交通事故における過失相殺、過失割合や留意点を解説

交通事故において被害者が適切な損害賠償額を受け取るためには、過失相殺、過失割合については、必ず知っておかなければならない知識といえます。そこで、今回は、過失相殺、過失割合やその留意点について解説します。

1.過失相殺とは

過失相殺とは損害賠償額(治療費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料など)を算定するにあたって、被害者側にも何らかの責任、落ち度、つまり過失がある場合には、その賠償額を減少させることをいいます。

被害者側にとっては受け入れがたいことかもしれませんが、通常、交通事故では被害者にも何らかの過失が認められることがほとんどです。その場合に、被害者に発生した全損害賠償額について加害者に賠償責任を負わせてしまうのは不公平といえます。そこで、被害者の過失分の損害額については被害者の負担とすることで、被害者、加害者の公平を図るのが過失相殺制度なのです。

2.過失相殺と過失割合

過失割合とは、加害者・被害者の過失(責任)の重さを数値化したものをいいます。最大を10とし、それを加害者・被害者に振り分けるのです。たとえば、加害者10、被害者0とされた場合は、交通事故に対する過失のすべては加害者にあり、被害者にはないことを意味しています。そして、この場合、被害者に生じた損害賠償額が100万円だったとすると、被害者は加害者に対してまるまる100万円を請求できることになります。しかし、前述のように、通常、交通事故では被害者にも何らかの過失(過失割合)が認められることの方が多いです。そして、たとえば過失割合を加害者8、被害者2とされた場合は、被害者にも2割の過失が認められたことを意味しており、被害者に生じた損害賠償額が100万円だったとしても被害者はまるまる100万円を受け取れるわけではありません。つまり、被害者の過失分である2割の額(20万円=100万円×0.2)が100万円から相殺され、受け取ることができる金額は80万円ということになります。

以上より、被害者の過失割合が大きくなれば大きくなるほど最終的に受け取ることができる損害賠償額は少なくなる、ということがお分かりいただけると思います。

3.過失割合は誰が決める?注意点は?

前記「2」からお分かりいただけるように、過失相殺、過失割合は被害者が最終的に受け取ることができる損害賠償額を決める上で非常に重要な要素であることはお分かりいただけたかと思います。では、この過失割合はいったい誰が決めるのでしょうか?

この点、過失相殺について規定した民法722条2項によると裁判官が決めるとされています。もっとも、これはあくまで裁判手続を利用すれば、の話です。通常、交通事故では「交渉→調停→裁判」という流れとなりますから、まずは交渉、調停、つまり加害者・被害者の話し合い、合意によって決めていくことになります。

当初は、加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険会社の担当者から過失割合の案を提示されるでしょう。そして、確かに、任意保険会社の担当者は交通事故、交渉のプロですから、提示された過失割合の案もそれなりの根拠、妥当性を有しているといえます。しかし、担当者から提示された過失割合の案をそのまま鵜呑みにするのは危険です。担当者はあくまで加害者側の立場にあること、任意保険会社はあくまで営利企業ですから、少しでも被害者に支払う損害賠償額を抑えようと被害者の過失割合を大きくしているのではないか、ということを常に疑いながら話を聞くべきです。そして、少しでも疑問に思ったら弁護士等の専門家に担当者から提示された過失割合が妥当なのかどうか相談してみるとよいでしょう。

 

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