【交通事故と慰謝料(2)】入通院慰謝料の計算方法と相場

前回は、治療費以外に請求できる入通院慰謝料とは何なのか、詳しく解説をいたしました。

今回は入通院慰謝料の計算方法と相場をテーマにご紹介をしたいと思います。

入通院慰謝料の計算方法と相場

入通院慰謝料は障害慰謝料とも呼ばれますが、どのように計算するのでしょうか。
入通院慰謝料は、入院の日数や通院回数、治療期間を計算式にあてはめることで計算します。

したがって、これらの数字をどの計算式にあてはめるか、またはこれらの数字が変わってくると入通院慰謝料として算出される金額が変わってくることになります。

そして、入通院慰謝料を算出するための基準には、大きく分けて以下の3つがあるとよく言われています。

  1. 自賠責保険基準
  2. 任意保険基準
  3. 弁護士基準

慰謝料相場は(1)自賠責基準(3)任意保険基準(4)弁護士基準のいずれかで計算することになります。
次に、それぞれの基準の計算方法とその相場の違いについて順番に解説していきます。

自賠責保険基準の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

まずは、自賠責保険基準における入通院慰謝料の計算方法について説明していきます。

自賠責保険基準では、入通院慰謝料は1日当たり日額4300円と決定されています。
具体的な計算式を説明します。

まず、「交通事故後最初の診察から治療終了までの期間」または、「入通院日数の2倍」に1日当たり4,300円かけて計算します。
そして算出された金額のうち少ない方が入通院慰謝料となります。
具体的に計算してみましょう。

交通事故に遭ってむちうちになり、初診から治療終了までに3か月、実際に病院には1か月につき10日通院していたとします。
交通事故後最初の診察から治療終了までの期間は約90日です。

4,300×90日=387,000円

実際の通院日数は10×3か月=30日です。
4,300×30日×2=258,000円

この場合、実通院日数を採用して計算した額の方が少ないので、後者の計算式によって算出された金額の方が小さくなり、これが入通院慰謝料として採用されます。

したがってこのケースでは、入通院慰謝料は258,000円だということになります。

なお,上記の2つの計算式より,2日に1回以上のペースで通院すれば慰謝料の金額が増額するのではないかと誤解して考える方がいます。

しかし,治療期間が上限となりますので,2日に1回を上回る頻度で通院したとしても,入通院慰謝料が増額することはありません。

任意保険基準の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

次に,任意保険基準での入通院慰謝料の相場等を解説します。
この基準は保険会社が各社独自に設定し,示談交渉に用いている基準になります。

ここでは、平成11年7月以前は統一基準があったためその金額を参考におおよその相場をご紹介したいと思います。

任意保険基準による入通院慰謝料表(単位:万円)

入院 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月 7か月 8か月 9か月 10か月
通院 25.2 50.4 75.6 95.8 113.4 113.4 128.6 141.2 152.4 162.6
1か月 12.6 37.8 63 85.6 104.7 120.9 134.9 147.4 157.6 167.6 173.9
2か月 25.2 50.4 73 94.6 112.2 127.2 141.2 152.5 162.6 171.4 176.4
3か月 37.8 60.4 82 102 118.5 133.5 146.3 157.6 166.4 173.9 178.9
4か月 47.8 69.4 89.4 108.4 124.8 138.6 151.3 161.3 168.9 176.4 181.4
5か月 56.8 76.8 95.8 114.6 129.9 143.6 155.1 163.8 171.4 178.9 183.9
6か月 64.2 83.2 102 119.8 134.9 147.4 157.6 166.3 173.9 181.4 185.4
7か月 70.6 89.4 107.2 124.3 136.7 149.9 160.1 168.8 176.4 183.9 188.9
8か月 76.8 94.6 112.2 128.6 141.2 152.4 162.6 171.3 178.9 186.4 191.4
9か月 82 99.6 116 131.1 143.7 154.9 165.1 173.8 181.4 188.9 193.9
10か月 87 103.4 118.5 133.6 146.2 157.4 167.6 176.3 183.9 191.4 196.5

上記の表について解説していきます。
入院しかしていない事案では、「入院」の欄の最上位の行が入院月数を表しています。
その一つ下段の数字が慰謝料金額になります。

では,通院しかしていない事案では,「通院」の欄の一番左行が通院月数を表しています。
その一つ右の行の数字が慰謝料金額になります
入院と通院の両方があった場合には、入院した月数と通院した月数とが交わる欄に記載された金額が慰謝料の基準となります。

それでは具体的な事案について入通院慰謝料がいくらになるのか考えてみましょう。
事故の結果,通院のみ3か月,通院回数40回の場合,上記の表からは入通院慰謝料は37万8000円となります。

弁護士基準(裁判基準)の入通院慰謝料の計算方法と慰謝料相場

最後に、弁護士基準(裁判基準)とはどのような基準なのでしょうか。
弁護士基準(裁判基準)には2つの算定基準が存在しています。

これらの基準は通称「赤い本」と呼ばれる日弁連が出している本に掲載されています。
むち打ち症などの比較的軽い症状の場合には①の表を使用します。
他方,骨折などの重症の場合には②の表を使用します。

入通院慰謝料表①(単位:万円)

単位(万円) 入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195
1ヶ月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199
2ヶ月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201
3ヶ月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202
4ヶ月 67 955 119 136 152 165 176 185 192 197 203
5ヶ月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204
6ヶ月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205
7ヶ月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206
8ヶ月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207
9ヶ月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208
10ヶ月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

入通院慰謝料②(単位:万円)

単位(万円) 入院 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 7ヶ月 8ヶ月 9ヶ月 10ヶ月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306
1ヶ月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311
2ヶ月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315
3ヶ月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319
4ヶ月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 326 323
5ヶ月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325
6ヶ月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327
7ヶ月 124 157 188 217 244 266 286 301 316 324 329
8ヶ月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331
9ヶ月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333
10ヶ月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335

参考:日弁連交通事故相談センター 損害賠償額算定基準

具体的に表を見ながら、入通院慰謝料を算出してみましょう。
事故の結果,むち打ち症となり入院はせず,通院を3か月継続した場合には,軽傷の場合の表①を使用します。

このような事案では,入院0か月,通院3か月が交わった箇所を見ますと,530,000とあります。
よって,入通院慰謝料は53万円と割り出せます。

次に事故の結果,骨折し入院はせず,通院を3か月継続した場合はどうでしょう。

この事案は重症の表②を使用します。
②の表を見ると,入院0か月,通院3か月が交わった箇所には730000円とあります。
よって慰謝料は73万円となります。

まとめ

今回は入通院慰謝料の計算方法と相場について詳しくご紹介しました。

次回も交通事故と慰謝料をテーマに記事を公開いたします。

 

以上