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【交通事故と慰謝料(4)】交通事故の慰謝料を増額させる方法

ここまで慰謝料の計算方法や相場について解説しきました。
今回は交通事故の慰謝料を増額させる方法をご紹介します。

交通事故の慰謝料を増額させる方法

被害者の損害が補填されるか否かは、損害賠償がどれだけ認められるかにかかっています。
したがって、被害者の方はどうすれば慰謝料額がより多く認められるかということを考えなければなりません。

それでは、ここからはできるだけ慰謝料を増額させる方法について説明していきます。

症状固定後は後遺障害慰謝料も請求する

担当の医師によって症状が固定されたと判断された際、後遺障害が残ってしまった場合には後遺障害等級認定を受けることによって、さらに慰謝料を請求することができます。

後遺障害等級の認定は、医師が行うのではありません。
認定は「損害保険料率算出機構」という組織が専門的に実施しています。

等級認定については加害者の加入する自賠責保険会社が窓口となっていますが、実際に調査や判断を行うのは損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所という機関です。

では、後遺障害認定を受けるにはどのような手続が必要なのでしょうか。
認定手続は原則として面談等は実施されず、書面のみによって判断されます。
認定を申請するには、以下の2つの方法があります。

1つは、加害者側の保険会社が後遺障害等級の認定の申請手続を行う「事前認定」です。
もう1つは、被害者が直接加害者の加入する自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定の申請をする「被害者請求」です。

これら2つの方法のうち、適切な後遺障害等級認定を得るためには、被害者請求による申請手続をとるべきです。
なぜなら、事前認定の場合には、申請書類の作成や資料の収集から提出まで全て任意保険会社が行ってくれるという反面、被害者にとって有利な資料を積極的に収集して提出してくれるというわけではないため、適切な後遺障害等級認定を受けられないリスクが内在しています。

一方、被害者請求の場合はカルテや医師の意見書や陳述書等、被害者に有利な資料を提出したり、逆に自分に不利な資料を修正したり、積極的には提出しないということも可能です。
したがって、適切な後遺障害慰謝料を得るためには、被害者請求による申請手続で行うべきです

弁護士基準で算定できるようにする

入通院慰謝料の算定基準のところで解説しましたが、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つの基準の中で、弁護士基準が最も相場の高い基準になります。

過去の裁判となった事例を参考に算定された基準になりますから、自賠責保険基準の最低限の金額ではなく、また保険会社が定めた額でもない弁護士基準で算定されることが、より多くの慰謝料を請求するためには重要です。

したがって、被害者の方が受け取れる慰謝料を増額するためには、弁護士基準が適用されるようにするべきでしょう。

弁護士基準が適用されるようにするためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、裁判手続きに発展した場合に弁護士基準が適用されることは当然ですが、その他の効果で賠償額の増額が見込める可能性が高まります。
加害者の任意保険会社は示談交渉の話合いになった際、示談金の提示を記載した書面を送付してくることが通常です。

そのよう場合、任意保険会社は自社の基準である、任意保険基準に基づいて慰謝料を計算して金額の提示をしてくることがほとんどです。

しかし、賠償金の算出においては、前述のとおり任意保険基準のほかに自賠責基準と弁護士基準があります。
そこで、任意保険会社が私人である被害者本人に示談案を提示する場合には、最低限の補償額である自賠責保険基準や弁護士基準よりも低額な任意保険基準で提示してくることが通常です。
そこで、弁護士基準を知らずに低い基準で示談してしまう被害者の方が多いのが現実です。

弁護士に依頼すれば、任意保険会社の担当者との交渉も弁護士基準で進めることができる可能性もあります。
なぜなら、保険会社の担当者としては私人である被害者本人と和解交渉している段階では、弁護士基準を被害者が提示してきたとしてもただ拒否していればいいだけですが、弁護士が被害者の代理人となって介入してきた場合にはそうはいきません。

相手方の請求をただ拒否していただけでは、次のステージとして訴訟等の裁判手続に移行して、最も高額な弁護士基準での損害賠償請求が認められる可能性があります。

そこで任意保険会社の担当者としても、なるべく弁護士基準で算定した慰謝料の金額に近い額で早期に和解をして終わらせることに一定のモチベーションが生じてきます。

つまり、弁護士に依頼することで、裁判手続もしくは裁判手続以外での任意の交渉段階において、弁護士基準または弁護士基準に準じた相場での賠償金が認められやすくなるということです

以上から、慰謝料額を増額するためには弁護士に依頼することをおすすめします

入通院慰謝料以外の賠償金を請求し損なわないこと

損害賠償額を最大化するためには、入通院慰謝料以外に請求することができる賠償金についても、請求することを忘れないということは重要です。

入通院慰謝料以外に請求することができる項目としては、以下のものがあげられます。

  1. 修理費用
  2. 評価損
  3. 経済的全損
  4. 代車の費用

修理費用

修理費用とは、交通事故に遭って被害者の方が運転していた自動車が破損・故障し、修理することで再度使用できる見込みがある場合に必要になる修理費用のことをさします。
被害者は、加害者側に被害者の自動車の修理費用を請求することができます。

評価損

評価損とは、交通事故によって被害者が運転していた自動車が破損・故障し、修理することで再び使用することができる見込みがある場合であっても、交通事故によって自動車自体の価値が滅失または減少してしまうことです。

この滅失・現象した自動車の価値を損害として賠償請求することも可能です。

経済的全損

経済的全損とは、交通事故によって被害者の使用していた自動車が破損・故障していまい、仮に修理できたとしても、その修理費用が交通事故当時の自動車の時価額を上回ってしまう場合、これを「全損」と評価することです。

この経済的全損の場合には、修理費用ではなく、自動車の時価額を損害として加害者に支払ってもらうことができます。

ここで注意しなければならないのは、交通事故当時の時価額を超える修理費用については賠償を受けられないということです。

代車の費用

代車の費用とは、交通事故当時被害者が使用していた自動車を修理しているあいだ、または自動車を買い替えるあいだに他の自動車が必要となった場合のそのために費用です。

この場合には、レンタカー代や代車を手配するのに必要となった費用を損害として加害者に請求することができる可能性があります。

まとめ

4回にわたって交通事故と慰謝料についてご紹介をしました。

結論として、弁護士に依頼した場合に慰謝料が増額する可能性が大きいことを説明しました。
慰謝料を含む損害賠償について、ご自身のケースでは具体的にどのように計算すればよいのか判断が難しい場合
もあるでしょう。
そのような場合にはひとりで悩まず、まずは弁護士に相談するべきでしょう。

【交通事故と慰謝料(3)】入通院慰謝料は基準によっても金額が異なる

前回は、入通院慰謝料の計算方法と相場について記事を書きました。

しかし入通院慰謝料も何を基準にするかによって金額も違うのです。
そこで今回は入通院慰謝料の基準などを解説していきたいと思います。

入通院慰謝料は基準によっても金額が異なる

それでは、(1)自賠責保険基準(2)任意保険基準(3)弁護士基準それぞれの基準について詳細を説明していこうと思います。

自賠責保険基準

自賠責保険基準とは、自動車の保有者が強制的に加入させられている自賠責保険をもとに決められている基準になります。

交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としています。
したがって、被害者に支払われる慰謝料の金額も最低限度の額に定められています。

このように、法律に根拠のある基準であることには変わりありませんので、加害者側からは法律で決められている適正な基準額であると主張して示談金を自賠責保険基準で提示してくることも多々あります。

しかし、自動車損害賠償保障法によって義務付けられていることは、自動車保有者が自賠責保険に加入することであり、慰謝料額を定額で定めているわけではありません。

上記のような加害者や加害者側の保険会社の主張には、注意しておく必要があります。

自賠責保険では、120万円が補償される上限金額となっています。

自賠責基準では、慰謝料の他に治療費や休業損害・逸失利益などすべての損害賠償金額が120万円以下だった場合に採用されるもので、損害賠償合計が120万円を超えた場合は自賠責基準で慰謝料を算出する意味はないことになります。

そして、120万円以下の場合には、次にみる任意保険基準と自賠責保険基準とは同額となっていることが多いです。

したがって、損害額が120万円を超えた場合には自賠責保険基準では算出せずに、任意保険基準で慰謝料を計算することになります。

この場合の問題点としては、任意保険基準は各保険会社が独自に作っているものであるので、各社で異なるということが挙げられます。

社内基準であるため一般に公開されているものではないので、被害者の方が確認することができないという問題点があります。

任意保険基準

任意保険基準とは、保険会社が独自で設定している社内基準になります。

そのため、会社によって定められている基準は多少異なるところがありますが、加害者側の任意保険会社は被害者に示談金を提示するときに、この任意保険基準に基づいて算出された額を利用します。

昔は任意保険にも統一基準があり、その基準に従って入通院慰謝料が算出されていましたので、保険会社による算定額も差が出ることはありませんでした。
しかし、規制緩和が進み平成11年に旧任意保険基準が廃止され、現在は任意保険会社ごとに独自の基準を設定しています。

基準に基づく慰謝料の金額については、保険会社によって異なります。
しかし、多くの任意保険会社は旧任意保険基準を参考にして、それに近い金額での基準を設定していると言われています。

任意保険基準は、自賠責保険基準よりも慰謝料相場が高く設定されていると言われていますが本当でしょうか。
具体的に以下の事例を見てみましょう。

交通事故に遭って受傷して、入院せず、通院3か月で通院回数40回の事例を考えてみます。
任意保険基準での入通院慰謝料は前述の表より、378,000円となります。

ちなみに自賠責保険基準でも入通院慰謝料を算出してみましょう。

自賠責保険基準のもとでは、
4,300円×40日×2=344,000円です。

任意保険基準での入通院慰謝料は378,000円で、自賠責保険基準での入通院慰謝料が344,000円です。
このことから、任意保険基準で提示される慰謝料は、最低限の補償を目的とする自賠責保険基準と大きく変わることがないということがお分かりいただけるでしょう。

弁護士基準

弁護士基準とは裁判基準とも呼ばれていますが、どのような基準なのでしょうか。

弁護士基準とは、弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準のことを言います。

この基準が適用されるのは、被害者が弁護士に依頼したときや、訴訟を提起して裁判手続の中で慰謝料を賠償請求していくような場合に適用されます。

この基準は上述したとおり、「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」や「交通事故損害額算定基準」という本に記載されていますので、確認することができると思います。

弁護士基準は、上記3つの基準の中で最も慰謝料額が高い基準になります。
過去裁判で争われた場合に裁判所によって認められた金額になりますので、被害者の方に認められた正当な権利として請求できる金額ということには違いありません。

裁判になったとしても採用されることが多いですので、弁護士に依頼するメリットとしてこの基準の適用があげられます。

まとめ

今回は入通院慰謝料の金額の判定にかかわる基準について詳しくご紹介しました。

次回は交通事故と慰謝料をテーマにした記事の最後になります。

交通事故の慰謝料を増額させる方法などを紹介しますので、ご期待ください。

 

以上

【交通事故と慰謝料(2)】入通院慰謝料の計算方法と相場

前回は、治療費以外に請求できる入通院慰謝料とは何なのか、詳しく解説をいたしました。

今回は入通院慰謝料の計算方法と相場をテーマにご紹介をしたいと思います。

入通院慰謝料の計算方法と相場

入通院慰謝料は障害慰謝料とも呼ばれますが、どのように計算するのでしょうか。
入通院慰謝料は、入院の日数や通院回数、治療期間を計算式にあてはめることで計算します。

したがって、これらの数字をどの計算式にあてはめるか、またはこれらの数字が変わってくると入通院慰謝料として算出される金額が変わってくることになります。

そして、入通院慰謝料を算出するための基準には、大きく分けて以下の3つがあるとよく言われています。

  1. 自賠責保険基準
  2. 任意保険基準
  3. 弁護士基準

慰謝料相場は(1)自賠責基準(3)任意保険基準(4)弁護士基準のいずれかで計算することになります。
次に、それぞれの基準の計算方法とその相場の違いについて順番に解説していきます。

自賠責保険基準の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

まずは、自賠責保険基準における入通院慰謝料の計算方法について説明していきます。

自賠責保険基準では、入通院慰謝料は1日当たり日額4300円と決定されています。
具体的な計算式を説明します。

まず、「交通事故後最初の診察から治療終了までの期間」または、「入通院日数の2倍」に1日当たり4,300円かけて計算します。
そして算出された金額のうち少ない方が入通院慰謝料となります。
具体的に計算してみましょう。

交通事故に遭ってむちうちになり、初診から治療終了までに3か月、実際に病院には1か月につき10日通院していたとします。
交通事故後最初の診察から治療終了までの期間は約90日です。

4,300×90日=387,000円

実際の通院日数は10×3か月=30日です。
4,300×30日×2=258,000円

この場合、実通院日数を採用して計算した額の方が少ないので、後者の計算式によって算出された金額の方が小さくなり、これが入通院慰謝料として採用されます。

したがってこのケースでは、入通院慰謝料は258,000円だということになります。

なお,上記の2つの計算式より,2日に1回以上のペースで通院すれば慰謝料の金額が増額するのではないかと誤解して考える方がいます。

しかし,治療期間が上限となりますので,2日に1回を上回る頻度で通院したとしても,入通院慰謝料が増額することはありません。

任意保険基準の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

次に,任意保険基準での入通院慰謝料の相場等を解説します。
この基準は保険会社が各社独自に設定し,示談交渉に用いている基準になります。

ここでは、平成11年7月以前は統一基準があったためその金額を参考におおよその相場をご紹介したいと思います。

任意保険基準による入通院慰謝料表(単位:万円)

入院 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月 7か月 8か月 9か月 10か月
通院 25.2 50.4 75.6 95.8 113.4 113.4 128.6 141.2 152.4 162.6
1か月 12.6 37.8 63 85.6 104.7 120.9 134.9 147.4 157.6 167.6 173.9
2か月 25.2 50.4 73 94.6 112.2 127.2 141.2 152.5 162.6 171.4 176.4
3か月 37.8 60.4 82 102 118.5 133.5 146.3 157.6 166.4 173.9 178.9
4か月 47.8 69.4 89.4 108.4 124.8 138.6 151.3 161.3 168.9 176.4 181.4
5か月 56.8 76.8 95.8 114.6 129.9 143.6 155.1 163.8 171.4 178.9 183.9
6か月 64.2 83.2 102 119.8 134.9 147.4 157.6 166.3 173.9 181.4 185.4
7か月 70.6 89.4 107.2 124.3 136.7 149.9 160.1 168.8 176.4 183.9 188.9
8か月 76.8 94.6 112.2 128.6 141.2 152.4 162.6 171.3 178.9 186.4 191.4
9か月 82 99.6 116 131.1 143.7 154.9 165.1 173.8 181.4 188.9 193.9
10か月 87 103.4 118.5 133.6 146.2 157.4 167.6 176.3 183.9 191.4 196.5

上記の表について解説していきます。
入院しかしていない事案では、「入院」の欄の最上位の行が入院月数を表しています。
その一つ下段の数字が慰謝料金額になります。

では,通院しかしていない事案では,「通院」の欄の一番左行が通院月数を表しています。
その一つ右の行の数字が慰謝料金額になります
入院と通院の両方があった場合には、入院した月数と通院した月数とが交わる欄に記載された金額が慰謝料の基準となります。

それでは具体的な事案について入通院慰謝料がいくらになるのか考えてみましょう。
事故の結果,通院のみ3か月,通院回数40回の場合,上記の表からは入通院慰謝料は37万8000円となります。

弁護士基準(裁判基準)の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

最後に、弁護士基準(裁判基準)とはどのような基準なのでしょうか。
弁護士基準(裁判基準)には2つの算定基準が存在しています。

これらの基準は通称「赤い本」と呼ばれる日弁連が出している本に掲載されています。
むち打ち症などの比較的軽い症状の場合には①の表を使用します。
他方,骨折などの重症の場合には②の表を使用します。

入通院慰謝料表①(単位:万円)

単位(万円) 入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195
1ヶ月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199
2ヶ月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201
3ヶ月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202
4ヶ月 67 955 119 136 152 165 176 185 192 197 203
5ヶ月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204
6ヶ月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205
7ヶ月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206
8ヶ月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207
9ヶ月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208
10ヶ月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

入通院慰謝料②(単位:万円)

単位(万円) 入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306
1ヶ月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311
2ヶ月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315
3ヶ月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319
4ヶ月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 326 323
5ヶ月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325
6ヶ月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327
7ヶ月 124 157 188 217 244 266 286 301 316 324 329
8ヶ月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331
9ヶ月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333
10ヶ月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

具体的に表を見ながら、入通院慰謝料を算出してみましょう。
事故の結果,むち打ち症となり入院はせず,通院を3か月継続した場合には,軽傷の場合の表①を使用します。

このような事案では,入院0か月,通院3か月が交わった箇所を見ますと,530,000とあります。
よって,入通院慰謝料は53万円と割り出せます。

次に事故の結果,骨折し入院はせず,通院を3か月継続した場合はどうでしょう。

この事案は重症の表②を使用します。
②の表を見ると,入院0か月,通院3か月が交わった箇所には730000円とあります。
よって慰謝料は73万円となります。

まとめ

今回は入通院慰謝料の計算方法と相場について詳しくご紹介しました。

次回も交通事故と慰謝料をテーマに記事を公開いたします。

 

以上

【交通事故と慰謝料(1)】治療費以外に請求できる入通院慰謝料とは

交通事故に遭って受傷してしまったような場合、加害者に対して示談金を支払ってもらえることをご存じの方は多いでしょう。
病院に入通院したような場合には治療費は加害者側に負担してもらえますが、その他の損害はどうなるでしょうか。

今回から複数回にわけて、入通院慰謝料について3つの算定基準とそれぞれの基準による計算方法とその相場について図表を用いて分かりやすく解説していきます。

また、慰謝料を含む損害賠償金をできるだけ増額する方法についても具体的に説明していますので、是非最後まで読んでください。

交通事故では治療費以外に入通院慰謝料も請求可能

まず、慰謝料とはどのようなお金のことを指すのでしょうか。
慰謝料とは財産権以外に対する損害賠償金のことを言い、精神的または肉体的な苦痛に対してそれを慰謝することを目的に支払われるお金のことを言います。

精神的または肉体的な苦痛に対する損害賠償金が慰謝料であると説明しましたが、どういう意味でしょうか。
交通事故が原因で怪我をして、入院や通院を余儀なくされる状態になり、身体的な自由が奪われることや検査や治療に時間を割かなければならないこと、身体の異常等々様々な苦痛に晒されることになります。

慰謝料とは、このような精神的または肉体的な苦痛を慰謝するために支払われる金銭であるということです。
慰謝料イコール示談金だと理解している方も多いようですが、その理解は少し不正確です。

交通事故に遭って受傷した場合には、それらの苦痛以外にも様々な損害が発生します。
交通事故の場合、まず、入院や通院によって病院に支払う治療費や、病院までの交通費が発生します。
入通院を余儀なくされることで、本来であれば働いて得られたはずであるのに、休まざるを得なくなったために得られなくなった収入については休業損害が発生します。

さらに、後遺障害が残った場合には、後遺障害のせいで労働能力が喪失または減少してしまいます。
そのために、将来得られるはずであった収入が得られなくなる分を補填する逸失利益などが生じます。

慰謝料はあくまで、交通事故が原因で受傷した怪我や治療による精神的または肉体的な苦痛に対して支払われる損害賠償金ですので、治療費等のその他の支出とは別に加害者や加害者側の保険会社に請求することができます。

以上から慰謝料は示談金の中の一部をさしますが、それ以外にも示談金として請求できる損害があるということになります。
こういった理由で、示談金イコール慰謝料という理解は不正確であるということになります。

入通院慰謝料は計算方法が決まっている

では、入通院慰謝料はどのように計算するのでしょうか。
治療費や交通費であれば、領収証やレシートがありますので実際に負担した実費がわかり、これを請求することができます。

他方で慰謝料はどのように算出するのでしょうか。
実は、入通院慰謝料はその相場が決まっています。
事実上、慰謝料を考える場合には、裁判所であっても定額化している傾向があります。

裁判をしない任意での示談交渉の段階でも、個々の判断はほとんど結論に影響を与えないまま相場通り計算されている実態もあります。
したがって、慰謝料相場を理解しておくことは示談交渉を有利に進めていくために必要な知識であると言えます。

まとめ

今回は治療費以外に請求できる入通院慰謝料について詳しくご紹介しました。

交通事故と慰謝料をテーマに複数回解説していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

以上

交通事故でPTSDとなった場合の慰謝料は?

交通事故で辛い体験をされた場合、PTSDを発症することがあります。PTSDは骨折などと異なり、他覚的所見の認められない症状であるため、一見、慰謝料を獲得できなさそうに思えますが、実はそうではありません。

今回は、交通事故でPTSDが発症した場合の慰謝料について解説してまいりたいと思います。

PTSDとは

ご存じの方も多いと思いますが、PTSDとは日本語で「心的外傷後ストレス障害」といいます。「心的外傷」とは、たとえばDV(ドメスティックバイオレンス)、虐待などの外的要因によって心が傷つくことです。心的外傷には交通事故も含まれます。交通事故によって直接被害を受けた場合のみならず、たとえば車に同乗していた方がお亡くなりになった、重傷を負ったなどという場面を目撃した場合でもPTSDに罹患する可能性があります。ある研究所の発表では、交通事故による重傷患者のうち約1割の方交通事故から約1か月後にがPTSDを発症している、しています。

PTSDと慰謝料(精神的苦痛に対する賠償金)

交通事故後にPTSDを発症した場合に獲得できる可能性のある慰謝料は「傷害(入通院)慰謝料」と「後遺障害慰謝料」です。もっとも、慰謝料を獲得するためには、交通事故に遭わなければPTSDは発症しなかったという関係、つまり、交通事故とPTSDとの間に「因果関係」が認められることが大前提です。PTSDは人の精神状態に左右される側面がありますから、ときに「PTSDが本当に交通事故によって生じたものといえるのか」、「PTSDは交通事故とは別の原因で生じたものではないのか」などという疑いの目で見られがちです。少しでもPTSDの発症が疑われる場合は、直ちに専門の医師の診察を受けることが大切です。

傷害(入通院)慰謝料

傷害(入通院)慰謝料は、交通事故後、入通院を開始した時点から医師により症状固定(これ以上治療を継続しても症状が改善する見込みはない)と判断された時期までの精神的苦痛に対する賠償金です。

通常、PTSDは交通事故から一定期間経た後、発症することが多いです。前述のとおり、発症の疑いが生じた段階で専門医師の診察を受けましょう。そして、仮に、PTSDと診断された場合は医師の指示に従い継続的に治療を受けていくことが大切です。PTSDの症状が治まるまでには、軽傷の場合でも発症から半年から1年、重篤な場合で2年~3年かかるといわれています。

傷害(入通院)慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判所)基準の3つの基準があります。このうち、弁護士(裁判所)基準で交渉した方が慰謝料は高額となる傾向にあります。また、当然、入通院期間が長ければ長いほど慰謝料は高額となります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、症状固定後に残存した後遺障害に伴って受けた精神的苦痛に対する賠償金です。

PTSDでも後遺障害等級9級10号、12級相当、14級相当の等級認定を受けることができる可能性はあります。等級認定を受けるためには加害者の自賠責保険会社に対して認定申請を行う必要があります。そして、一定の基準を満たした場合にのみ、等級認知を受けることができるのです。

後遺障害等級慰謝料でも、前述した自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判所)基準があり、弁護士(裁判所)基準で交渉を行えば慰謝料は高額となる傾向にあります。

まとめ

上記のとおり、交通事故によりPTSDを発症した場合でも慰謝料を獲得できる場合があります。通常、他の傷害(怪我)を併発することも多いでしょうから、獲得できる慰謝料はさらに高額になる可能性もあります。PTSDを患いながら、慰謝料のことまで気を回す余裕はありませんから、お困りの場合は交通事故の専門家に一度相談してみましょう。

以上

 

交通事故の慰謝料を3つの基準で計算してみよう

交通事故の被害に遭った場合に気になることのひとつとして

 

慰謝料はいくらになるのか?

 

ということではないでしょか?

今回は交通事故の慰謝料を3つの基準を使った計算してみました。

1.交通事故における慰謝料

慰謝料とは交通事故によって人が受けた精神的苦痛の程度を金銭で評価したものをいいます。

交通事故における慰謝料には

・傷害(入通院)慰謝料

・後遺障害慰謝料

・死亡慰謝料

があります。

そして、傷害の(怪我した)場合の慰謝料が傷害(入通院)慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡の場合の慰謝料が死亡慰謝料です。

なお、死亡の場合は死亡した被害者の父・母、配偶者及び子、または被害者との間にこれらの者と実質的に身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けると認められる者(被害者と内縁関係にあると認められる者など)は、被害者とは別の(固有の)慰謝料を加害者に請求できます。また、死亡した被害者の相続人(遺族)は被害者が本来加害者に請求できる死亡慰謝料(慰謝料請求権)を相続します。

以下では傷害(入通院)慰謝料、後遺障害慰謝料について具体的に計算していきたいと思います。

2.傷害(入通院)慰謝料の計算

傷害(入通院)慰謝料とは、交通事故による怪我によって負った精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。ただ、精神的苦痛といっても人の内面にかかわることですから客観的に評価することは難しいです。そこで、傷害(入通院)慰謝料を算定するための基準が設けられています。それが自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判所)基準の3つです。以下では、次のケースでそれぞれの基準によると慰謝料がいくらの計算となるのかみていきましょう。別のケースの金額をお知りになりたい方はこちら【https://vs-group.jp/lawyer/ko-tu-jiko/simulation】の計算機もお使いください。

【ケース】

脚の骨を骨折 交通事故直後から20日の入院 退院後3か月間通院(実通院日数は12日)

① 自賠責基準での慰謝料計算

自賠責基準では

傷害(入通院慰謝料)=4,200円(1日)×「対象日数」

で計算されます。

なお、「対象日数」は、

ア 治療期間(=入院期間+通院期間)

イ (入院期間+実通院期間)×2

のいずれか少ない日数の方を採用します。

以上を上記のケースにあてはめると、

ア 110日(=20日+30日×3)

イ  64日(=(20日+12日)×2)

となり「対象日数」は64日となります。したがって、

傷害(入通院)慰謝料=4,200円×64日=26万8,800円

となります。

② 任意保険基準での慰謝料計算

任意保険基準は各任意保険会社が独自に基準を定めており一般に公開されていません。しかし、かつては任意保険会社共通の基準があり、現在も多くの任意保険会社がその基準を踏襲しています。そこで、かつての基準をベースに今回の傷害(入通院)慰謝料を計算すると、

傷害(入通院)慰謝料≒53万円~71万円(目安)

となります。

③ 弁護士(裁判所)基準での慰謝料計算

弁護士(裁判所)基準は、日弁連交通事故センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準(通称、赤本)」に掲載され、ネットなどでも公開されています。弁護士が加害者の任意保険会社と交渉する際や訴訟の際にこの基準を用いることから弁護士(裁判所)基準と呼ばれています。弁護士(裁判所)基準で今回の傷害(入通院)慰謝料を計算すると

傷害(入通院)慰謝料≒73万円~105万円(目安)

となります。

3.後遺障害慰謝料の計算

後遺障害慰謝料とは、症状固定後(治療費の支払いが打ち切られた後)になお残存した後遺症により被る精神的苦痛に対する賠償です。後遺障害慰謝料にも上記の3つの基準があり、後遺障害等級によって慰謝料が異なります。以下では、後遺障害等級のうち最も症状の程度が軽い14等級の慰謝料を基準ごとにみていきましょう。

① 自賠責基準での慰謝料計算

自賠責基準での後遺障害等級14級の慰謝料は

32万円

です。

② 任意保険基準での慰謝料計算

任意保険基準での後遺障害等級14級の慰謝料は

40万円(目安)

です。

③ 弁護士(裁判所)基準での慰謝料計算

弁護士(裁判所)基準での後遺障害等級14級の慰謝料は

110万円(目安)

です。

4.まとめ

傷害(入通院)慰謝料も後遺障害慰謝料も弁護士(裁判所)基準を用いた方が慰謝料は高くなる可能性があります。少しでも多く慰謝料を獲得したいと考えている方は、弁護士に交渉等を依頼するかADRという機関を活用するとよいでしょう。

 

                                                                                        以上