交通事故に遭った場合に被害者が弁護士費用を自己負担しなくてもよい弁護士費用特約という仕組みがあります。
この弁護士費用特約は2台目以降に保有する自動車の保険にも付した方がよいのでしょうか。
また、弁護士費用特約が重複した場合、補償はどのようになるのでしょうか。
2台目以降の車に弁護士特約を付けると重複する
まず、弁護士特約や弁護士費用特約と呼ばれるものはどのようなものなのでしょうか。
弁護士費用特約とは、交通事故によって負傷したり財産の損害を受けたりして、加害者に対して損害賠償請求を行うときに弁護士に依頼する費用や法律相談をする場合の費用を保険会社が被害者の代わりに補償してくれる特約です。
それでは、弁護士費用特約は自動車を2台目以降保有する場合にも付けた方が良いのでしょうか。1台目の自動車と2台目の自動車にそれぞれ弁護士特約が付されていた場合にはどのような取り扱いとなるのでしょうか。
結論から言えば弁護士特約は1台目の自動車に付しておくだけで十分です。
なぜなら、本人や同居の家族が2台目以降に保有した自動車に搭乗中に交通事故に遭ったとしても、1台目に付した弁護士特約の補償を受けることができるからです。
そのため、弁護士費用特約は1台目の自動車に付していれば基本的に困ることはないと考えておけば大丈夫だと思います。
また、2台目以降の保有した自動車に弁護士費用特約を付した場合には弁護士費用特約による補償が重複してしまうことがあります。
それでは、例外として2台目以降に保有する自動車にも弁護士費用特約を付した方がいい場合はあるのでしょうか。
2台目以降に保有する自動車にも1台目と重複して弁護士費用特約が付されていていれば、親族以外の第三者に対する補償の面でメリットがあります。
どういうことかというと、2台目以降に弁護士費用特約が付いていた場合には、親族以外の第三者が乗車していて交通事故に遭い負傷してしまったとしても、弁護士費用特約の適用を受けることができるということです。
同居している家族以外の第三者とは、たとえば、別居している他人のみならず、別居している両親や祖父母、孫等も含まれます。そのような人の送り迎えや搭乗させている人には保険適用の主体的範囲は重要な問題です。
本人の同居の家族以外の第三者を自動車に乗せることが多い方にすれば、1台目の弁護士費用特約の重複はとりわけ問題にすることなく2台目以降の自動車についても弁護士費用特約を締結しておくことが転ばぬ先の杖となるかもしれません。これについて詳しくは後述します。
以上の説明をまとめておきます。
1台目の自動車に弁護士費用特約がある場合、この1台目の自動車に搭乗した本人とその家族には1台目の保険により交通事故の補償を受けることができます。
また、本人と家族以外の第三者についても1台目に搭乗する場合に交通事故に遭った場合には1台目も保険の適用を受けることができます。
他方、2台目以降の自動車に弁護士費用特約がない場合には取り扱いが異なってきます。
本人と家族が2台目の自動車に搭乗して交通事故に遭った場合にも1台目の弁護士費用特約が適用され補償を受けることができます。
しかし、本人と家族以外の第三者が2台目の自動車に搭乗中に交通事故に遭った場合には1台目の弁護士費用特約の適用はなく補償を受けることができません。
同居の家族の保険についている弁護士特約も重複する
保険が付されているのが1台目の自動車の場合には弁護士費用特約により補償される保険の重複は起きません。
しかし、本人の同居の家族が自動車保険に加入していて弁護士費用特約がある場合には、1台目であっても補償が重複しています。
まず、自動車保険に加入するときは、家族の自動車保険の内容についても確認しておくことが大切です。
本人の加入している自動車保険に弁護士費用特約が付されている場合にも、家族との自動車保険との内容の重複は確認しておく必要があります。
例えば、本人が自動車保険に加入しようと検討している場合、すでに本人の同居の家族が契約している自動車保険に弁護士費用特約が付されていたとします。
この場合には本人の同居の家族の自動車保険の適用により、本人および本人の配偶者についても弁護士特約による補償を受けることができます。
したがって、このような事案で本人が独自に弁護士費用特約に加入すると、本人とその配偶者に対する自動車保険の補償が重複してしまう結果となります。
他方で、このケースで本人に別居中の未婚の子どもがいる場合を考えてみましょう。
この子どもは本人の親の保険による弁護士費用特約による補償を受けることはできません。
この別居中の未婚の子どもにも自動車保険の補償を適用させるためには本人が独自に弁護士費用特約に加入することに意味があるといえるでしょう。
他の損害保険の弁護士特約との重複にも注意
弁護士費用特約は、自動車保険の特約として付されることが多いです。
しかし、自動車保険の特約ではなく火災保険の特約として弁護士費用特約を付すことができる場合もあります。
そのような場合には、自動車保険の特約と火災保険の特約で弁護士費用特約が重複する事態になります。
それでは、火災保険の弁護士費用特約は自動車保険の特約とは違いがあるのでしょうか。
自動車保険の弁護士費用特約と、火災保険の弁護士費用特約とは異なる場合があります。
自動車保険の弁護士費用特約は、保険が適用されるのが契約車両の交通事故に限定されている場合がほとんどだと思います。
他方で火災保険については、歩行中に落下物にあたって負傷したケースや、歩行中に自転車に追突されて負傷したケースのような日常生活上での事故も補償適用となっている場合があります。
自動車を持っている場合には火災保険の弁護士費用特約を別途付けておく必要性は高くないでしょう。ただし、火災保険の弁護士費用特約の方が補償の範囲が広い場合もありえます。
自動車での交通事故対策も含めてより広範囲の補償を具備しておきたいと考えるのであれば弁護士費用特約を付しておくことにも意味があります。
しかし、重複する範囲については保険契約する意味はないですので、自動車保険の特約、火災保険の特約の適用範囲をあらためてよく確認してから契約することが重要です。
結論から言うと弁護士費用特約を複数契約する必要性は低いです。
複数の保険で弁護士費用特約を契約していた場合であっても、複数の保険から保険金を受け取れるわけではないことは留意しておく必要があります。
例えば、事故で負傷して弁護士に依頼したことで費用が100万円かかったとしましょう。
その場合、自動車保険と火災保険で弁護士費用特約を付していたからといって、弁護士費用200万円を受け取ることはできません。あくまで受け取れるのは実際に生じた負担100万円のみです。
したがって、重複して契約している場合には保険料が無駄になっている可能性があります。
また、同居の親族や配偶者が保険契約している場合にも重複に注意してください。
弁護士費用特約は、配偶者や同居の親族などは保険の対象として含んでいることが一般的ですので家族で複数の保険を契約することにあまり意味はないかもしれません。
補償が重複している場合には、保険料も重複している場合がありますので確認しておきましょう。
以上