交通事故で辛い体験をされた場合、PTSDを発症することがあります。PTSDは骨折などと異なり、他覚的所見の認められない症状であるため、一見、慰謝料を獲得できなさそうに思えますが、実はそうではありません。
今回は、交通事故でPTSDが発症した場合の慰謝料について解説してまいりたいと思います。
PTSDとは
ご存じの方も多いと思いますが、PTSDとは日本語で「心的外傷後ストレス障害」といいます。「心的外傷」とは、たとえばDV(ドメスティックバイオレンス)、虐待などの外的要因によって心が傷つくことです。心的外傷には交通事故も含まれます。交通事故によって直接被害を受けた場合のみならず、たとえば車に同乗していた方がお亡くなりになった、重傷を負ったなどという場面を目撃した場合でもPTSDに罹患する可能性があります。ある研究所の発表では、交通事故による重傷患者のうち約1割の方交通事故から約1か月後にがPTSDを発症している、しています。
PTSDと慰謝料(精神的苦痛に対する賠償金)
交通事故後にPTSDを発症した場合に獲得できる可能性のある慰謝料は「傷害(入通院)慰謝料」と「後遺障害慰謝料」です。もっとも、慰謝料を獲得するためには、交通事故に遭わなければPTSDは発症しなかったという関係、つまり、交通事故とPTSDとの間に「因果関係」が認められることが大前提です。PTSDは人の精神状態に左右される側面がありますから、ときに「PTSDが本当に交通事故によって生じたものといえるのか」、「PTSDは交通事故とは別の原因で生じたものではないのか」などという疑いの目で見られがちです。少しでもPTSDの発症が疑われる場合は、直ちに専門の医師の診察を受けることが大切です。
傷害(入通院)慰謝料
傷害(入通院)慰謝料は、交通事故後、入通院を開始した時点から医師により症状固定(これ以上治療を継続しても症状が改善する見込みはない)と判断された時期までの精神的苦痛に対する賠償金です。
通常、PTSDは交通事故から一定期間経た後、発症することが多いです。前述のとおり、発症の疑いが生じた段階で専門医師の診察を受けましょう。そして、仮に、PTSDと診断された場合は医師の指示に従い継続的に治療を受けていくことが大切です。PTSDの症状が治まるまでには、軽傷の場合でも発症から半年から1年、重篤な場合で2年~3年かかるといわれています。
傷害(入通院)慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判所)基準の3つの基準があります。このうち、弁護士(裁判所)基準で交渉した方が慰謝料は高額となる傾向にあります。また、当然、入通院期間が長ければ長いほど慰謝料は高額となります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、症状固定後に残存した後遺障害に伴って受けた精神的苦痛に対する賠償金です。
PTSDでも後遺障害等級9級10号、12級相当、14級相当の等級認定を受けることができる可能性はあります。等級認定を受けるためには加害者の自賠責保険会社に対して認定申請を行う必要があります。そして、一定の基準を満たした場合にのみ、等級認知を受けることができるのです。
後遺障害等級慰謝料でも、前述した自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判所)基準があり、弁護士(裁判所)基準で交渉を行えば慰謝料は高額となる傾向にあります。
まとめ
上記のとおり、交通事故によりPTSDを発症した場合でも慰謝料を獲得できる場合があります。通常、他の傷害(怪我)を併発することも多いでしょうから、獲得できる慰謝料はさらに高額になる可能性もあります。PTSDを患いながら、慰謝料のことまで気を回す余裕はありませんから、お困りの場合は交通事故の専門家に一度相談してみましょう。
以上