ここまで慰謝料の計算方法や相場について解説しきました。
今回は交通事故の慰謝料を増額させる方法をご紹介します。
交通事故の慰謝料を増額させる方法
被害者の損害が補填されるか否かは、損害賠償がどれだけ認められるかにかかっています。
したがって、被害者の方はどうすれば慰謝料額がより多く認められるかということを考えなければなりません。
それでは、ここからはできるだけ慰謝料を増額させる方法について説明していきます。
症状固定後は後遺障害慰謝料も請求する
担当の医師によって症状が固定されたと判断された際、後遺障害が残ってしまった場合には後遺障害等級認定を受けることによって、さらに慰謝料を請求することができます。
後遺障害等級の認定は、医師が行うのではありません。
認定は「損害保険料率算出機構」という組織が専門的に実施しています。
等級認定については加害者の加入する自賠責保険会社が窓口となっていますが、実際に調査や判断を行うのは損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所という機関です。
では、後遺障害認定を受けるにはどのような手続が必要なのでしょうか。
認定手続は原則として面談等は実施されず、書面のみによって判断されます。
認定を申請するには、以下の2つの方法があります。
1つは、加害者側の保険会社が後遺障害等級の認定の申請手続を行う「事前認定」です。
もう1つは、被害者が直接加害者の加入する自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定の申請をする「被害者請求」です。
これら2つの方法のうち、適切な後遺障害等級認定を得るためには、被害者請求による申請手続をとるべきです。
なぜなら、事前認定の場合には、申請書類の作成や資料の収集から提出まで全て任意保険会社が行ってくれるという反面、被害者にとって有利な資料を積極的に収集して提出してくれるというわけではないため、適切な後遺障害等級認定を受けられないリスクが内在しています。
一方、被害者請求の場合はカルテや医師の意見書や陳述書等、被害者に有利な資料を提出したり、逆に自分に不利な資料を修正したり、積極的には提出しないということも可能です。
したがって、適切な後遺障害慰謝料を得るためには、被害者請求による申請手続で行うべきです。
弁護士基準で算定できるようにする
入通院慰謝料の算定基準のところで解説しましたが、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つの基準の中で、弁護士基準が最も相場の高い基準になります。
過去の裁判となった事例を参考に算定された基準になりますから、自賠責保険基準の最低限の金額ではなく、また保険会社が定めた額でもない弁護士基準で算定されることが、より多くの慰謝料を請求するためには重要です。
したがって、被害者の方が受け取れる慰謝料を増額するためには、弁護士基準が適用されるようにするべきでしょう。
弁護士基準が適用されるようにするためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、裁判手続きに発展した場合に弁護士基準が適用されることは当然ですが、その他の効果で賠償額の増額が見込める可能性が高まります。
加害者の任意保険会社は示談交渉の話合いになった際、示談金の提示を記載した書面を送付してくることが通常です。
そのよう場合、任意保険会社は自社の基準である、任意保険基準に基づいて慰謝料を計算して金額の提示をしてくることがほとんどです。
しかし、賠償金の算出においては、前述のとおり任意保険基準のほかに自賠責基準と弁護士基準があります。
そこで、任意保険会社が私人である被害者本人に示談案を提示する場合には、最低限の補償額である自賠責保険基準や弁護士基準よりも低額な任意保険基準で提示してくることが通常です。
そこで、弁護士基準を知らずに低い基準で示談してしまう被害者の方が多いのが現実です。
弁護士に依頼すれば、任意保険会社の担当者との交渉も弁護士基準で進めることができる可能性もあります。
なぜなら、保険会社の担当者としては私人である被害者本人と和解交渉している段階では、弁護士基準を被害者が提示してきたとしてもただ拒否していればいいだけですが、弁護士が被害者の代理人となって介入してきた場合にはそうはいきません。
相手方の請求をただ拒否していただけでは、次のステージとして訴訟等の裁判手続に移行して、最も高額な弁護士基準での損害賠償請求が認められる可能性があります。
そこで任意保険会社の担当者としても、なるべく弁護士基準で算定した慰謝料の金額に近い額で早期に和解をして終わらせることに一定のモチベーションが生じてきます。
つまり、弁護士に依頼することで、裁判手続もしくは裁判手続以外での任意の交渉段階において、弁護士基準または弁護士基準に準じた相場での賠償金が認められやすくなるということです。
以上から、慰謝料額を増額するためには弁護士に依頼することをおすすめします。
入通院慰謝料以外の賠償金を請求し損なわないこと
損害賠償額を最大化するためには、入通院慰謝料以外に請求することができる賠償金についても、請求することを忘れないということは重要です。
入通院慰謝料以外に請求することができる項目としては、以下のものがあげられます。
- 修理費用
- 評価損
- 経済的全損
- 代車の費用
修理費用
修理費用とは、交通事故に遭って被害者の方が運転していた自動車が破損・故障し、修理することで再度使用できる見込みがある場合に必要になる修理費用のことをさします。
被害者は、加害者側に被害者の自動車の修理費用を請求することができます。
評価損
評価損とは、交通事故によって被害者が運転していた自動車が破損・故障し、修理することで再び使用することができる見込みがある場合であっても、交通事故によって自動車自体の価値が滅失または減少してしまうことです。
この滅失・現象した自動車の価値を損害として賠償請求することも可能です。
経済的全損
経済的全損とは、交通事故によって被害者の使用していた自動車が破損・故障していまい、仮に修理できたとしても、その修理費用が交通事故当時の自動車の時価額を上回ってしまう場合、これを「全損」と評価することです。
この経済的全損の場合には、修理費用ではなく、自動車の時価額を損害として加害者に支払ってもらうことができます。
ここで注意しなければならないのは、交通事故当時の時価額を超える修理費用については賠償を受けられないということです。
代車の費用
代車の費用とは、交通事故当時被害者が使用していた自動車を修理しているあいだ、または自動車を買い替えるあいだに他の自動車が必要となった場合のそのために費用です。
この場合には、レンタカー代や代車を手配するのに必要となった費用を損害として加害者に請求することができる可能性があります。
まとめ
4回にわたって交通事故と慰謝料についてご紹介をしました。
結論として、弁護士に依頼した場合に慰謝料が増額する可能性が大きいことを説明しました。
慰謝料を含む損害賠償について、ご自身のケースでは具体的にどのように計算すればよいのか判断が難しい場合
もあるでしょう。
そのような場合にはひとりで悩まず、まずは弁護士に相談するべきでしょう。