「交通事故全体像」カテゴリーアーカイブ

物損事故が再捜査!どんな時?何をするの?

交通事故の多くは物損事故と扱われ、刑事事件になることはさほど多くないと言われています。

しかし時には、最初はただの物損事故として処理されたはずなのに、その後人身事故になったり、刑事訴訟にまで発展してしまうことがあります。今回はそんなお話です。

 

再捜査が命じられる場合

さて交通事故の内容によっては、再捜査が命じられることがあります。被害者や関係者が強く再捜査を求め、それが認められた場合のほか、所轄の警察からの報告書を県警が見た結果、再捜査を命じて差し戻す事例もあるようです。

また、加害者の行動が悪質だと思う場合にも、物損事故として処理することが妥当とは言えず、再捜査になることもあります。

さて再捜査になる場合、「交通事故の件ですが、当初は物損事故として処理されていたが、再捜査の必要があるので、都合の良い時に警察署に来てください。」という連絡が警察署からきます。

電話で来ることも多いのですが、最近では警察を語った詐欺電話もあるので、本当に警察からの電話か、かけてきた人はだれか、必ず確認しましょう。

また留守番電話設定をして置き、要件、警察署名、担当者名、要件を吹き込んでもらい、警察署にこちらから電話をして本当か確かめる方法もあります。

警察署では何をするの?

さて警察署では、事故の状況などを再確認することから始まります。「また同じ話をしなくちゃいけないの?」と思うかもしれませんが、できるだけ正確に話すようにしましょう。

ドライブレコーダーに画像が残っていれば、その画像を使えるかもしれません。しかしドライブレコーダーの映像は、時間が経つと消えてしまうので、交通事故の映像はあらかじめ残しておかれるとよいと思います。

自分の記憶だけを頼りにする場合、できるだけ冷静に、小さなことでも話すようにします。さらに「加害者に対してどう思っているか」「加害者を罰してほしいと思うか」ということも聞かれます。

再捜査の目的は被害者救済だけではない

お叱りを受けるかもしれませんが、この再捜査の目的は被害者の救済だけではありません。「加害者にどんな罰を与えてやろうか」という材料とする目的もあるのです。

そのため、いろいろと話した割には自分の思うような結果にならないかもしれません。一人で対応するのは精神的にも大きなストレスになりますので、できることであれば、お早めに交通事故対応に詳しい弁護士へご相談されることをお勧めします。

 

 

死亡事故を起こしてしまった友人の話

十年以上前の冬、仲の良い友達が交通事故を起こしてしまい、残念なことに被害者が亡くなられました。被害者のご家族はもちろんですが、加害者となってしまった友人にも立ち直るための時間が必要で、今もまだ自動車の運転ができない状態です。

この記事を書いていいか迷ったのですが、交通事故の加害者がどれだけ重いものを負うのか知っていただきたいと思い、また加害者側は責任をしっかり負うとともに、助けが必要であることも知ってほしく、この記事を書くことにしました。

私はその友人が加害者の方への謝罪を精一杯行っていたことを知っており、今でも大切な友人であることには変わりないので、個人情報には十分配慮したうえで、書いていきます。

 

すぐ警察と救急車を呼んだのに

当時住んでいたのは、さほど大きくない地方都市でした。共通の友人から「〇〇が事故を起こしたって」という話を聞いた時には、まずは車の損害と本人のケガを心配しました。

しかし「すぐ警察と救急車を呼んだんだけど、相手の人がなくなったって」という話を聞きました。もちろん友人本人もケガをしており、病院受診後に一度自宅に帰ることが出来たのですが、食事もとれないくらいのショック状態でした。

警察での勾留

一度は家に戻ることが出来ましたが、その後、自宅に警察官が来て連れていかれ、警察署で勾留されたそうです。

いくぶん落ち着いた後に聞いた話ですが「死亡事故を起こしてしまった人は、自殺をしてしまうこともあるから、自殺防止のためにも警察に泊まってもらう」と説明されたそうです。

担当してくれた人はけっこう優しくて、「けがは痛まないか?」と聞いてくれたり、「くさい飯って言われることもあるけどそれは昔の話で、昔ほどまずくもくさくもない。体のためにも食事はちゃんとたべるように」と言われたことを話してくれました。

「ひどいことはされず、こんなことをした自分に優しくしてくれて、心が痛んだ」と言っていたのが、印象に残りました。

辛かったのは周りの対応

さて、警察の対応は思っていたよりひどくなく、少しほっとしたのですが、「ショックだったのは、△△から『お前のやったことは人殺しだ』と言われたこと。△△はこの事故と関係ないのに」

△△とは、共通の知人です。「死亡事故を起こしたのでは、言われても仕方がない」という意見もあるのかもしれませんが、死亡事故を起こした加害者がすべきことは、今後の償いです。悪口を言ってさらに痛めつけることは賛成できません。

ひどいことを言われながらも、償いの日々は続きます。この話は、機会があればまたお話ししたいと思います。

交通事故発生から示談までの全体像2

今回は、前回の記事に続いて交通事故の全体像を解説していきます。

交通事故発生から示談までの全体像1

3.怪我についての症状固定

治療の終了

病院での通院治療を続けて、症状が完治したら治療終了となります。

また、怪我の内容によっては症状が完治していなくても治療終了となることがあります。交通事故の治療やリハビリを続けていても、それ以上の症状改善が見込めない状態になることを症状固定といいます。

症状固定の状態となると、その時点で保険会社から治療費を支払ってもらっての治療は終了となり、あとは示談交渉によって解決するこちになります。

後遺障害認定

症状固定で治療が終了した場合には後遺障害認定の申請手続きをおこなうことができます。

申請の結果、後遺障害の認定を受けると、後遺障害についての慰謝料などの支払いを受けることが可能です。

4.保険会社から賠償金の提示

賠償金の種類

病院での治療が終了すると、保険会社から賠償金の提示がされます。

賠償金の種類には次のようなものがあります。

  1. 治療費・交通費
  2. 休業損害
  3. 後遺障害による逸失利益・慰謝料
  4. 入院通院による慰謝料
  5. 物的損害
  6. その他

賠償金の提示

保険会社は、これまでの治療経過や過失割合など今回の交通事故についての様々な事情を踏まえて、賠償金の提示をおこないます。

通常、保険会社からの賠償金の提示は、保険会社からの書面によっておこなわます。保険会社からの書面は、治療費など項目ごとの賠償金が記入された書面と、免責証書と呼ばれる示談書に分けられています。

賠償金の内容に納得できれば、免責証書に必要事項を記載して保険会社に返送するようにしましょう。

5.保険会社との交渉

保険会社からの賠償金の提示に納得できない場合には、保険会社との交渉をおこなうことになります。

保険会社との示談交渉を進めるには専門的な知識が必要です。

交渉をおこなう場合には、一度、交通事故の専門家に相談してみることをおすすめします。

交渉で合意に至らなければ裁判で決着となる可能性もあります。

6.賠償金の支払い

保険会社との交渉が終わると、保険会社から賠償金の支払いを受けることができます。

まとめ

交通事故の全体像を解説しました。

交通事故の発生から賠償金の支払いまでにかかる時間は、交通事故の内容やその後の経過によって様々です。事案によっては数年かかるといったこともあるでしょう。

どのような交通事故であっても、最初に解決までの全体像を知っておくことは重要です。

今回の記事を参考に、交通事故の全体像を把握したうえで、手続を進めるようにしてください。

 
以上

交通事故発生から示談までの全体像1

多くの方にとって、交通事故は人生で何度も経験するようなものではありません。

そのため、交通事故に遭って、何から始めたら良いのか、解決までどのくらいかかるのかと不安になる方がほとんどでしょう。

そこで、今回は、交通事故発生から示談までの全体像を解説していきます。細かい部分よりも、まずは全体像を知ることで、安心して手続を進めるようにしましょう。

交通事故発生から示談までの流れは次のようになります。

  1. 交通事故の発生
  2. 怪我の治療開始・過失割合の交渉
  3. 怪我についての症状固定
  4. 保険会社から賠償金の提示
  5. 保険会社との交渉
  6. 賠償金の支払い

それぞれの内容を見ていきましょう。

1.交通事故の発生

負傷者の救護・現場の安全確保

交通事故にあってしまったら、まずは負傷者の救護や現場の安全を確保しましょう。

救急車の手配や事故車両の移動など、被害を拡大させないために迅速に行動することが必要です。

警察への連絡

交通事故の大小にかかわらず、交通事故が発生した場合には必ず警察へ連絡しましょう。

警察への通報は道路交通法条の義務となっており、通報を怠ると罰則を受ける可能性もあるので注意が必要です。

警察への通報をおこなうことで、交通事故証明書の発行を受けられるようになります。交通事故証明書は、保険請求の手続などで必要となる書類です。

加害者との連絡先交換

事故現場で加害者と連絡先を交換することを忘れないようにしましょう。

現場では気付かなくても、あとになって自動車の損傷が見つかったり、身体の痛みが出てきたりする場合もあります。

加害者の連絡先がわからなければ、修理費用や治療費を自分で負担しなければならなくなる可能性もあります。

2.怪我の治療開始・過失割合の交渉

まずは病院へ

身体の痛みや不調がある場合には、すぐに病院や整形外科で受診しましょう。

交通事故の発生から時間が経ってから病院で受診しても、その怪我が交通事故によるものなのかが判断できず治療費の支払いを受けられない可能性があります。

交通事故にあったら、すぐに病院で受診するのが重要です。

保険会社への連絡

交通事故が発生したことを自分の保険会社に連絡するようにしましょう。また、加害者にも、加害者が加入する保険会社に連絡を入れてもらいます

保険会社に連絡を入れることで、今後の流れについて大まかな説明を受けることができます。

また、必要に応じて治療費の支払いを受けることができたり、交通事故の内容によっては、過失割合の交渉を開始したりすることになります。

まとめ

交通事故の全体像について前半部分を解説しました。

次回の記事で後半部分の解説をおこないますので、併せて参考にしていただければ幸いです。

以上

人身事故と物損事故、この2つの事故の違いとは

交通事故の種類には大きく分けて人身事故と物損事故の2つのタイプがあり、この2つが具体的にどう違うのか理解していない人は少なくありません。今回は、この2つの交通事故の特徴について紹介しましょう。

人身事故、物損事故の定義

人身事故、物損事故とは具体的にどのような事故なのでしょうか。その意味を以下より説明します。

人身事故

人身事故とは、交通事故によって「けがを負った」「後遺症が残った」「死亡した」など、交通事故で起きた身体に関わる事故の総称です。

物損事故

物損事故とは、交通事故の加害者・被害者ともに身体的なダメージこそ負わなかったものの「自動車が壊れた」「壁やガードレールが壊れた」など、物の損害が発生した場合の総称です。

人身・物損事故の違い1.「犯罪になるかどうか」

人身事故は「自動車運転過失致傷罪」という犯罪に該当するので、加害者側は罰金や懲役の対象です。また免許停止の処分なども下されます。それに対して物損事故は、身体的な被害者は発生していないので、犯罪の対象外です。免許の点数が引かれることもありません。

しかし、アルコール摂取無免許で物損事故を起こした場合は、立派な道路交通違反の対象であり、処罰を科せられます。また、物損事故を起こしても事故報告をしない、いわゆる「当て逃げ」をしてそれが発覚した場合は、懲役および罰金の対象です。

そして、 人身事故には自賠責保険が適用されますが、物損で生じた被害は自賠責保険は利用できません。物損事故で発生した損害賠償義務は任意保険が対応してくれます。

人身・物損事故の違い2.「事故発生後に詳細が記録されるか」

先述した通り、人身事故は物損事故と違って犯罪、つまり刑事処罰の可能性がある事故です。刑事処罰の扱いになるということは、警察が動きます。

事件が発生したときに警察がすることは、事件の事実関係を裏付けるための、事故当時周辺の徹底した調査です。事故当事者および目撃者に事故現場に立ち会っての調査である「実況見分」、事情聴取などを行います。

それらの活動、そして活動によって収集した情報をまとめた実況見分調書供述調書などを作成するのが、人身事故における警察の仕事です。これら警察が収集した情報の一部は、被害者側が証拠として受け取ることもできます。

人身事故が起きるとよくあるのが、加害者と被害者の言い分の違いです。交通事故では、加害者と被害者のどちらがどれくらいの割合で責任を追うのかという「過失割合」について、言い合いが生じます。

加害者側としては自分が背負う過失割合を少なくしたいために、自己の正当化を主張するケースが少なくありません。その過失割合を正しく出すために必要なのが、警察の調査および情報をまとめた書類なのです。加害者・被害者が理不尽な言い訳をしても、警察が作成した書類があれば、どちらかの正当性を主張できます。

このような人身事故の事後処理に対して、物損事故は犯罪に該当しないため警察が動くこともなく、事故の詳細をこと細かく記録した資料作成も行われません。そのため、過失割合も加害者・被害者の当事者しか主張する人がいないため、過失割合の言い争いになったとき交渉がスムーズに進まないケースも少なくありません。

交通事故が発生した場合、人身事故のほうが刑事処罰の対象になるのでなんとかごまかして物損事故にしようとする人もいます。しかし物損事故の場合、警察の調査がなく客観視された情報がないので困るケースもあるのです。

まとめ

物損事故は人が死ぬような事故ではないので、人身事故より軽いと思っている人もいるでしょう。しかし物損事故は警察が介入しない分、罪は軽いですが事故後に過失割合の問題でトラブルに発展する可能性もあります。

被害の割合に対して少しでも罪を軽くしようと考えるのではなく、どのような対処法が最善であるかを考えるようにしましょう。

以上

交通事故から示談までの流れ~行政書士が解説

交通事故で被害に遭った場合、加害者側と示談交渉し、示談を成立させることで賠償金を獲得する、という流れが大半を占めます。しかし、交通事故被害に遭うことは人の人生にとって一回あるかないかの出来事です。そのため、交通事故被害に遭ったものの今後どのような流れで進んでいくのか、何をすべきなのかなどという不安に陥る方も少なくありません。そこで、この記事では交通事故被害から示談成立までの流れをご紹介いたします。この記事で大まかな流れややるべきことを把握していただければと思います。

1.交通事故から示談までの流れ

交通事故から示談までの一般的な流れは以下のとおりです。

交通事故発生

怪我の治療

症状固定

後遺症→あり→後遺障害等級認定→非該当→異議申立て

↓      ↓            ↓

なし     該当           認容・却下

↓      ↓            ↓

示談交渉

示談

成立→不成立→ADR申立てor訴訟

賠償金獲得

2.交通事故発生

① 自動車運転者の法律上の義務

直ちに運転を停止させること(可能であれば車を安全な場所へと移動させること)、怪我人を救護すること、警察官に事故内容を報告することです。こうした義務を負うのは基本的に加害者、被害者を問いません。また、人身事故か物損事故かを問いません。

② 必ずしたいこと

交通事故後、早い段階で、ご自身が加入している保険会社に交通事故に遭った旨を報告しましょう。保険に搭乗者傷害特約、人身傷害補償特約、無保険車傷害特約、弁護士費用特約を付けている場合はこれらの特約を使える可能性があります。

③ 可能な限りしたいこと

一つ目に加害者の個人情報(氏名、住所、電話番号など)を把握することです。

交通事故の最終目的は加害者から賠償金を支払ってもらうことですから、まずは加害者が誰なのか把握することからはじめなければなりません。加害者の状況、態度をみて免許証、会社の名刺などを差し出してもらい確認するとよいでしょう。加えて車のナンバーを控えておくとよいです。

二つ目に加害者の保険会社を把握することです。

交通事故後、加害者側の対応などによっては加害者の自賠責保険会社に対する被害者請求が必要となる場合もあります。そのため加害者の自賠責保険会社を把握しておく必要があるのです。自賠責保険証は車に備え付けておかなければなりませんから、交通事故現場で加害者に提示を求めることが可能です。

三つ目に証拠の保全です。

過失割合の認定や加害者の刑事処罰を求める場合など役立ちます。

事前にできることとしては、ドライブレコーダーを設置することです。事後にできることとしては、スマートフォンなどで車の損壊状況、位置状況などを撮影しておくことです。交通事故の詳細な状況は警察が捜査します。もっとも、警察にも実況見分への立ち会いを求められます。可能な限り立ち会いましょう。

3.怪我の治療

交通事故に遭ったら速やかに病院を受診し治療を受けましょう

交通事故から病院受診・治療までの期間が空けば空くほど交通事故と怪我の因果関係を疑われます。その結果、受け取れたはずの賠償金も受け取れない、という事態にもつながりかねません。むち打ち症のように交通事故時に痛みが出ていなくても、その後に痛みが発症することはよくあることです。しかし、痛みが出た時点で受診・治療を受けたとしても、適切な賠償金を受け取るという意味では手遅れとなる可能性もあります。また、受診後は医師の指示にしたがいましょう。後遺症が出た場合は治療状況等が適切な後遺障害等級認定を受ける上でもとても重要です。

4.症状固定

症状固定とは、交通事故時の怪我からある程度症状は改善したものの、いまだ痛み(後遺症)が残存しており、かつその症状が将来完全に改善する見込みがない状態、のことをいいます。なお、治療費支払いの打ち切りのために、加害者の保険会社の担当者から症状固定を打診されることがあります(保険会社が治療費を支払っている場合)。しかし、症状固定かどうかを判断するのは医師であって保険会社ではありません。打診されたとしても治療が必要な場合は治療を継続しましょう。ご自身の健康保険を使って受診できますし、後日、加害者から打ち切り後の治療費分を支払ってもらうことも可能です。

 5.後遺症、後遺障害等級認定、異議申し立て

症状固定後、後遺症が残った場合は後遺障害等級の認定を受ける必要があります(後遺症の中でも認定を受けた後遺症を後遺障害といいます)。後遺障害等級の認定を受けることができれば、等級に応じた「後遺障害による逸失利益」、「後遺障害慰謝料」を獲得することができます。

認定方法は①被害者自身が行う被害者請求と②加害者の保険会社が行う事前認定があります。適切な等級認定を受けるためには①の方法をお勧めします。いずれの場合も必要書類をそろえて加害者の自賠責保険会社に提出する必要があります(②の場合、被害者は医師に「後遺障害診断書」を作成してもらい保険会社に提出すればOK)。そして自賠責保険会社から書類の送付を受けた自動車損害調査事務所が調査を行います。調査後、調査事務所は調査結果を自賠責保険会社に通知します。そして、自賠責保険会社は通知結果に基づき自賠責保険会社が等級を認定するか、認定するとしていかなる等級とするかを決め、被害者に通知します。結果に不服がある場合は異議申し立て(後遺障害等級認定の再申請)をすることができます。異議申し立ての回数に制限はありません(何度でも申し立て可能です)。

 6.示談

後遺障害等級の認定が必要ない場合は症状固定後、後遺障害等級の認定を申請した場合はその結果が確定した後、加害者側と示談交渉を始めます。示談交渉で条件について折り合いがつけば示談書(あるいは合意書)を取り交わして示談を成立させます。折り合いがつかなければ、第三者の力を借りて解決しなければなりません。第三者の力とは、すなわち、交通事故紛争処理センター(ADR)や裁判所のことです。ADRでは公平、中立的立場である第三者が和解案を提示し、当事者が合意すれば和解を成立させることができます。

 

以上

交通事故の全体像

 

~はじめに~

日頃、皆さんも車を運転する際、あるいは街中を歩いている際、何度か交通事故そのものや交通事故直後の状況を目撃したことはあるのではないでしょうか?また、ニュースなどではたびたび悲惨な交通事故が報道されていますから、交通事故は私のたちの日常生活に切っても切れない出来事の一つです。

誰しも交通事故を起こそうと思って起こしている人はいません。

しかし、交通事故はちょっとした不注意によって起きてしまい、ときには取り返しのつかない不幸な結果にまで発展してしまう危険も孕んでいます。

それゆえ、誰が、いつ、どこで交通事故の当事者、つまり交通事故の加害者、あるは被害者になるか分かりません

もっとも、交通事故の加害者、あるいは被害者になることは、多くの方にとって一生に一度経験するかしないかのことでしょう。

したがって、いざ交通事故の当事者となるとその取扱いに慣れていないがゆえに途方もない不安にかられます。

交通事故の規模、交通死亡事故、被害者の負った怪我の程度が大きくなればなるほど不安は増すばかりでしょう。

私は、交通事故という一生に一度あるかないかの出来事に不幸にも遭遇した方にとって、少しでも正確かつ有益な情報をご提供できればと思いこのブログを立ち上げました

さっそくですが、以下では交通事故全体の大まかな流れをご紹介します。

まずはざっくりと交通事故の流れをつかんでいただければ幸いです。

~交通事故から示談までの流れ~

交通事故から示談までの一般的な流れは以下のとおりです。

⑴交通事故発生

⑵病院を受診・治療を受ける

⑶症状固定

⑷後遺障害等級認定

⑸示談

⑴交通事故発生

①警察に110番通報する

道路の危険を除去(可能であれば、車を安全な位置に移動)した上で、警察に110番通報します。

加害者が連絡を渋った場合は被害者が通報しましょう(事故報告は義務です)。

事故報告しないと警察から「交通事故証明書」を発行してもらえず加害者の保険会社に賠償金を請求することができなくなります。

②加害者の個人情報を把握する

加害者(運転者)の「氏名」、「生年月日」、「住所」、「連絡先」、「会社名」などを把握しましょう。

「氏名」、「生年月日」、「住所」は免許証で確認すると確実です。

「連絡先」は無理に把握する必要はありません。

「会社名」は名刺などで確認するとよいでしょう。

加害車両が営業車の場合は加害者の使用車にも責任が発生する場合がありますから把握しておくと便利です。

③交通事故状況の把握

できれば交通事故直後(①で道路の危険を除去する前)の車の衝突状況をスマートフォンなどで撮影しておくと、あとで加害者の保険会社に賠償金を請求する際に必要となる「交通事故発生状況報告書」の作成の際に役に立ちます。

また、警察に公平な「実況見分調書」を作成してもらうためには警察の実況見分には必ず立ち会いましょう。

④加害者の保険会社の把握

強制保険である自賠責保険会社、任意保険である任意保険会社を把握しましょう。

自賠保険会社については車検証と一緒に保管されている自賠責保険証書によって確認することが可能です。

加害者が任意保険に加入していない場合などは自賠責保険会社に被害者請求する必要がある場合があります。

⑤自身の任意保険会社にも連絡

また、事故報告は警察のみならずご自身が加入されている任意保険会社に対しても行います。

保険に搭乗者傷害特約、人身傷害補償特約、無保険車傷害特約、弁護士費用特約を付けている場合はこれらの特約を使える可能性があります。

また、ご自身ではなくご家族が交通事故に遭った場合も連絡しましょう。

これらの特約が使える場合があります。

⑵病院を受診・治療を受ける、継続する

交通事故に遭ったら速やかに病院を受診し治療を受けましょう。

・たいしたことはないと思って病院を受診しない

・自己判断で病院を受診しない

などという行為はNG行為です。

また、

・今は痛みがないから大丈夫

などと思って病院を受診しない方がおられます。

しかし、交通事故の怪我で多いむち打ちの場合、交通事故時には痛みが発生せず、交通事故から数日経って痛みが発生するということがよくあります。

その場合、交通事故から病院受診までの期間が空けば空くほど「他の原因で痛みが出たのではないか?」「痛みの主原因は交通事故ではなく、他の原因にあるのではないか?」などと交通事故と怪我の因果関係を疑われ、受け取れるはずの賠償金も受け取れない、という結果にもつながりかねません。

交通事故時に痛みが出ていなくても、その後に痛みが発症することはよくあることです。

したがって、面倒とは感じても必ず病院を受診するようにしましょう。

また、一度病院を受診した以上、医師の指示に従い、医師が治療の継続は必要でないと判断するまでは通院するようにしましょう。

なお、のちほどご説明する後遺障害等級の認定を受けるためには、症状固定までにどんな治療を受けたのか(治療内容)ということなども非常に大切になってきます。

どんな点に気を付けるべきか不安な方ははやめに専門家に相談しておきましょう。

⑶症状固定

症状固定とは、交通事故時の怪我からある程度症状は改善したものの、いまだ痛み(後遺症)が残存しており、かつその症状が将来完全に改善する見込みがない状態、のことをいいます。

医学用語ではありませんが、治療を継続していると医師から「これ以上の(リハビリも含めた)治療は止めましょう。」と言われることがあります。

症状固定かどうかは医師が判断することですから、受診時に日頃の症状や怪我による悩みを医師に伝え、医師の指示に従って治療を継続しておくことが必要です。

なお、治療継続中に保険会社から「そろそろ症状固定としませんか?」などと言われることがあります。

これは治療費支払いの打ち切り、のことを意味していますが、その圧力に押されて症状固定とする必要はありませんし、治療を諦める必要もありません。

治療継続が必要な場合は、健康保険を使う、自賠責保険に被害者請求するなどの方法を検討しましょう。

⑷後遺障害等級認定

後遺症が残った場合は後遺障害等級の認定を受ける必要があります(後遺症の中でも認定を受けた後遺症を後遺障害といいます)。

後遺障害等級の認定を受けることができれば、等級に応じた「後遺障害による逸失利益」、「後遺障害慰謝料」の賠償員を獲得することができます。

認定を受けるには必要書類をそろえて加害者の自賠責保険会社に提出する必要があります。

そして自賠責保険会社から書類の送付を受けた自動車損害調査事務所が、原則として書類を基に調査を行います。

その後、調査結果を自賠責保険会社に通知し、通知結果に基づき自賠責保険会社が等級を認定するか、認定するとしていかなる等級とするかを決めます。

結果に不服がある場合は

異議申し立て(後遺障害等級認定の再申請)をすることができます。

異議申し立ての回数に制限はありません(何度でも申し立て可能です)。

⑸示談

後遺障害等級の認定が必要ない場合は症状固定後、後遺障害等級の認定を申請した場合はその結果が確定した後、示談成立に向けた詰めの話し合いが進められます。

示談交渉で条件がまとまらず示談が成立しなかった場合は、紛争案件を示談(和解)のあっ旋(実際に示談を締結してくれるわけではありません)などを行う交通事故紛争処理センター、裁判所の場に移して最終解決を目指すことになります。

 

以上