【交通事故と慰謝料(3)】入通院慰謝料は基準によっても金額が異なる

前回は、入通院慰謝料の計算方法と相場について記事を書きました。

しかし入通院慰謝料も何を基準にするかによって金額も違うのです。
そこで今回は入通院慰謝料の基準などを解説していきたいと思います。

入通院慰謝料は基準によっても金額が異なる

それでは、(1)自賠責保険基準(2)任意保険基準(3)弁護士基準それぞれの基準について詳細を説明していこうと思います。

自賠責保険基準

自賠責保険基準とは、自動車の保有者が強制的に加入させられている自賠責保険をもとに決められている基準になります。

交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としています。
したがって、被害者に支払われる慰謝料の金額も最低限度の額に定められています。

このように、法律に根拠のある基準であることには変わりありませんので、加害者側からは法律で決められている適正な基準額であると主張して示談金を自賠責保険基準で提示してくることも多々あります。

しかし、自動車損害賠償保障法によって義務付けられていることは、自動車保有者が自賠責保険に加入することであり、慰謝料額を定額で定めているわけではありません。

上記のような加害者や加害者側の保険会社の主張には、注意しておく必要があります。

自賠責保険では、120万円が補償される上限金額となっています。

自賠責基準では、慰謝料の他に治療費や休業損害・逸失利益などすべての損害賠償金額が120万円以下だった場合に採用されるもので、損害賠償合計が120万円を超えた場合は自賠責基準で慰謝料を算出する意味はないことになります。

そして、120万円以下の場合には、次にみる任意保険基準と自賠責保険基準とは同額となっていることが多いです。

したがって、損害額が120万円を超えた場合には自賠責保険基準では算出せずに、任意保険基準で慰謝料を計算することになります。

この場合の問題点としては、任意保険基準は各保険会社が独自に作っているものであるので、各社で異なるということが挙げられます。

社内基準であるため一般に公開されているものではないので、被害者の方が確認することができないという問題点があります。

任意保険基準

任意保険基準とは、保険会社が独自で設定している社内基準になります。

そのため、会社によって定められている基準は多少異なるところがありますが、加害者側の任意保険会社は被害者に示談金を提示するときに、この任意保険基準に基づいて算出された額を利用します。

昔は任意保険にも統一基準があり、その基準に従って入通院慰謝料が算出されていましたので、保険会社による算定額も差が出ることはありませんでした。
しかし、規制緩和が進み平成11年に旧任意保険基準が廃止され、現在は任意保険会社ごとに独自の基準を設定しています。

基準に基づく慰謝料の金額については、保険会社によって異なります。
しかし、多くの任意保険会社は旧任意保険基準を参考にして、それに近い金額での基準を設定していると言われています。

任意保険基準は、自賠責保険基準よりも慰謝料相場が高く設定されていると言われていますが本当でしょうか。
具体的に以下の事例を見てみましょう。

交通事故に遭って受傷して、入院せず、通院3か月で通院回数40回の事例を考えてみます。
任意保険基準での入通院慰謝料は前述の表より、378,000円となります。

ちなみに自賠責保険基準でも入通院慰謝料を算出してみましょう。

自賠責保険基準のもとでは、
4,300円×40日×2=344,000円です。

任意保険基準での入通院慰謝料は378,000円で、自賠責保険基準での入通院慰謝料が344,000円です。
このことから、任意保険基準で提示される慰謝料は、最低限の補償を目的とする自賠責保険基準と大きく変わることがないということがお分かりいただけるでしょう。

弁護士基準

弁護士基準とは裁判基準とも呼ばれていますが、どのような基準なのでしょうか。

弁護士基準とは、弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準のことを言います。

この基準が適用されるのは、被害者が弁護士に依頼したときや、訴訟を提起して裁判手続の中で慰謝料を賠償請求していくような場合に適用されます。

この基準は上述したとおり、「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」や「交通事故損害額算定基準」という本に記載されていますので、確認することができると思います。

弁護士基準は、上記3つの基準の中で最も慰謝料額が高い基準になります。
過去裁判で争われた場合に裁判所によって認められた金額になりますので、被害者の方に認められた正当な権利として請求できる金額ということには違いありません。

裁判になったとしても採用されることが多いですので、弁護士に依頼するメリットとしてこの基準の適用があげられます。

まとめ

今回は入通院慰謝料の金額の判定にかかわる基準について詳しくご紹介しました。

次回は交通事故と慰謝料をテーマにした記事の最後になります。

交通事故の慰謝料を増額させる方法などを紹介しますので、ご期待ください。

 

以上