あおり運転に適用される妨害運転罪、罰則は?

道路交通法が改正され(令和2年6月30日施行)、これまでいわゆる「あおり運転」と言われていたものが「妨害運転罪」にあたり、懲役などの刑事罰を科されることになったのはご存知でしょうか?

今回は、

 

・あおり運転に関する改正内容

・妨害運転罪の罰則

 

について詳しく解説してまいります。

 

1.あおり運転に関する改正内容

あおり運転に関する改正内容について、改正前と改正後について解説します。

⑴ 改正前

改正前は、あおり運転そのものを処罰する規定はなく、主として道路交通法に規定されている

 

① 不必要な急ブレーキ(急ブレーキ禁止違反)

② 後方からの異常接近(車間距離不保持)

③ 無理な・急な進路変更(進路変更禁止違反)

④ 左側からの追い越し、無理な追い越し(追い越しの方法違反)

⑤ 前後方からのハイビーム(減光等義務違反)

⑥ 不要なクラクション、ベル(警音器使用制限違反)

⑦ 幅寄せ・急接近など(安全運転義務違反

 

に関する規定が適用されていました。そして、①、②、④、⑦の罰則は「3月以下の懲役又は5万円の罰金」、③、⑤、の罰則は「5万円以下の罰金」、⑥の罰則は「2万円以下の罰金又か科料」でした。また、これらの違反は反則行為でしたから交通反則通告制度の適用される結果、青切符が切られ、反則金を納付すれば手続きが終了する軽微なものでした。つまり、検挙されても、直ちに上記の罰則を科されることはなかったのです。

そこで、改正前は、あおり運転の状況によっては、交通反則通告制度ではなく刑事手続に移行でき、かつ、罰則を科すことができる刑法の暴行罪、あるいは強要罪を適用していました。暴行罪の罰則は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」、強要罪の罰則は「3年以下の懲役」です。

⑵ 改正後

もっとも、あおり運転そのものを処罰する規定の必要性、適用される罰則が軽いなどの批判を受け、道路交通法にあおり運転そのものを処罰する「妨害運転罪」が規定されました。妨害運転罪は道路交通法第117の2第6号(高速自動車道等の場合)、第117条の2の2第11号(一般道の場合)に設けられています。

妨害運転罪が処罰対象とする行為は、上記の①から⑦に加えて

 

⑧ 蛇行、逆走、対向車線はみだしなど(通行区分違反)

⑨ 高速道路での低走行禁止(最低速度違反)

⑩ 高速道路での駐停車(高速道路等駐停車違反)

 

の10個です。

なお、妨害運転罪(一般道の場合)が成立するためには(成立の要件は)、

 

・他の車両等(以下「被害車両」といいます)の通行を妨害する目的があること

・①~⑩のいずれかの行為をしたこと

・①~⑩のいずれかの行為が、被害車両に道路における危険を生じさせるおそれのある方法で行われたこと

 

が必要です。

 

2.妨害運転罪の罰則

妨害運転罪の罰則は、

 

一般道の場合:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

高速道の場合:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金

 

です。

一般道の場合の罰則は酒気帯び運転、無免許運転の罰則と、高速道の罰則は酒酔い運転の罰則と同じ、と認識いただければ、今回の改正により、あおり運転に対する罰則がいかに重たくなったのかがお分かりいただけるかと思います。もちろん、交通反則通告制度の適用はなく、直ちに刑事手続きが適用されます

また、一般道の場合の違反点数は25点で免許取消し(欠格期間2年)の行政処分、高速道の場合の違反点数は35点で免許取消し(欠格期間3年)の行政処分を受けます。

 

3.まとめ

以上のとおり、道路交通法にあおり運転そのものを処罰する規定が設けられました。あおり運転が発覚すれば逮捕、刑罰(懲役、罰金)を受ける可能性が高くなりましたので運転には十分注意を払う必要があります。

以上