交通事故の種類には大きく分けて人身事故と物損事故の2つのタイプがあり、この2つが具体的にどう違うのか理解していない人は少なくありません。今回は、この2つの交通事故の特徴について紹介しましょう。
人身事故、物損事故の定義
人身事故、物損事故とは具体的にどのような事故なのでしょうか。その意味を以下より説明します。
人身事故
人身事故とは、交通事故によって「けがを負った」「後遺症が残った」「死亡した」など、交通事故で起きた身体に関わる事故の総称です。
物損事故
物損事故とは、交通事故の加害者・被害者ともに身体的なダメージこそ負わなかったものの「自動車が壊れた」「壁やガードレールが壊れた」など、物の損害が発生した場合の総称です。
人身・物損事故の違い1.「犯罪になるかどうか」
人身事故は「自動車運転過失致傷罪」という犯罪に該当するので、加害者側は罰金や懲役の対象です。また免許停止の処分なども下されます。それに対して物損事故は、身体的な被害者は発生していないので、犯罪の対象外です。免許の点数が引かれることもありません。
しかし、アルコール摂取や無免許で物損事故を起こした場合は、立派な道路交通違反の対象であり、処罰を科せられます。また、物損事故を起こしても事故報告をしない、いわゆる「当て逃げ」をしてそれが発覚した場合は、懲役および罰金の対象です。
そして、 人身事故には自賠責保険が適用されますが、物損で生じた被害は自賠責保険は利用できません。物損事故で発生した損害賠償義務は任意保険が対応してくれます。
人身・物損事故の違い2.「事故発生後に詳細が記録されるか」
先述した通り、人身事故は物損事故と違って犯罪、つまり刑事処罰の可能性がある事故です。刑事処罰の扱いになるということは、警察が動きます。
事件が発生したときに警察がすることは、事件の事実関係を裏付けるための、事故当時周辺の徹底した調査です。事故当事者および目撃者に事故現場に立ち会っての調査である「実況見分」、事情聴取などを行います。
それらの活動、そして活動によって収集した情報をまとめた実況見分調書、供述調書などを作成するのが、人身事故における警察の仕事です。これら警察が収集した情報の一部は、被害者側が証拠として受け取ることもできます。
人身事故が起きるとよくあるのが、加害者と被害者の言い分の違いです。交通事故では、加害者と被害者のどちらがどれくらいの割合で責任を追うのかという「過失割合」について、言い合いが生じます。
加害者側としては自分が背負う過失割合を少なくしたいために、自己の正当化を主張するケースが少なくありません。その過失割合を正しく出すために必要なのが、警察の調査および情報をまとめた書類なのです。加害者・被害者が理不尽な言い訳をしても、警察が作成した書類があれば、どちらかの正当性を主張できます。
このような人身事故の事後処理に対して、物損事故は犯罪に該当しないため警察が動くこともなく、事故の詳細をこと細かく記録した資料作成も行われません。そのため、過失割合も加害者・被害者の当事者しか主張する人がいないため、過失割合の言い争いになったとき交渉がスムーズに進まないケースも少なくありません。
交通事故が発生した場合、人身事故のほうが刑事処罰の対象になるのでなんとかごまかして物損事故にしようとする人もいます。しかし物損事故の場合、警察の調査がなく客観視された情報がないので困るケースもあるのです。
まとめ
物損事故は人が死ぬような事故ではないので、人身事故より軽いと思っている人もいるでしょう。しかし物損事故は警察が介入しない分、罪は軽いですが事故後に過失割合の問題でトラブルに発展する可能性もあります。
被害の割合に対して少しでも罪を軽くしようと考えるのではなく、どのような対処法が最善であるかを考えるようにしましょう。
以上