が交通事故と被害者の怪我との因果関係を疑っている場合です。こうした場合は、保険会社が病院へ治療費を支払う義務があるのか、あるとしていくら払えばよいのか確定的ではないため、保険会社は病院へ治療費を支払わないのです。

示談交渉が長期化しそうな場合

特に、過失割合を巡って争われている場合(被害者、加害者とも交通事故の状況に納得がいかない場合)、保険会社が交通事故と被害者の怪我との因果関係を疑っている場合などは示談交渉が長期化します。こうした場合は、被害者、加害者とも交通事故の状況、交通事故と怪我との因果関係に関して調査をする必要があるところ、その調査に一定程度の時間を要するからです。示談交渉が長期化すると、示談が成立するまで治療費を被害者自身で負担しなければならない場合も出てきます。少しでも治療費の負担を軽くしたい、生活費の足しにしたいなどとう方は被害者請求を検討すべきといえます。

まとめ

交通事故の治療費を請求するには、被害者請求しなければ損をしてしまう場合もあります。もっとも、被害者請求するには様々な書類を集め、必要な事項を記載して自賠責保険会社へ提出しなければなりません。被害者がお怪我の治療を続けながらこうした手続きを行うことは負担となることもあります。お困りの場合は交通事故の専門家へご相談ください。

 

以上